室内を構成する天井・壁・床のうち、面の数が多い壁は視界に入りやすい部分です。それだけに、どのような色やデザイン、質感で仕上げるかによって室内の印象を大きく左右します。
壁の仕上げ材にはさまざまなものがありますが、今回はもっともよく使われる壁紙にフォーカスし、種類とイメージ通りの仕上がりや使い心地が期待できる賢い選び方をご紹介します。
壁紙の種類
一口に壁紙といっても、実はいろいろな素材があります。壁紙の素材の種類と主な特徴を解説します。
ビニールクロス
塩化ビニル樹脂が主原料の壁紙です。耐久性が高く安価で、色や柄が豊富なため、もっとも多く流通しています。耐水性や防汚性などの機能がついた物も開発されており、使用場所に応じて選択しやすいのが特徴です。
織物(布)クロス
麻や木綿などの自然素材を原料とするタイプと、パルプやポリエステルなどの化学繊維に熱などを加えて絡み合わせた不織布を原料とするタイプがあります。ビニールクロスよりもやや厚みがあり、重厚感が出せるのが特徴です。強度が高く伸縮しにくいため、ジョイント部分をきれいに仕上げることができます。欧米ではクロスの主流です。
木質系クロス
薄くスライスした天然木材やコルクを主原料としています。天然木材やコルクならではの質感を楽しめるだけでなく、色合いによってカジュアルにもシックにも仕上げられるのが特徴です。
紙クロス
洋紙や和紙、合成紙などが原料の壁紙です。水分に弱いため湿気が多い室内では劣化が早いものの、音を吸収しやすい、化学物質を含まず健康面の不安がない点が大きな特徴です。
珪藻土・漆喰クロス
無機質系クロスとも呼ばれ、土やセラミック、ガラス繊維などを含む珪藻土や漆喰を主原料としています。塗装したかのような独特の質感が人気で、調湿や消臭などの効果もわずかながら期待できます。
オレフィンクロス
ビニールクロスの代替品として開発され、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂が主原料です。焼却時に有毒ガスが発生しないエコな壁紙として知られており、汚れや傷に強くメンテナンスがしやすいという特徴があります。
イメージ通りの内装に!賢い壁紙の選び方
壁は室内の広い面積を占めるだけに、色やデザイン、質感によって部屋全体の印象が決まります。希望のイメージ通りの内装に仕上げるために、壁紙の選び方のコツを4つご紹介します。
張った時のイメージが好みのインテリアテイストに合うか考える
壁紙を選ぶ時についしてしまいがちなのが「壁紙だけを見て決めてしまう」ことです。以前、ある人気キャラクターのかわいい壁紙を見つけお子さんを喜ばせたくて選んだものの、好みのインテリアとのずれが気になって新築から2年ほどで張り替えたというお客様がいらっしゃいました。
最近は壁紙の色や柄、質感が多種多様になっており、素敵な壁紙がたくさんありますが、内装材をはじめ家具や照明器具、ファブリックなどの多くのアイテムのバランスが取れていないと、雑然とした落ち着かない雰囲気の部屋になってしまいます。
壁紙単体の好みで選ぶのではなく、張った後の仕上がりをイメージして「好きなインテリアのテイストにまとまるか」という視点で考えることが大切です。
逆に言えば、一目惚れした壁紙をどうしても使いたいので壁紙を起点にしてインテリアを決めていくという方法もあります。全体のバランスが取れるなら、インテリアを考える起点はどこにあっても問題ないので、室内を占める面積が大きい壁紙からインテリアを考えていくのもおすすめですよ。
部屋の用途によっては機能性を重視する
最近人気が高まっているのが、さまざまな機能を持たせた機能性壁紙です。タバコやペットの匂い成分を分解する消臭機能壁紙は、匂いがこもりやすい玄関やトイレ、クローゼットに採用されるケースが増えてきました。
表面にコーティングを施し汚れがつきにくくした防汚性壁紙は、中性洗剤を含んだ布で軽く拭くだけで汚れが取れやすいため、キッチンや子ども部屋におすすめです。
その他、抗菌機能・キズ防止・吸湿放湿・マイナスイオン発生などもあるので、部屋の用途に合わせて機能にも注目してみてください。
アクセントクロスで個性的な演出を楽しむ
アクセントクロスとは、室内の一部分だけ他の壁面とは異なる壁紙で仕上げる方法です。1面だけ他の3面と違う壁紙を張るというイメージが強いかもしれませんが、実はそれだけではありません。
- カウンターと吊戸棚の間
- 柱や梁
- 天井
- 二ッチカウンターの背面
といった部分だけ違う色や柄の壁紙を張ることで、より個性的な雰囲気を演出できます。また、壁前面にアクセントクロスを張る場合、1面だけでなく隣接する2面に張るという方法もおしゃれです。1面だけに張るよりも立体感が出やすく、絵画や写真などを飾った時により映えてディスプレイしがいがありますよ。
あえて白い無地壁紙を使わない
白い無地壁紙は根強い人気がありますが、無難な仕上がりになってしまうのがやや残念なところ。同じ無地の壁紙でも、色を薄いグレーやベージュにするだけでぐっとおしゃれ感が高まります。
日当たりがいい方角に大きな窓がある部屋の場合、入ってくる自然光をほんのり和らげる効果も期待できるので、落ち着いた雰囲気に仕上がります。
まとめ
国産品だけでなく輸入品も入れると、壁紙にはかなり多くのバリエーションがあります。しかも一度張るとしばらくは張り替えないため、新築時にポイントを押さえて選んでいくことが大切です。
壁紙メーカーのショールームで施工後のイメージを確認できるサービスもありますので、上手に活用しながら選んでいきましょう。
WRITER
河野 由美子 二級建築士・インテリアコーディネーター・防災備蓄収納1級プランナー
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住宅設備メーカーや住宅コンサルタント会社、大手ハウスメーカーでの勤務を経て独立。 日常の中に非日常を感じられる空間づくりをコンセプトとし、住宅やオフィス・医療施設・店舗などの設計およびインテリアコーディネートに携わっています。 建築インテリア関連記事の企画執筆や監修業務、研修講師、建築関連資格対策テキスト監修、工務店施工事例集ディレクションなどの実績も多数。
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