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解析で判明“バックウォーター現象”がはん濫につながった?右岸・左岸で別れた被害

九州に大きな被害をもたらした今年7月の記録的な大雨。河川が氾濫するまでのメカニズムを専門家が調査。バックウォーター現象の起きた可能性が示唆されています。河川工学を専門とする九州大学の矢野真一郎教授は、福岡県を流れる筑後川の左岸側(久留米市付近)で被害が大きかったと分析しています。

「支流」が“バックウォーター現象”を引き起こして「はん濫」か


九州地方整備局がまとめたデータによると、福岡県久留米市やうきは市を流れる筑後川の支流・巨瀬川では、先月10日の朝方に急激に水位が上昇して氾濫。久留米市田主丸付近では、堤防が耐えられる水位を上回る、観測史上最高の水位を記録しました。巨瀬川は氾濫し、周辺地域では、多くの家屋が浸水被害を受けました。

巨瀬川近くに住む人「田主丸支所に避難してましたので命は助かりました」

巨瀬川の氾濫について、矢野教授はある可能性を指摘します。

矢野教授「おそらく巨瀬川ではバックウォーターが発生したのではないかと」

バックウォーター現象とは、河川の本流が増水したことによって支流の流れがせき止められたり逆流したりするものです。今回の大雨では、筑後川の水位が上昇したため、そこに流れこむはずだった巨瀬川の水が行き場所をなくして氾濫したというのです。一方で、矢野教授は筑後川の右岸側は、雨量の割りには被害が抑えられたと分析しています。

新たな砂防ダムが「10万立方メートル」の土砂を食い止める


矢野教授「右岸側は平成29年の九州北部豪雨の時に非常に大きい被害をうけた朝倉市とか東峰村がある。同程度の規模の雨だったとは思うが、思ったほどの大きい被害にはなっていなかった」

2017年の九州北部豪雨では、朝倉市を流れる赤谷川が氾濫。土砂崩れも発生して甚大な被害が発生。赤谷川周辺では、河川の改修や砂防ダムの整備が進められました。九州地方整備局によると、先月の大雨の際、赤谷川周辺では6年前と同じ規模の雨量を観測しましたが、河川の氾濫はありませんでした。新たに整備された砂防ダムが土砂崩れで発生したおよそ10万立方メートルの土砂を食い止め、家屋への被害を防いだということです。

矢野教授は、河川の水が溢れることを前提に、一定時間水をためる場所を確保するなどの様々な対策を組み合わせて被害を抑える「流域治水」の必要性を強調します。

矢野教授「すべてを川に流し込むのではなく一時的に水をためるところをたくさん作って、川の負担を減らす。流域治水をやるには色んなセクターのご協力が必要になります。電力会社の発電用のダムや農業用のため池とか。そういう方向に転換していかないと間に合わない時代がやってきている」

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