【詳報】「幸せな生活、成長する未来を奪った」ママ友に懲役15年の判決 “生活の支配”を認定~福岡5歳児餓死

裁判所は「他家族への生活の支配」を認定し、ママ友に検察側の求刑通り懲役15年の判決を言い渡した。福岡県で5歳の男の子が餓死した事件は、母親とママ友の2人が“共犯”として保護責任者遺棄致死罪に問われ、いずれも実刑判決を受ける結末を迎えた。

焦点は、親でもなく生活を共にしていたわけでもない第三者の“ママ友”を母親の共犯に問えるかだった。福岡地裁は、ママ友が男の子の一家に強い影響力を持ち、食事制限につながるきっかけをつくったと判断した。ママ友は「すべて母親の責任」と述べ、無罪を訴えていた。

起訴状はすべて“事実”と認定、裁判長「食事量を制限し、生活全般を実質的に支配」

起訴状によると、赤堀恵美子被告(49)は碇利恵被告(40)と共謀し、碇被告の三男・翔士郎ちゃん(当時5歳)に十分な食事を与えず、2020年4月に餓死させたほか、碇被告から生活費など計約200万円をだまし取るなどしたとされている。

赤堀被告はこれまでの審理で「すべて母親の責任」と述べ、家族への支配や現金をだまし取ったことなどを否定。無罪を主張していたものの、司法の判断は有罪、それも求刑通りの懲役15年だった。母親の碇被告は懲役5年の判決だったため、量刑面ではママ友の赤堀被告が主犯ということになる(裁判体は別)。

福岡地裁は、起訴状に記載された内容はすべて事実と「認定」した。その上で、裁判長は判決理由の中で赤堀被告を厳しく糾弾した。

裁判長「嘘を重ね慰謝料名目で収入のすべてを交付させるとともに、質素な生活を送るよう食事量の制限を指示し、監視カメラを設置したという嘘などによって母親の碇被告や家族の生活全般を実質的に支配していた。欲望のままに犯行に及んでいて、酌量の余地はない。保護責任者遺棄致死の事件の中でも極めて重く、詐欺や窃盗も考慮すると被告人の刑事責任は懲役15年を下回るものではない。不合理な弁解や碇被告に責任転嫁して自らの責任に向き合わず、懲役15年に処するほかない」

母親の証言「信用性は高い」裁判所が判断した理由

裁判長はさらに、証言の信用性を判断した理由もあげた。

裁判長「碇被告の証言の核心部分は、LINEの履歴や碇被告が残したスマホアプリのメモ、困窮した生活状況などの客観証拠によって強く裏付けられている。関係者との証言とも合致している。子供を可愛がっていたはずの碇被告が、独断専行で周囲との関係を断ち切り、子供を餓死させる理由は見当たらない。合理的な説明で、証言の信用性は相当に高いものと判断した」

一方、赤堀被告の証言は不自然だと退けた。

裁判長「メッセージの内容や大量に即時に返信していることから、赤堀被告が主張する演技とは信じがたい。また、数年間演技をするのは不自然で、客観的証拠に辻褄を合わせようとしているとしか考えられず、到底信じられない」

最期の言葉は「ママごめんね」栄養失調で餓死

碇翔士郎ちゃんは福岡県篠栗町の自宅で2020年4月、極度の栄養失調に陥り、餓死した。5歳だった。亡くなる半年ほど前から食事を徐々に減らされ、最期の1週間は、何も口にしない日もあった。

先立って今年6月に行われた母親・碇被告の審理で、碇被告は翔士郎ちゃんの最期の様子を語っている。呼吸が止まる数時間前、絞り出すようにして発せられた言葉は「ママごめんね」だった。

その後、翔士郎ちゃんを餓死させたとして、母親の碇利恵被告と幼稚園のママ友として知り合った赤堀被告が保護責任者遺棄致死の罪に問われた。

「魔法にかかった」母親が訴える“支配”とは

衰弱する翔士郎ちゃんを母親はなぜ助けなかったのか。裁判の最大の争点は赤堀被告による実質的な「支配」だった。今年6月の裁判で懲役5年の判決を受け、この裁判で検察側の証人として出廷した碇被告は、当時の心理状態をこう述べている。

母親・碇被告「赤堀の話はリアルで魔法にかかっってしまうような気がしました。赤堀から毎日頭ごなしに怒られ、罵声を浴び、1日中正座で謝り、精神的に病んでいましたが、相談するところもなく、自分の中でどうしようもありませんでした」

“魔法”にかけられたように母親がすっかり信じたというストーリーは“夫の浮気をめぐる架空のトラブル”だった。このトラブルの処理のために赤堀被告に裁判費用として多額の生活費を渡し、家族の食事量を制限して質素な生活を送るよう指示されたと碇被告は証言する。

そして、赤堀被告が提供するわずかな食料に頼るようになり「怖くて逆らえなかった」と涙ながらに訴えた。検察側は、こうした碇被告の証言を立証の柱とした上で「赤堀被告がいなければ事件は起きなかった」として母親を上回る懲役15年を求刑した。

誰を信じる?検察「裏付けある」

結局、この裁判は母親の碇被告とママ友の赤堀被告の食い違う証言をつきあわせて、どちらが真実を語っているか判断するものだった。

赤堀被告の主張が真実であれば、母親の碇被告の単独犯ということになる。一方、母親の主張が真実であれば、検察の主張する通り、そもそも翔士郎ちゃんが餓死することはなかった。

検察側は、両被告のラインの履歴などの客観的な証拠で裏付けがあることを強調し「内容が具体的で、体験したものでしか語れない」などとして、碇被告の証言が信用できると主張。一方、赤堀被告側は「碇被告にはウソの証言をする理由がある」などと訴え、両者の主張は平行線をたどっていた。

裁判員を含めた福岡地裁の判断「支配あった」「金銭欲や悪意による犯行」

21日午後3時の判決で、福岡地裁は碇被告の証言が信用できると結論付けた上で「様々な虚言を重ねて碇被告を周囲から孤立させ、強い心理的影響下に置いた」として赤堀被告による『支配』を認定した。

裁判長「翔士郎ちゃんの保護が必要なことを認識しながら、その後も碇被告の収入を根こそぎだまし取り、食料の確保を困難にさせたもので、金銭欲や悪意による犯行に酌量の余地はまったくない。幸せな生活を送り、様々な経験をして成長する未来を奪ったことは取り返しが付かない重大なことだ」

母親の碇被告とママ友の赤堀被告の両者に実刑判決が出た。ただ、どれだけ重い判決が出ようとも、翔士郎ちゃんは帰ってこない。

SHARE
  • Twitter
  • Facebook
  • LINE