【図解詳報】福岡の5歳児餓死「母親の話は過激でまゆつば」“ママ友洗脳”の女が無罪主張

女は無罪を主張した。“ママ友”の息子を餓死させたとして、母親とともに保護責任者遺棄致死罪に問われた赤堀被告だ。すでに懲役5年の判決が出た母親は、これまでの審理で赤堀被告に洗脳され、支配されてきた窮状を訴えてきた。

しかし、当の赤堀被告は母親の話が「過激でまゆつばもの」と感じていたとその信憑性を一蹴。母親とは「馬の合う本当の友達だった」と述べたものの、共謀関係は否定した。福岡県篠栗町で起きた5歳児が餓死した衝撃の事件は、事件を主導したとされてきた女と母親の主張が真っ向から対立している。

◆母親と食い違う“主張”
裁判長「赤堀被告の言いたいことをまとめてください。どこか違うところとかありますか」
赤堀被告「指示はしてません」

少しの沈黙の後、女は保護責任者遺棄致死罪の成立を否定した。白髪交じりの髪を後ろで束ね、上下紺色の服を着て初公判に臨んだのは福岡県篠栗町の無職・赤堀恵美子被告。飽食の時代に5歳児が餓死した衝撃的な事件の“黒幕”とされてきた女の審理を直接、見るために、抽選の傍聴席を求めて多くの市民が朝から福岡地裁に並んだ。

当の本人は疲れている様子や思い詰めた様子はないまま法廷に入り、裁判長が入廷するまでは、弁護人の話に何度もうなずきながら答弁の打ち合わせをしていた。審理は裁判長の言葉から始まった。「体調に変わりはない?」と聞かれ「はい」と落ち着いた様子で答える赤堀被告。証言台の椅子に腰掛け、淡々とした様子でまっすぐ前を見つめながら起訴状の朗読を聞いた。

そして冒頭の一幕だ。検察側が主張する「5歳児を餓死させた」罪についての見解を問われると、赤堀被告は、小さく、覇気の無い声で早口に「指示はしていない」とだけ答えた。これまでの母親の審理では、赤堀被告が食事を抜くよう指示したことになっていた。

続く弁護側の説明では、そもそもの母親の法廷証言の信憑性にスポットがあたることになる。

◆壮絶な最期「あばら骨浮き出る」

事件が起きたのはおととし4月。福岡市のベッドタウンである篠栗町のマンション。ここにシングルマザーの碇利恵被告と2人の兄と一緒に暮らしていた5歳の翔士郎ちゃんは、極度の栄養失調に陥り命を落とした。死亡原因は「餓死」だった。亡くなるまでの1週間、翔士郎ちゃんはパンやおかゆなどのわずかな食事しかとっていなかった。何も口にしない日も3日あったという。

警察が餓死の経緯を調べはじめてから捜査線に浮上したのが、母親の幼稚園のママ友だった赤堀被告だ。当時の捜査幹部は振り返る。

福岡県警捜査一課平瀬正孝課長(当時)「碇家の食事の元となるようなお金を搾取するというような、本件の主導的立場にあるということを捜査で判断しまして、共犯性を認めているところであります」

赤堀被告は碇家の生活保護費や子ども手当などすべての収入を受け取っていたとされる。極度の貧困に陥りついに食べるものも無くなったのだろうか。翔士郎ちゃんはあばら骨が浮き出るほどやせ細り病院に運ばれ、そのまま息を引き取ったのだった。

◆検察「食事を減らすよう指示、不保護の状況を続けた」
この事件では、共犯として翔士郎ちゃんの母親の碇被告と赤堀被告の2人が起訴されている。起訴罪名はいずれも保護責任者遺棄致死罪。母親でもなく、一緒に暮らしていたわけでもない赤堀被告が罪に問われたのは、赤堀被告が「生活を支配」し、保護者に相当するほどの密接な関係と影響力があったと検察側が判断したからだ。

