政府が2024年に予定している健康保険証の廃止とマイナンバーカードへの一体化。利便性が大きく上がる反面、医療現場からは反対の声もあがっています。一本化することのメリットやデメリット、市民が疑問に思っていることを宮脇キャスターが解説します。
◆マイナンバーカードの普及率は49%
政府が今年度中に、ほぼ全ての国民に普及させたいとしているマイナンバーカード。今年12月末まで実施しているキャンペーンでは、カードを新たに作った人は最大5000円相当、カードを健康保険証として登録したり、国からの給付金を受け取る口座を登録したりした人はそれぞれ7500円相当のポイントがもらえ、最大2万ポイントを受け取れます。
ただ、9月末時点での普及率は福岡県で49・6%、佐賀県で50・3%、全国平均で49%と半数程度にとどまっています。そんな中、河野デジタル大臣は2024年秋に健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードに一体化すると発表しました。
◆“利便性”は大幅アップ メリットの数々
河野デジタル大臣「転職就職、退職のたびに今保険証が切り替わらなければならない。そうしたことが必要なくなりますので、利便性は上がってく」
健康保険証がマイナンバーカードに統合されれば・・・
1)就職や転職したときの切り替えや引っ越しや結婚をしたときの変更がいらなくなります。
2)医療機関を受診するときに、保険証、診察券、お薬手帳が1枚のカードで済み、月に1回の保険証の確認もいらなくなり、窓口での手続きが簡素化されます。
3)患者の同意があれば、過去の診療内容や処方された薬の情報を複数の医療機関で共有もできます。
宮脇キャスター:
引っ越したり、複数の病院にかかったりするときに、いちいち説明や書類の提示をしなくても登録されたデータを利用できます。
池尻キャスター:
確かに便利になるのは分かるんですけど、それだけ情報が詰まったカードをなくしてしまったときが心配ですね。
宮脇キャスター:
心配される個人情報の漏えいに関しては、コールセンターに連絡すれば24時間・365日対応してくれてカードの利用を一時停止できます。さらに、他人が入手して不正に情報を読み出そうとすると、中のICチップが自動的に使えなくなる仕組みになっています。
◆医師の8割が反対?「急すぎる」
一方で医師からは反対の声も数多く聞かれます。福岡県宗像市の外科医院の理事長で、福岡県保険医協会の会長を務める林裕章医師に聞きました。
福岡県保険医協会・林会長「メリットはあるが、セキュリティの問題などもあり医師の8割が反対している。対応できない高齢者が取り残される懸念もあります」
病院などはさらに、マイナンバーカードの情報を読み取って利用するためのオンラインシステムを導入する必要があります。政府は来年3月末までに、原則、すべての医療機関と薬局に導入を義務付けていますが、対応できないところもあり実現は難しいといいます。
福岡県保険医協会林会長「導入しないと保険医を認めないという、義務化が無理、停電が起きたらどうするのか、訪問診療はどうしたらいいのかとか課題も多い。デジタル化のメリットも分かるが、急に推し進めるのではなく、慎重にしてほしい」
このため福岡県保険医協会は10月20日に、方針の撤回を求める要請書を河野デジタル大臣に提出する予定です。
本田キャスター:
医療機関にとってはメリットが多いようにも思えるんですが、反対の声もあがっているんですね?
