【裁判初日】ママ友に“洗脳”?「骨と皮だけ」5歳児餓死させた母親「言うことを聞くしかなかった」

福岡県篠栗町で2年前、5歳の男の子が十分な食事を与えられずに餓死する衝撃的な事件が起きた。保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕・起訴されたのは、男の子の母親と『ママ友』として知り合った女の2人。このうち母親の裁判が6日始まり起訴内容を認めた。捜査段階ではママ友に“洗脳”され、経済的に困窮していったとされる母親。真相はどこまで明らかになるのだろうか。

起訴内容を認めた母親、検察「重度の低栄養状態にした」

午前10時から始まった初公判には傍聴券を求めて市民が並んだ。碇利恵被告(40)は、黒い髪を後ろで束ね、黒のスーツ姿で下を向きながらゆっくりと入廷した。冒頭で裁判長から「起訴内容について話しておきたいことはありますか」と尋ねられると「ありません」と小声で早口に答え起訴内容を認めた。続いて検察官の起訴状の朗読が始まった。

検察官「食事を減らすなどして翔士郎ちゃんを重度の低栄養状態にして放置、餓死させたものである」

碇利恵被告は、保護する責任があるにも関わらず、その責任を果たさずに自分の子を死亡させたとして保護責任者遺棄致死などの罪に問われている。裁判は起訴状の確認などの冒頭手続きの後、具体的な証拠調べに入る。5歳にして餓死した翔士郎ちゃんの身には何が起きていたのか?捜査段階の情報を交えてそのいきさつを振り返る。

かかりつけ医「栄養失調どころではない、骨と皮だけ」

翔士郎ちゃんは碇被告の三男として生まれた。幼いころから翔士郎ちゃんを診察してきたかかりつけの医師の目には、同じ時期に生まれた子供と比べるとやや小柄だったものの、順調に成長しているように見えた。この医師は「子育てに真面目な母親だった」とカルテを確認しながら無念さを噛みしめた。

三田佳子医師「お母さんは真面目な方だったから、すべき定期接種などの予防注射は全部していらっしゃるし。翔士郎くんは標準よりも軽いお子さんでしたがずっと順調にきてました。亡くなったときは体重がガクっと減ってるわけですよね」

翔士郎ちゃんは2年前の2020年4月、極度の栄養失調に陥り死亡した。司法解剖で判明した死亡原因は「餓死」。5歳だった翔士郎ちゃんの当時の体重は1歳半の健診の時と同じ10キロほどしかなかった。死亡時はあばら骨が浮き出て手足も脂肪がほとんどない状態だったという。

三田医師「ショックもいいとこですよね。検視台に横たわっている、本当に骨と皮の写真。すごいショックで、一体どうしてこんなになったんですかって。栄養失調どころじゃない!骨と皮だけ」

“ママ友”に無心され1370万円渡す

翔士郎ちゃんの死にはある人物が深く関わっていたとされる。母親の碇被告とともに翔士郎ちゃんを餓死させたとして、逮捕・起訴された赤堀恵美子被告(49)だ。捜査関係者によると2人は2016年に幼稚園の「ママ友」として知り合った。

育児を手伝うなどして関係を深めた赤堀被告は「夫が浮気をしている」といった様々なうそを吹き込み、碇被告を精神的に支配し始めたとされる。2019年5月には夫と離婚し周囲から孤立した。碇被告は、赤堀被告からトラブルの解決金などを名目に繰り返し金銭を要求され、生活が困窮していったとみられている。

赤堀被告に渡ったとみられる金銭は、碇家の生活費にとどまらない。消費者金融からの借金も含めてその額は約1370万円に上っていた。これだけの多額の金銭を用立てしなければならなかったわけだから当然、碇被告は金策に苦心していた。当時、金を無心されたという知人の1人に話を聞けた。

碇被告の知人「碇被告から電話があって、金銭面で困っているので少し援助してもらえないかという内容でした。ガスとか水道とか、子供とかが食べていくためのお金がないので1万円でも2万円でもいいから貸してくれないか?という話だったんです。生活保護を受けていてなんでそんな状態になるのかとちょっと分からなかったです。それだけの理由じゃないなと感じたので、その辺も理由を聞いたんですけど教えてもらえなかったので・・・」

