「22枚目の遺書」が訴える“世界永遠の平和”BC級戦犯として命を奪われた藤中松雄さん

戦争の現実を伝え、未来に教訓をつないでいく特集企画を先週からシリーズでお伝えしています。現場の兵士として出兵した福岡県出身の藤中松雄さん。アメリカ軍から戦争犯罪人、BC級戦犯として命を奪われました。嘉麻市の平和祈念館には藤中さんが残した21枚の遺書が収蔵されていますが、このほど22枚目の遺書がみつかりました。

 

父が残した遺書

BC級戦犯として命を奪われた藤中松雄さんの次男、孝幸さん75歳。孝幸さんの手元には、父が残した遺書のコピーがあります。

RKB大村由紀子「辞世の句がここにあって、これが午後9時25分、あと三時間で、21枚目の遺書はここで終わっているんですよ。この遺書のあとの分ですね、田嶋先生のお宅にありました」

「BC級戦犯」藤中松雄さん

藤中松雄さんは終戦の年の4月、沖縄県の石垣島で、米軍爆撃機の搭乗員で捕虜となった3人のうち1人の殺害に関わりました。

連日の空襲で仲間の兵士を失う中、行われた米兵の捕虜殺害。仇討ちのように大勢の日本兵が関わり、そのうち46人がBC級戦犯として、米軍から裁かれました。「石垣島事件」と呼ばれています。

28歳で絞首刑に

この事件では、最終的に7人が絞首刑となり、松雄さんは、そのうちの一人となりました。まだ28歳でした。

1950年4月5日、死刑執行の宣告を受けた松雄さんは、米軍が管理する東京のスガモプリズンで、執行までの経過も記録した遺書を書き始めます。

教誨師の田嶋隆純さん

スガモプリズンで死刑囚に最後まで寄り添った、教誨師の田嶋隆純さん。田嶋さんから最後の食事への希望を聞かれた松雄さんは、代わりに申し出たことがありました。

*遺書朗読「出来ますならば、何か果物二ヶお願い致します。私は食べたくはありませんが、二人子供に父として最後の愛情を注ぐ一片にでもなればと思いお願いしたわけです。」

米軍は、要望に対して、りんご一個を部屋に差し入れました。

「遺書を読んだのは18歳のころ」

*遺書朗読「孝一、孝幸ちゃん、父が居ない為、老いの身もいとわず、おぢいちゃん、あばあちゃんは、母ちゃんは、どんなに孝一、孝幸ちゃんの為に御苦労なさって居るか、決して決して忘れないでね。可愛い可愛い、孝一、孝幸ちゃんよ。「始めて今、涙が出た」顔を洗って尚続ける。」

松雄さんが処刑された当時、孝幸さんはまだ3歳でした。仏壇にしまってあった遺書の全文を読んだのは、18歳になった頃だといいます。

藤中松雄さんの次男 孝幸さん「初めのうちはよう、読みながら涙がでよったですね。読むにつれ、そういうのを通り越しているから、ただ、おやじは自分としたら素晴らしい人間やなって」

22枚目の遺書が見つかる

藤中家に届けられた遺書は、21枚ありましたが、この後に書かれた22枚目の遺書が、田嶋教誨師の遺品の中からみつかりました。

藤中松雄さんの次男 孝幸さん「これ田嶋先生宛の遺書ですね」

*遺書朗読「愈々近まりつつありますが、こうした安らかな心で居られますのは、長い間教え導き下さった先生のお力だと深く深く感謝致して居ります。では先生、お元気に。さよなら」

藤中松雄さんの次男 孝幸さん「よう書いたもんやねようね、こんな手紙俺たちは書ききらんばい」

死刑執行の2時間前

日付は、4月6日夜10時30分頃。この二時間後、日付が変わった4月7日、午前0時半頃。13と書かれた扉の奥にある絞首台で、死刑が執行されました。

見つかった遺書以外の21枚は、嘉麻市の碓井平和祈念館に収蔵されています。学芸員の青山さんに22枚目の遺書をみてもらいました。

碓井平和祈念館 学芸員・青山英子さん「これが最後かもっていうことですね。やっぱりちょっと胸に迫るものがあります」

「戦争絶対反対」「世界永遠の平和」

A級戦犯のような指導者の立場ではなく、現場の兵士らが戦争犯罪に問われたBC級戦犯。

碓井平和祈念館 学芸員・青山英子さん「もうごくごく普通のどこにでもいる若い夫であり、父親であり、戦争が終わったら、それからまた、平和な生活を送っていたであろう人ですよね。だけど石垣島事件で、しかも実行者として命じられてやったっていう戦争であったら、ある面致し方なかったというふうにとらえられるようなこと、だけどやはり殺人であることは間違いない、冷静にみたらそれは罪ですよね、それを本当にものすごく重い罪として背負わされて、戦争によってどうすることもできない抗いようのない自分の立場ってことを精一杯、自分の命ってことを書き遺していらっしゃるような気がするんですよね。

松雄さんは、遺書の中で強く訴えています。

*遺書朗読「だから父は孝一、孝幸ちゃんに願って止まない事は如何なる事があっても「戦争絶対反対」を命のある限りそして子にも孫にも叫んで頂くと共に全人類がこぞって願う「世界永遠の平和」の為に貢けんして頂き度い事であります」

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