検察側の冒頭陳述の要旨は次の通り。

・碇被告やその子らの生活を実質的に支配していた
・食事の量を指示したり、罰として翔士郎ちゃんの食事を抜いたりした
・支配や指示を解消しなかった

支配の前段として赤堀被告がついたとするウソの具体例も列挙された。

「ママ友が(母親である碇被告の)悪口を言っている」
「ママ友から慰謝料請求されて、ボスが金を払うことで解決してくれた」
「ボスがママ友からお金を請求する裁判をしてくれている。手続き費用がかかる」
「裁判で勝つために、監視カメラで見られている。さまざまなルールを守って生活すべし」
「夫が浮気している」

これらは、碇被告の法廷での証言と概ね一致する。検察側は時系列に沿って説明した。

・2019年2月ごろ
碇被告の給料の一部、のちにほとんど全部をだましとるようになる
浮気の調査費用などとしてほとんどすべてだまし取る
碇被告家族は赤堀被告から差し入れられる食料に依存するようになる

2019年6月ごろ
碇被告にさまざまなルールを命じる
質素な生活をしなければならないと言い、経済面以外にも生活を支配する
翔士郎ちゃんが勝手に外出したり、食べものを食べたりした罰として、食事や回数を減らすように碇被告に指示した
翔士郎ちゃんは数日間食事抜きで水だけで生活をするようになったり、クローゼットに閉じ込めるなど体罰もするようになった
公的機関からの碇被告への接触も受けさせないようにした

2020年3月下旬ごろ
翔士郎ちゃんが低栄養状態になったのを認識していた。お腹を見たり触ったりしていた
ママ友へのラインで「骨と皮だけで死ぬんやないかな」などと送っていた
この低栄養状態は食事を与えるなどしていれば助けられていたが、赤堀被告は翔士郎ちゃんに十分な食事をさせるか、碇被告への指示や支配を解消させず、不保護の状況を続けた結果、餓死した

◆180度食い違う赤堀被告側の主張「まゆつば、過激」
29日の初公判で弁護側は、検察側の主張と母親である碇被告がこれまで法廷で述べてきた“主張”に異を唱えた。すなわち、支配関係などは存在せず、そもそもボスや離婚裁判などの話は碇被告から聞いたもので赤堀被告のついたウソではないとした。

赤堀被告の弁護側の説明要旨は次の通り。

・碇被告は、赤堀被告にとって久しぶりの本当の友達だった。碇被告とは馬の合う関係だった
・碇被告は夫に対する強い不満があり、離婚調停をしていてボスという人物に相談していると聞いた
・碇被告はボスに依頼して裁判費用を支払っていると聞いた
・裁判費用の支払いや借金を依頼され、その返済として金銭を受け取ったことはあるが、それ以外はない
・家の中にボスが監視カメラを設置している、と聞いた
・碇被告はかなり苦労しているようで協力を求められることもあった
・碇被告の話は過激な内容でまゆつばものの話であったが、何か意見を言えば嫌われると思っていた

また、弁護側からは市民から選ばれた裁判員に注文もあった。「本当に2人の関係性が碇被告の説明するようなものだったのか、考えてもらいたい。裁判員の皆さんはいろんな報道を目にしていると思うが、裁判の証拠のみに基づく判断をお願いしたい」

◆焦点は「保護義務」「共謀関係」
この事件をめぐっては、今年6月に開かれた母親の碇被告の裁判で、福岡地裁が赤堀被告による「支配」を認定した上で「生命・身体を保護する行動をとることは期待可能で、一定の非難は免れない」として懲役5年の判決を言い渡している。(求刑は懲役10年)執行猶予付きの判決を求めていた碇被告側は、この判決を不服として控訴している。

判決から2か月あまり。赤堀被告は母親の碇被告の証言の信用性を否定し、無罪を主張した。食事の管理を含めて赤堀被告は本当に碇家の生活を支配していたのか、そして、2人に共謀関係が成立するか裁判の大きな争点となる。

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