「子供に笑いかけるな」“洗脳”で厳しいルール

生活保護だけでは生活が立ち行かなくなった理由。捜査で浮かび上がったのは、赤堀被告の言葉巧みな嘘による“洗脳”だった。

捜査関係者「赤堀被告は親交を深める中で、共通のママ友が暴力団と関係しているというストーリーを切り出す。ボスと呼んだその人物が自分たちを監視していると繰り返し吹き込み、碇被告に信じ込ませていった」

その監視を逃れるためという設定だったのだろうか。赤堀被告は碇家に自分で決めた「ルール」を強いるようになる。

▽子供に笑いかけてはいけない▽家族で買い物に行かないなどのルールを設けて家族の行動を制限。碇被告の家族には、赤堀被告が持ってくるわずかな食料だけが与えられた。それでも翔士郎ちゃんの2人の兄は小学校の給食で飢えをしのいでいたようだ。

しかし、翔士郎ちゃんは違った。ルールを守らなかった“罰”として度々食事の量を減らされ、10日間以上水しか与えられないこともあったという。この頃までに通っていた幼稚園を退園している。満足に食べられない日が続き次第に低栄養状態に陥った・・・というのが捜査側の見立てだ。

しかし、翔士郎ちゃんは違った。ルールを守らなかった“罰”として度々食事の量を減らされ、10日間以上水しか与えられないこともあったという。この頃までに通っていた幼稚園を退園している。満足に食べられない日が続き次第に低栄養状態に陥った・・・というのが捜査側の見立てだ。

餓死を防げなかった行政「差し迫った危険はない」と判断

一方で、日に日にやせ細る翔士郎ちゃんの危険な状態に行政側も気づいていた。福岡県篠栗町などは碇被告と翔士郎ちゃんを見守りの対象として複数回の面談を重ねていた。また、事件前に親族から相談を受けた児童相談所も、自宅でドア越しに翔士郎ちゃんと面会した。ただ「傷やあざがなく、差し迫った危険はない」と判断し保護することはなかった。

こうした行政の訪問には、赤堀被告も立ち会っていた。その都度「母親の体調が悪い」などと言って本人に会わせないようにしていたとみられている。事件が発覚して家宅捜索が行われた際、自宅から碇被告が書いたとみられるメモが見つかっている。

「翔ちゃん、きょうも食べれんかったね。ごめんね」

短いながらも謝罪と自責の念が綴られたメモに母親としての複雑な思いが垣間見える。

初公判で検察「自由な意思はあった、最適な行動を放棄した」

翔士郎ちゃんの餓死から2年あまりが経った6日、福岡地裁で裁判が始まった。我が子を餓死させた保護責任者遺棄致死の罪に問われた碇被告は起訴内容を認めた。一方、検察側は明確な“マインドコントロール”を否定して責任を追及する構えだ。

検察側「赤堀被告に支配されていたからと言って、自由な意思が失われていたわけではない。自由な意思は十分にあり、被害者を助けることはできた。赤堀被告と対立することを恐れて主体的な行動を取らなかった。同居する母親で幼児の生存を第一に担う立場でありながら、赤堀被告の嘘を安易に信じ、赤堀を頼りトラブルを恐れて、子供のために最適な行動を放棄した。その経緯には責められるべき点がある。長期間の飢えの苦しみを与えたのは悪質」

一方、弁護側は「子供を守るために赤堀被告の言うことを聞くしかなかった」としたうえで「碇被告は当時の理解不能な行動にいまも苦しんでいて、重い実刑を科すのは相当ではない」と情状酌量を求めた。碇被告がハンカチで涙を拭う場面もあった。

この裁判は起訴内容に争いが無く、赤堀被告による“影響”を量刑上どう評価するかが主な争点となる。「言うことを聞くしかなかった」というその胸の内は法廷でどこまで語られるのだろうか。

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