まずは“素材”を先行発注、製品はそれから。競合の4倍に相当する約1年の納期を確保して、工場から競争力のある価格を引き出すことが「低価格路線」を支えます。男性向け作業服の専門チェーンから始まったワークマンが大きく舵を切ったのは2020年。女性層までターゲットを広げたのが「#ワークマン女子」です。物価高の局面でも価格を維持できる背景には、独自の開発サイクルがありました。
洗えて形状保持の「ニット」
全国に展開中の「#ワークマン女子」。10月20日には福岡で3店目がイオンモール福岡内(粕屋町)にオープン予定で、新規出店の波が続いています。ワークマンの中でも同店の魅力は機能性とファッション性の高さを兼ね備えた上で、低価格という点です。プリーツスカートには撥水機能があり、水をはじきます。ニットは洗濯ができるうえに、形状を保つ機能を備えています。
RKB本田奈也花「浸透せずに水だけが動いています」
ワークマン製品開発部・多賀寛悦第4部長「屋外で作業される方は、雨風をしのぐ撥水機能が必須。それを女性でも着られるようなプリーツスカートにした。飲みものをこぼした時も汚れが付きにくいので、喜ばれています。ニットは、何回も洗濯しても型崩れしない。ハンガーに干しても肩が飛び出ないので、取り扱いしやすい製品です」
「長い納期期間」で工場を味方につける
ワークマンはプライベートブランドの秋冬商品の価格を据え置きます。
多賀部長「工場が空いている閑散期に作業着を大量に作って、値段を下げることを通常のカジュアルウェアにも置き換えてやっています。いろんな材料が上がっていますが、大量に計画的にオーダーすることで工場も協力的にやってもらっています。価格も非常に大事なので、いろんな取り組みや手法で維持していく」
“いろいろな取り組み”の一つが開発サイクルです。ワークマンによると、市場投入の2年前に生地の開発に取りかかり、ほかのアパレルブランドの発注が少ない“閑散期”を狙って工場に発注。業界では3か月納期の企業が多い中、4倍に相当する1年前後の長い納期を確保することで、工場側から競争力のある価格を引き出します。優れたニットで攻めると決めれば、最終製品が決まらないうちにまず「生地」を開発・発注。納品を待つ間に、その生地を使ってどのような商品を展開するか決めます。ネックは「タイムラグ」。早く発注する分、デザインは普遍的なものにして、定番化した商品に力を注ぐ戦略です。
女性の社外取締役が繰り出す“提案”
国内に1000店舗以上展開しているワークマン。2019年には世界的なアパレルブランドに成長した「ユニクロ」の店舗数を超えました。今年6月に社外取締役に就任した濱屋理沙さんは、外部の視点から女性目線の様々なアイデアを提供しています。特に力を入れているのがキャンプ用品です。
ワークマン社外取締役・濱屋理沙さん「フュージョンダウンジャケットと呼ばれる中綿がふわふわのものも作っています。衣料品の技術を応用して、寝袋を作ってはいかがですかと提言してできたものです。一消費者として、キャンプグッズは価格が最初の敷居なんですよね。全部そろえようと思うと10万円ぐらいかかってしまう。ワークマンだったら絶対安くできるよね!この値段でこういう機能が欲しい、と提案している」
20日にオープンする新店は、年5億円の売り上げを目標に掲げています。ワークマンは、福岡県を西の拠点として店舗を拡げていきたい考えです。
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