宮脇キャスター:
医療機関は今年度中にマイナカードを利用するためのシステムを導入することを義務づけられ、期間の短さや費用負担の問題が指摘されています。また、個人情報のセキュリティは本当に大丈夫なのか、トラブルが起きた時に医療機関が責任を問われるのではという懸念もあります。
さらに、高齢者がカードへの切り替えや利用に対応できず、窓口の負担がかえって増すのではないかという声もあるようです。
池尻キャスター:
政府は今回、ずいぶん急いでカードの普及や運用を進めようとしているように見えますよね。
宮脇キャスター:
新型コロナが拡大してからのさまざまな場面で、日本の医療や行政のデジタル化が他の国よりも遅れていると指摘されたことがあります。日本よりはるかにデジタル化が進んでいるお隣・韓国の状況を見てみます。
◆デジタル先進国“韓国”の事例
日本のマイナンバーのような「国民総背番号制」がすでに当然になっているのがお隣の韓国です。新型コロナの感染が始まった2020年3月以降に起きたマスク不足。購入枚数が制限される中、活用されたのが住民登録証です。
薬局では、住民登録証に記録された購入履歴から、新たに購入できるかチェックしました。また、生活支援の給付金も、住民登録証にひもづいたクレジットカードを通じて速やかに振り込まれました。
一方で、行動履歴も把握できることから、感染した人が立ち寄った場所が公表され、プライバシーの侵害を指摘する声もありました。住民登録証はもともと、北朝鮮のスパイを潜入させないために導入され、すでに50年以上使われています。
今ではこれがないと、病院での保険の適用はもちろん、携帯電話やクレジットカードなどの契約もできず、社会生活を送るのが困難になります。個人の行動までも国に筒抜けですが、多くの韓国人にとってはそれが当たり前になっていて、懸念を抱く人はほとんどいないのが実情です。
◆「国民の疑問に答えながら、丁寧に進めて」
本田キャスター:
確かに進んでいるなと思う一方で、正直なところ、そこまで個人情報を管理されるのもちょっと…という気はしますね。
宮脇キャスター:
始まりはスパイ対策だったという歴史的経緯もあって、同じ土俵で論じられない部分もあるんですが、ただ、日本政府も今後、マイナカードにひも付ける情報をさらに増やしていく方針です。まず、来年5月をめどに、マイナンバーカードの機能をアンドロイドのスマートフォンにも搭載できるようにします。さらに、運転免許証との一体化についても2024年末までという現在の目標を前倒しすることを検討しています。
池尻キャスター:
便利な面もある一方で、一律に義務化されたり、短い準備期間しかなかったりして不安や懸念を感じている人も多いので、国民の疑問には丁寧に答えながら進めてほしいですね。
◆マイナンバーカードの普及率は49%
政府が今年度中に、ほぼ全ての国民に普及させたいとしているマイナンバーカード。今年12月末まで実施しているキャンペーンでは、カードを新たに作った人は最大5000円相当、カードを健康保険証として登録したり、国からの給付金を受け取る口座を登録したりした人はそれぞれ7500円相当のポイントがもらえ、最大2万ポイントを受け取れます。
ただ、9月末時点での普及率は福岡県で49・6%、佐賀県で50・3%、全国平均で49%と半数程度にとどまっています。そんな中、河野デジタル大臣は2024年秋に健康保険証を原則廃止し、マイナンバーカードに一体化すると発表しました。
◆“利便性”は大幅アップ メリットの数々
河野デジタル大臣「転職就職、退職のたびに今保険証が切り替わらなければならない。そうしたことが必要なくなりますので、利便性は上がってく」
健康保険証がマイナンバーカードに統合されれば・・・
1)就職や転職したときの切り替えや引っ越しや結婚をしたときの変更がいらなくなります。
2)医療機関を受診するときに、保険証、診察券、お薬手帳が1枚のカードで済み、月に1回の保険証の確認もいらなくなり、窓口での手続きが簡素化されます。
3)患者の同意があれば、過去の診療内容や処方された薬の情報を複数の医療機関で共有もできます。
宮脇キャスター:
引っ越したり、複数の病院にかかったりするときに、いちいち説明や書類の提示をしなくても登録されたデータを利用できます。
池尻キャスター:
確かに便利になるのは分かるんですけど、それだけ情報が詰まったカードをなくしてしまったときが心配ですね。
