建て替えに1億5000万円 学校からプールが消える?! 増える水泳授業の民間委託 「維持費の負担」重く
公立の小中学校で、水泳授業を民間のスイミングスクールなどに委託する動きが広がっています。背景にあるのは、老朽化による維持費や忙しい教員の負担軽減。一方で、大都市では、「委託したくてもできない」事情があるようです。
プロのインストラクターが小中学校の水泳授業
福岡県古賀市の小学校です。バスに乗り込む子供たちが向かったのは、スイミングスクールです。古賀市では今年から市内にある小中学校11校すべてで、水泳の授業を民間の事業者に委託する取り組みを始めました。
教えるのは、プロのインストラクター。学校の先生はプールサイドで見守ります。屋内プールなので雨や猛暑など天候に左右されることなく計画通りに授業を進められるメリットがあります。
小学生
「水もきれいだし、雨の日でも使えるのがいいなと思います」
11校の授業は、すべて1か所の民間施設で行われます。一般の利用者もいるため、まとめて授業を組むことはできません。一般の利用者とレーンを分けるという工夫もしながら、3月まで授業を続けます。
雨の日でも授業ができる
今、こうした水泳授業の民間事業者への委託が、広がりをみせています。
福岡県太宰府市も4年前から一部の公立小学校の水泳授業を委託しています。
RKB 大北瑞季記者
「太宰市はいま雨が降っていますが、子供たちが水泳の授業を受けにきました」
委託を受けた民間施設は、午前9時からの営業時間を午後1時半からにすることで授業用に貸し切りできる時間を生み出しました。
委託のきっかけは「維持費の負担」
水泳の授業を民間に委託するきっかけは、学校のプールを維持するための経費の大きさでした。多くの学校でプールの老朽化が進んでいて、建て替えとなると費用は1億5000万円以上かかります。維持管理や水道代を含めると、今後20年のスパンで考えた場合、民間に委託した方が年間約700万円費用が削減されるといいます。太宰府市の楠田市長は民間委託には多くのメリットがあると考えています。
太宰府市楠田大蔵市長
「委託先に利用料を支払っていますが、昼間の平日は空いているプールがあると聞いていたので、施設側にとっても経済効果が大きいのではないかと思いました」
忙しい教員の負担も軽減
教員の負担も軽減されました。特に気温があがる暑い日には菌の繁殖を防ぐためこまめな水質検査やプールの清掃などが必要だったといいます。
太宰府市の教員
「毎日、日差しが強いときは土日も来て管理しなくてはいけなかったので助かっています」
今年は3校のみ委託していますが、今後は、太宰府市内にあるすべての小中学校11校に広げる計画です。
児童数が多い自治体は難しい
一方、民間委託を広げることに難しさを感じる自治体もあります。福岡市は今年、小学校3校の授業を委託しています。学校ではこれまで3人の教員が教えていましたが、委託先では、6人のインストラクターが指導しています。
福岡市の教員
「泳ぐコツをそれぞれの課題に合わせて細かく指導していると思います。泳ぎが苦手な子供も最初から顔をつけて泳いでいたので、効果的に指導してもらえている思いました」
小学生
「ここの授業の方がわかりやすくて、細かいところまで教えてくれるので、すぐに上達します」
福岡市も民間に委託する学校を増やしたい考えですが、児童の数が多い自治体ならではの悩みもあります。
福岡市教育政策課 平川陽一郎課長
「可能であれば、委託する学校を拡大したいですが、福岡市には小学校が145校あり、市内にある民間のプール施設は40か所くらい。今後どうするか考えていきたいと思っています」
また、貸し切りで使うには、施設によっては週に1日だけしかプールがおさえられず、1つの施設で何校もの授業を行うのは難しい状況です。
民間委託には課題も
現在、福岡県内では少なくとも6つの市町村で委託が行われています。メリットも多い一方で、施設へ移動する際の安全確保や授業のために貸し切る時間をどう工面するかなど、課題もあるようです。
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