食通の街、福岡を支える立役者⑤ 「九州郷土料理わらび」を経営している平野佳子さん

~RKBラジオ 弓削聞平スマイルディッシュ(毎週金曜午後6時45分~)より~
飲食店がひしめき、全国の食通が注目する街・福岡。この街で、食を通して人々に笑顔を与えている、料理人やソムリエたちをゲストに迎え、ここ10年でのべ1万軒外食している弓削聞平と、世界中の食を語れるアナウンサーになりたい田中みずきの2人が、彼らの情熱の源に迫ります。

ワイン・日本酒・焼酎・ビール......
料理をより美味しくしてくれるお酒の力は大きいですよね。
もちろん弓削さん、みずきさんもお酒は大好きだそうです。
今回は日本酒に詳しい女将さんがいる店を訪ねるとあって、2人のテンションも少々高め(笑)。
福岡市博多区博多駅前にある「九州郷土料理わらび」の女将・平野佳子さんにお話を伺います。
店内に入ってまず目に飛び込むのは、冷蔵庫にずらりと並んだ日本酒! 常時60種類はあります。
「日本酒が好きな人には堪りませんね〜」
と田中アナ、声のトーンがさらに上がります。


さて、お酒の話は後ほどゆっくり伺うとして、お料理も気になるふたり。日本酒に合う九州の郷土料理が味わえるということですが、どんなメニューがあるのか平野さんに聞いてみました。
「福岡だとやっぱり明太子を使ったお料理、そして大分のとり天、宮崎のチキン南蛮や地鶏、鹿児島の黒豚など、よく知られている九州の郷土料理です」
九州一円の美味しい料理とお酒がここに来ると一度に味わえるようです。

「郷土料理と日本酒とくれば、しっとりと着物姿の女将が登場するのかなと想像していたんですが、それはお店のオリジナルTシャツですか?」と田中アナ。
店名「蕨 わらび」と文字が入ったTシャツを爽やかに着こなす平野さんは笑いながらこう答えます。「店オリジナルではないんです。実は大将が埼玉県蕨(わらび)市の出身で、蕨市内で売られているTシャツなんですよ」
店の料理は大将である平野さんのご主人が担当。店の名前「わらび」はご主人の出身地だったんです。
「九州にいるからこそ地元のことを忘れちゃいけないという、大将の郷土愛ですね! なるほど〜」と弓削さんも店の名前の由来を初めて知ります。


お店を構えて19年目、博多駅から近いという立地の良さからも地元のサラリーマンや観光客も多く訪れる店です。もちろん日本酒を目指してこの店に来る方も増えていて、中でも女性客が近年では目立つようになりました。
弓削さん曰く「最近、日本酒イベントに行くと女性がかなり多くて驚きますよね。10年前はそんなに女性が日本酒、日本酒って感じではなかったと思うのですが......」

ここからは日本酒の魅力を女将の平野さんにたっぷりと語っていただきましょう。
「燗とか冷酒とかの温度帯であったり、合わせるお料理だったり、また酒器でも味が変わるのが、すごく面白くて興味深くて、そういう部分も女性が好きなのかなと思いますね」
近年、日本酒が女性から支持される理由は多岐にわたると平野さんは話します。
弓削さんも共感です。
「例外もありますが、洋食は無地の白い皿が多いですが、和食は本当にいろんな器があって、器も含めて料理を楽しむところがありますよね。酒器も目で見て楽しむという。それは日本独自の文化でいいなぁと思いますね」 

平野さんが日本酒にハマったきっかけは、店でのこんなエピソードからでした。
「うちの店は焼酎ブームもあり、以前は焼酎に力を入れていたんです。ところが年々、日本酒の人気が高まるにつれ、注文も増えてきていきました。そんなある日、お客様から『冷やで下さい』 とオーダーされ冷酒をお出ししてしまって〜(汗)」
そうなんです。勘違いしている方も多いのですが、本来「冷や」とは冷酒のことではなく、常温のお酒のことをいいます。お客さまから「全然分かってないな」と言われた平野さん。
その時は「分かってない」という意味すら分からなかったのだそうです。
「私は日本酒について何も知らないんだなっていうのを実感して、これじゃいかんと思ったのが、勉強するきっかけでした」
それが3、4年ぐらい前の出来事。そこからどんどん日本酒の虜になっていったと話す平野さんはお客さまのひと言からスペシャリストへ変身。
「無知さに気づかせてくださったことに、すごく感謝ですね」

ところで福岡県には、57軒もの日本酒の蔵があるのをご存知でしたか? これは全国で5位の多さです。
昨年、平野さんはそれら全ての蔵を巡り、51蔵127銘柄の日本酒を集めました(買えなかった蔵もある)。そして、それら全てのお酒が飲み放題になるイベントを開催したそうです。
「ほとんどの皆さんが、一口ずつ全種類飲まれていました」
「全種類ですかー!! それぞれ味も違って特徴があるんでしょうけど、もう3、4杯目くらいから分からなくなりそうです」
とさすがの田中アナもびっくり(笑)

文化や歴史が大きく影響し、各地域や蔵ごとにそれぞれの特徴がある日本酒。その違いも伝えられるようになりたいと、意気込みを語る平野さんの探究心にゴールはありません。昨年は長崎県平戸の森酒造場さんで日本酒作りも体験しました。
「ものすごく勉強になりました! 面白さと難しさ両方あって、まずはかなりの肉体労働なんだなということを感じましたし、とても繊細な作業だということも分かりました。麹は菌なので、人の力だけではどうしようもない部分があって自然の力を借りて、温度だったり湿度だったり、その時の天候がとても影響するんだなということを肌で感じました」
田中アナも羨ましそうに「より日本酒愛が増しましたね」と。
弓削さんも感心しながら「5年後は(日本酒の)お米も作っているかもしれませんね」

益々日本酒の奥深さを知るようになった平野さん、今後も様々なイベントを企画しています。最後に平野さんが日々大切にしている言葉を、田中アナが尋ねました。
「一期一会です」
平野さんが日々、日本酒と接する中で感じていることだそうです。
「お客さまや酒蔵の方などの人との出会いも一期一会だなと思うんですが、日本酒はその時の味をもう二度と味わえないということを、知れば知るほど実感していて、お酒との出会いこそ一期一会だなと思うんです」
その時、美味しいと思っても、次の日それが同じように美味しいのかは分かりません。
合わせる料理や酒器、自分の体調も含め、誰とどんな風に飲むのか、同じ環境で味わうお酒はないのだといいます。
「ありとあらゆる要素で味が変わるので、その面白さもお伝えしていきたいです」
と、楽しそうに語る平野さん。

「僕たちもお店との出会いは一期一会ですよね。同じ店でも今日行くのと、明日行くのとではまた違いますからね」と弓削さんも言葉を締めくくりました。


RKBラジオ「弓削聞平スマイルディッシュ」番組公式Twitter @rkbyuge
2020年12月放送
#九州郷土料理わらび #弓削聞平 #田中みずき

ライタープロフィール:本田淑子
フードディレクター
食の企画あれこれ。魚食を盛り上げる「サカナグミ」や子ども達と一緒に料理を楽しむ
「放課後ゴハン倶楽部」なども主催。https://www.plantecook.com

*RKBラジオ「スマイルディッシュ」は2021年3月で終了いたしました

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