宮脇キャスター:
心配される個人情報の漏えいに関しては、コールセンターに連絡すれば24時間・365日対応してくれてカードの利用を一時停止できます。さらに、他人が入手して不正に情報を読み出そうとすると、中のICチップが自動的に使えなくなる仕組みになっています。
◆医師の8割が反対?「急すぎる」
一方で医師からは反対の声も数多く聞かれます。福岡県宗像市の外科医院の理事長で、福岡県保険医協会の会長を務める林裕章医師に聞きました。
福岡県保険医協会・林会長「メリットはあるが、セキュリティの問題などもあり医師の8割が反対している。対応できない高齢者が取り残される懸念もあります」
病院などはさらに、マイナンバーカードの情報を読み取って利用するためのオンラインシステムを導入する必要があります。政府は来年3月末までに、原則、すべての医療機関と薬局に導入を義務付けていますが、対応できないところもあり実現は難しいといいます。
福岡県保険医協会林会長「導入しないと保険医を認めないという、義務化が無理、停電が起きたらどうするのか、訪問診療はどうしたらいいのかとか課題も多い。デジタル化のメリットも分かるが、急に推し進めるのではなく、慎重にしてほしい」
このため福岡県保険医協会は10月20日に、方針の撤回を求める要請書を河野デジタル大臣に提出する予定です。
本田キャスター:
医療機関にとってはメリットが多いようにも思えるんですが、反対の声もあがっているんですね?
宮脇キャスター:
医療機関は今年度中にマイナカードを利用するためのシステムを導入することを義務づけられ、期間の短さや費用負担の問題が指摘されています。また、個人情報のセキュリティは本当に大丈夫なのか、トラブルが起きた時に医療機関が責任を問われるのではという懸念もあります。
さらに、高齢者がカードへの切り替えや利用に対応できず、窓口の負担がかえって増すのではないかという声もあるようです。
池尻キャスター:
政府は今回、ずいぶん急いでカードの普及や運用を進めようとしているように見えますよね。
宮脇キャスター:
新型コロナが拡大してからのさまざまな場面で、日本の医療や行政のデジタル化が他の国よりも遅れていると指摘されたことがあります。日本よりはるかにデジタル化が進んでいるお隣・韓国の状況を見てみます。
◆デジタル先進国“韓国”の事例
日本のマイナンバーのような「国民総背番号制」がすでに当然になっているのがお隣の韓国です。新型コロナの感染が始まった2020年3月以降に起きたマスク不足。購入枚数が制限される中、活用されたのが住民登録証です。
薬局では、住民登録証に記録された購入履歴から、新たに購入できるかチェックしました。また、生活支援の給付金も、住民登録証にひもづいたクレジットカードを通じて速やかに振り込まれました。
一方で、行動履歴も把握できることから、感染した人が立ち寄った場所が公表され、プライバシーの侵害を指摘する声もありました。住民登録証はもともと、北朝鮮のスパイを潜入させないために導入され、すでに50年以上使われています。
今ではこれがないと、病院での保険の適用はもちろん、携帯電話やクレジットカードなどの契約もできず、社会生活を送るのが困難になります。個人の行動までも国に筒抜けですが、多くの韓国人にとってはそれが当たり前になっていて、懸念を抱く人はほとんどいないのが実情です。
◆「国民の疑問に答えながら、丁寧に進めて」
本田キャスター:
確かに進んでいるなと思う一方で、正直なところ、そこまで個人情報を管理されるのもちょっと…という気はしますね。
宮脇キャスター:
始まりはスパイ対策だったという歴史的経緯もあって、同じ土俵で論じられない部分もあるんですが、ただ、日本政府も今後、マイナカードにひも付ける情報をさらに増やしていく方針です。まず、来年5月をめどに、マイナンバーカードの機能をアンドロイドのスマートフォンにも搭載できるようにします。さらに、運転免許証との一体化についても2024年末までという現在の目標を前倒しすることを検討しています。
池尻キャスター:
便利な面もある一方で、一律に義務化されたり、短い準備期間しかなかったりして不安や懸念を感じている人も多いので、国民の疑問には丁寧に答えながら進めてほしいですね。
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