【被害本人が証言】「イヒヒ、言うまで一緒」鎖で“動物のように”留学生を拘束した日本語学校

渦中のベトナム人留学生は「動物のように扱われた」と証言した。学生が通っていた福岡市の日本語学校はこの“拘束”事件をきっかけに国から認可を抹消されている。SNSで拡散した動画には「言うまで一緒」と何かを白状するよう迫る職員の肉声が収録されている。職員は何を求めて鎖で人をつなぐ「人権侵害」を行ったのか・・・。RKBの取材に対し、動画に映る留学生がいきさつを明らかにした。

◆就職目指して来日したら“人権侵害”

「イヒヒ。言うまで一緒。はい。教えて早く、早く教えて、教えて!」

動画に映るのは、留学生のベルトに鎖をかけ南京錠をつける日本語学校の男性職員。ほかにも複数の職員がいるのだろうか、周りの笑い声も聞こえる。この衝撃的な動画は去年10月に撮影され、SNSで拡散した。

被害学生「鎖をつなげられたあと、私がトイレに行きたくても行かせてくれず、先生に服をつかまれて引っ張られました。人間なのに動物みたいな扱いをされて本当に苦しかったです。私の人権はすべてなくなってしまったと思いました」

こう話すのは動画で拘束されていた本人、ベトナム国籍のチャン・マウ・ホアンさんだ。もともと日本車が好きだったチャンさんは、日本で自動車関連の仕事に就くことを目指して福岡市南区の日本語学校「西日本国際教育学院」に2020年に入学した。

◆学校は“学級崩壊”か「先生はほとんど教えていない」
西日本国際教育学院は1992年に設立され、アジアを中心に10か国以上からの受け入れ実績がある。定員は約930人に上り、西日本で最大規模の日本語学校だ。しかし、チャンさんにとってその教育環境は、想像と大きくかけ離れたものだった。

鎖でつながれたチャンさん「学校の授業は勉強に集中できるような雰囲気ではありませんでした。生徒たちは授業中でも自由に遊んだり居眠りをしたりしています。先生たちもほとんど教えていないんです。ほとんど勉強ができないので、転校したいと思っていました」

これについては食い違う証言も出ている。RKBが取材した元職員は「最近の授業は学生に対する指導が行き届いていたようだ」と話す。ほかの留学生からも「良い学校だった」との声も聞かれるが、チャンさんにとっては“学級崩壊”を絵に描いたようた授業だったようだ。

ただ、教育環境を変えるために別の学校に転校するわけにはいかない事情があったという。チャンさんは転校を学校側に切り出せば「絶対に反対される」と知っていた。あの手この手で転校を妨害された先輩の体験談を聞いていたからだ。そこで、チャンさんは転校ではない“ウソの理由”を職員に告げた。これが問題の“拘束事件”につながったのだ。

◆帰国すると言ったら「拘束」パスポート出せと迫られた
チャンさん「ウソをついて『ベトナムに帰国する』と言ったら、在留カードとパスポート、身分証明書を出せと言われました。強制帰国させられる学生も見てきたので私は拒否しました。そしたら鎖につながれ、書類を保管している場所を早く言えと詰められたんです」

チャンさんを待っていたのは、強い言葉どころではなかった。南京錠と鎖による「身体拘束」だ。RKBはチャンさんを拘束した職員に取材を試みた。何度も電話をかけたものの、ついぞ応答はなかった。留学生トラブルに詳しい弁護士は、学校が「実力行使」に動いた背景をこう推測する。

指宿昭一弁護士「留学生のうち、オーバーステイ(不法残留)の人が3割以上の場合、日本語学校としての受け入れができなくなる、留学生が日本語学校をやめてオーバーステイになったら困ると、そのことを意識した可能性はあります。鎖でつないだりしていわば見せしめのようなことをするのは、留学生の囲い込みをして学生数を減らしたくないという意図もあると思います」

◆学校は「認可抹消」在校生の在留資格どうする?
事態を重くみた出入国在留管理庁は先週、西日本国際教育学院に対し今後5年間、留学生の受け入れを認めない行政処分を出した。チャンさんへの拘束を他の職員も止めようとせずその後、寮に戻ったチャンさんを翌日まで部屋の外から監視したことなどが悪質な人権侵害にあたると判断した。

松野官房長官も会見で「人権侵害行為は決してあってはならないものであり、今回の処分は入管庁が厳正に対処したもの」と述べている。入管庁は、西日本国際教育学院の在校生約630人についても転校などを促すよう指導する方針だ。ただ、この転校をめぐっては先出の弁護士が懸念する。

指宿昭一弁護士「入管庁は処分しっぱなしでいいのか考えなければいけない。受け入れ先がないと留学の在留資格がなくなって帰国せざるを得なくなる。それは留学生にとって著しい不利益になる。そうならないように万全の対応をとるべきだと思います」

すでに在校生は窮状を訴えている。

在校生「大変ですめっちゃ大変です。お金もかかるし、誰か支援してくれたら全然いいけどでも支援してくれる人おらんから」

◆学校がホームページでコメント「あってはならないこと」
入管庁の処分を受けて、西日本国際教育学院はホームページで次のようなコメントを出している。

「教育機関として人権侵害行為はあってはならないことで、重く受け止めている。社会の信頼を失墜させるもので、当学院としても到底許容しうるものではありません」

あくまでもひとりの職員による問題行動だったとも捉えられるが学校の運営に問題はなかったのだろうか。

鎖でつながれたチャンさん「学校を見ると、鎖につながれたことを思い出して怖い気持ちがよみがえってきます。日本のことは好きなので、今後は別の学校に通って、車の部品を作ることを勉強したいと思っていますが、現実的にはなかなか難しいです。日本語学校のルールや留学生の教育のことなどがすべて変わってほしいと思います」

チャンさんは警察に被害届を出した。在留資格は「特定活動」に切り替えて日本での生活を続けている。次回は、関係者などの証言をもとに留学ビジネスの闇に迫る。

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