【現場の声】小麦不作と戦争がパン店を襲う-福岡

【現場の声】小麦不作と戦争がパン店を襲う-福岡

新型コロナによる客足の減少に加え、材料費の値上げのダブルパンチ。それが直撃しているのがパン店だ。小麦を筆頭に油、バター、牛乳などのパンを焼くために必要なほぼすべての材料が値上がりしているのだ。その背景には、ロシアによるウクライナ侵攻もあった。

取材:RKB小松久里子

 

この特集の要旨

福岡市にある夫婦経営のパン店を訪ねた

●店内「お待たせしました!ありがとうございました~」

福岡市南区で営業するパン店「ロッサガレージ」。オーナーの田島成喜(たじましげき)さんは、妻の光枝(みつえ)さんと店を経営している。一番人気のふわふわでもちもち食感の食パンなど、50種類のパンを作っている。

●来店客「台湾カステラがおいしいです」「食パンが最高にいいんですよよ。私もともとは朝食はごはん派だったんですよ、でもここのパンを食べだして、パンに変わっちゃったんですよ」

常連客はこう話す。
新型コロナが流行した後も変わらず足を運んでくれるものの、店全体の客足は減っているとオーナーは話す。

 

●オーナー田島成喜さん「非常事態宣言とかまん防になるとどうしてもお客さんの数が減ってしまいますので、その辺がちょっと厳しい。(客足が)予測不可能なんですよ、一日開けてみないとわからないような状況になっています」

売り上げを回復させるために、催事に出店するなどの新しい販売方法を模索している。

小麦は過去2番目の高値水準へ

そうした模索の中で追い打ちをかける出来事が起きた。小麦の価格が高騰したのだ。

●オーナー田島成喜さん「こちらの小麦になりますね」

オーナーは店に保管してあった小麦を見せてくれた。この店では、一日に15キロほどの小麦粉を使う。去年10月、仕入れ価格の負担が10%から20%増え、今年1月には、苦渋の決断で一部商品を10円から20円値上げした。

来店客に値上げについて聞くと、理解を示す声が聞かれた。

●来店客「なんでもかんでも上がっていくのでそのままの方がいいのはいいんだけど、おいしかったらまた買おうかなと思う」「(値上げは)しょうがないですね、みんなで分け合わないと」

●妻・光枝さん「値上げしたからといって、客からの(不満の)声はないですね。こちらが心配して『値上げしたんです』と言ったら『買うから大丈夫よ』と言われて、ホッとするというか安心するところもあります」

材料の中でも高騰ぶりが際立つのが小麦だ。農水省は、製粉業者に売り渡す輸入小麦の価格を、来月1日から約17%引き上げると発表。これは、2008年のリーマンショックに次ぐ過去2番目の高値水準となる。

農水省のまとめによると、パンに使われる強力粉は、カナダとアメリカ産が中心だ。輸入総量は準強力粉も含めると約320万トンに上る。これに対して、北海道産をメインとした国内小麦の流通量は12.5万トンで大きな差がある。

国内産だけではとても需要を満たせない。

それでは、なぜ、ここまで小麦の国際価格が上がるのだろうか。

1つの原因は、アメリカやカナダなどの日本の輸入の大半を占める産地が、去年夏に高温と乾燥に見舞われ不作となったためだ。

さらに、いずれも小麦の輸出国として上位にあるロシアとウクライナの戦争も影響している。ロシアの輸出規制やウクライナ情勢を鑑みた“供給懸念”が、小麦の国際価格の上昇につながっているという。

「業者にはあたれない」

オーナーは苦悩した。

●オーナー田島成喜さん「さすがにちょっとわーと思いましたね。そこまであげられるのかなと。ほんと厳しいですよね。何やってもしょうがない、どうしようもないからですね、業者さんにあたるわけにはいかないんで」

ほぼすべての材料が値上がり

原材料の高騰は小麦にとどまらない。油やバター、牛乳、それに卵などのパンを作るために必要な材料は、ほとんどが値上がりしている。

●オーナー田島成喜さん「今までは上がっていないところをうまく使って調整できていたけど全部が上がってくるので、調整の幅が少なくなってきたなと。これから原油価格が上がると輸送コストが上がるので、どうしてもいろんなものに波及してくると思う。非常に厳しい状況です」

「なんとかして、やるぞっていう気持ちを持って進んでいくしかないなと、覚悟を持ってですね。状況によると思うんですけど、(価格を)上げるしかないかな、苦しい選択になるかなと思います。上げたらより一層お客さんに対していいものを届けられるように心がけていきたいと思います」

オンエア情報

この特集は、3月18日にRKB地上波テレビで放送したシリーズ企画「現場の声」を基に構成しました。当時のオンエアは、期間限定で公式Youtubeで公開しています。

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