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茶心から生まれた懐石料理で季節を表現するカウンター割烹

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「懐石料理」と「会席料理」の違いをご存じでしょうか? 「懐石」は茶事の料理から発展したもので、「会席」は宴席で酒と一緒にいただくもの。現在ではその境界が曖昧になっていますが、厳密には料理を出す順番やその内容も違います。そんな伝統的な「茶懐石」をベースにした料理を、カウンターで気軽に食べられるのが「むら川.」です。

主人の村川厚二さんは、老舗料亭「菊乃井」「神戸 玄斎」で修業した料理人。2016年に地元の福岡に戻り、渡辺通5丁目の裏通りに店を出しました。「開店当初は静かな通りでした」という界隈ですが、今や「天神南」エリアと呼ばれる注目のグルメスポット。地下鉄駅から多くの人が行き交う路地を抜けて、店を目指しました。

むら川_先付

コースは品数や料理に使う食材によって、9,900円・13,200円・16,500円の3種類が用意されています。今回は、先付・八寸・お造り・お椀・お凌ぎ・焼き物・御飯・水物で構成される9,900円のコースを注文しました。

まず先付として出てきたのは、京野菜を使った「賀茂茄子のずんだあん」。煮びたしにした茄子の上に、枝豆をすり潰したあんをかけたもので、緑色の見た目が涼感をそそります。

むら川_前菜

2品目は八寸に盛り付けられた前菜で、この日は青森産じゅんさいの酢の物、青梅の白ワイン煮、稚鮎の天ぷら、玄海地タコの柔らか煮、そして鯵寿司の5品。京風の淡い味つけがベースですが、「日本酒やワインと一緒に楽しんでほしい」というように、酒肴としても申し分ありません。
鮮やかな藍色の皿は、瀬戸焼の窯元「宇助窯」の特注品。食材だけでなく、器や設えで季節感を表現するのも、茶の心から生まれた「一期一会」を大切にする懐石ならではのもてなしです。

むら川_造り

毎朝長浜市場に買い付けに行くという旬の魚を引いたお造りは、境港の本マグロに五島のクエ、玄海のヤリイカ、そして岩手産のキタムラキウニ。ちょいと山葵をのせて醤油につけて口に運べば、それぞれの魚の持ち味と香りが鼻孔に広がります。
添えられた醤油はキリッとした辛口の奧に、ほのかな旨味を感じます。聞くと「千葉産のヒゲタ醤油に煮切りなどをブレンドしています」とのこと。こうした細部まで妥協を許さない姿勢に、職人としての腕の確かさを感じます。

むら川_椀物

そして、美しい銀色に塗られた椀に盛られて登場したのは、九州近海で獲れた走り鱧を丁寧に骨切りした湯引きと、細切りしたカブ、ニンジン、カボチャ、キュウリなどの地野菜を上品な出汁で食べる「鱧の沢煮椀」。羅臼昆布と五番カビの本枯節で引いた出汁の淡い旨味を味わうには最高の一品です。
また、お椀も夏は涼しげな色味の平椀、冬は中身が冷めにくい漆塗りの深椀と、季節によって使い分けているそうです。「夏は涼しく冬は暖かに」という利休の言葉を思い出し、奥深い懐石料理の一端を垣間見ることができました。

むら川_店内

割烹料理店といえば堅苦しいイメージがあるかもしれませんが決してそんなことはなく、カウンター越しに気さくに応対してくれる村川さんとの会話も弾み、楽しいひと時を過ごすことができました。今回紹介したコース料理は前日までの予約制ですが、一品料理をアラカルトでも注文することができるので、ぜひ次回はふらりと寄ってみようかと思います。

店舗名:むら川.
ジャンル:日本料理
住所:福岡市中央区渡辺通5-15-8池田コーポ1F
電話番号:092-734-2118
営業時間:18:00~OS21:00(日曜は12:00~OS14:00)
定休日:月曜、第1・3・5日曜
席数:カウンター8席、掘りごたつ8席
個室:3~8名
メニュー:コース9,900円・13,200円・16,500円(要予約)
URL:https://muraka-wa.com

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この記事を書いたひと

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