食通の街、福岡を支える立役者11 BAR「バー シャルジェ」経営する池田繁樹さん

飲食店がひしめき、全国の食通が注目する街・福岡。この街で、食を通して人々に笑顔を与えている、料理人やソムリエたちがいます。彼らをゲストに迎え、ここ10年でのべ1万軒外食している弓削聞平と、世界中の食を語れるアナウンサーになりたい田中みずきの2人が、その情熱の源に迫ります。
~RKBラジオ 弓削聞平スマイルディッシュ(2021年3月に終了)より~

今回2人がお邪魔したのは、九州一の歓楽街・中洲にある「バー シャルジェ(La Barre Charger)」(福岡市博多区)

「新型コロナウィルス感染症の影響で、なかなか厳しい業界ですよね」と田中アナが切り出します。「バーの閉店時間が早くなったので、最近僕は食前酒としてバーで飲んでから、ご飯食べに行ったりテイクアウトしたりと、今までと逆のコースで楽しんでます」

弓削さん、さっそく新しい生活習慣が定着したようです。

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お話はオーナーバーテンダーの池田繁樹さんにうかがいました。店は中洲のど真ん中にある、いわゆるオーセンティックバー。本格的なバーカウンターがあり、熟練の技術を持つバーテンダーが待つ、重厚な空間です。

「こういうお店には、1人でふらりと入りづらいですよね。お酒の知識がないと......」という田中アナに、池田さんは「逆に1人がおすすめ」と言います。

「カウンターでバーテンダーと会話し、お1人でゆっくりお酒を楽しまれる方は多いですよ。話をしながらお好みのお酒を一緒に探します」

「でも、初心者としては何をどう注文していいのか分からないんです」

「そういう方にはこう提案しています。スタンダードなカクテルをいくつか飲んでみて、自分の好みを見つけてください。気に入ったカクテルがあったら、どのバーでもそのカクテルを最初に注文する。そうすると、その店のカクテルの味の傾向が分かります。同じカクテルだから他の店との違いがわかりやすいでしょう?」バーテンダーも客が最初に選んだカクテルで、アルコール強めが好きとか、甘めが好きといった感じで好みが分かり、次の飲み物を提案しやすいのだそう。

「僕も昔そういう話を聞いたことがあって、初めて入ったお店では必ず最初にダイキリを頼んでいた時期がありましたね」と弓削さん。

「お客さまが詳しくなくても、バーテンダーは勉強してますから、きっと好みの味が見つかりますよ! 2回目、3回目とお客さまの情報が入れば入るほど、好みのカクテルが作りやすくなります。お気に入りのバーを見つけて通ってみると、最終的には『いつものを』とかになるんじゃないでしょうか。私が修行したお店は、お客さまのお好みに合うまで作り直し続けていました。ちょっと甘すぎる、酸味が強すぎる弱すぎるっていう感じでまさにオーダーメイド」

「カクテルは季節で変わります。例えばジントニックも春夏秋冬で作り分けています。夏場はライムの酸味を効かせてすっきりと、冬はトニックウォーターの甘味を効かせるといった風に。師匠が言っていたんですが、1杯のジントニックを美味しく作るのは当たり前だと。お客さまとの会話を通して、食前食後などその時の状況や心情を配慮して、最高のジントニックを出すのがプロなんです」

池田さんの力強い言葉に、田中アナから思わずため息が。

「はぁ〜素敵! 惚れそう(笑)」

池田さんがこの世界へ入ったきっかけは大学時代のアルバイトでした。

「ダイニングバーのようなカジュアルなバーだったんですけど、一生懸命やってると『池田くんに会いに来たよー』ってお客さまに言われてすごく嬉しくて」

酒は弱くてあまり飲めなかったという池田さんですが、人と話すことが大好き。どうせやるならと、福岡で一番厳しいバー、中洲「ベスパ」に就職しました。

「あのお店、そんなに厳しいんですかー」と弓削さん。

「当時は1分でも遅刻したらクビでした。先輩より1時間早く行って掃除をしていました。帰りの自転車で居眠り運転するほど疲れ果てていました。1年目は友達と連絡とることも一切なかったですね」

厳しい修行を経て独立し、「シャルジェ」をオープンして9年が経ちます。

「中洲のバーの魅力ってなんでしょう。そして中洲でバーテンダーをしているというプライドというのは、やはりありますか?」と田中アナからの質問に、「中洲のバーには、経営者、士業、医療関係などいろいろな方が来られます。私は20代から、仕事とは、プロとは、人生とはという話をそういったお客様からたくさん聞いてきました。自分ももっと頑張らなきゃと刺激されます。やはりここで働いて良かったなと思います」

師匠からも、「バーは人と人とのつながりで仕事をしている」と学んだと言います。

「スタッフの良し悪しで、お客様の満足度は全然違う。自分が率先して仕事を見せ、それに感化されたスタッフが育っていって、最終的に店が良くなる。自分もさまざまなことにチャレンジして、その姿を見せながら、スタッフとともに成長し続けていきたい」と意気込みを話す池田さん。まだまだやりたい事がたくさんあります。

「フルーツカクテルや日本酒の専門店を出したいんです」

というのも、実は池田さん、すでにワインがメインのバー「T6O(ティーシックスオー)」と、マディラワインとシガー(葉巻)の店、「シガー&マディラ シャルト(Cigar&Madeira CHARUTO)」を経営しています。ソムリエや日本酒の「SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)」の資格も持つ池田さん。襟元にはそれぞれのバッジが光っています。

「『T6O』では33種類のワイングラスを揃えています。同じワインでも、グラスによってびっくりするぐらい味が違ってくるんですよ!例えばピノノワール。フランス用、アメリカ用と数種類あります。グラスセミナーをやっていまして、セミナーに参加されたお客様は『このワインはこのグラスで』と注文されたりしますよ」

「知識が増えていくと、より深みにはまりそうですね」と田中アナ。

日本ではまだ馴染みがあまりないマディラワイン。ぶどうを発酵させるのがワインですが、マディラワインは発酵の途中でブランデーを添加し、発酵を無理やり止めるんです。そうするとアルコール度数が高くなります。マディラワインはポルトガルのマディラ島で作られています。

「まだ飲めるところが少ないお酒ですが、美味しいですよね」と弓削さん。

「実は、世界のマディラワインの約90%は料理酒として使われているんです。ここ最近アメリカと日本からの発信で、ドリンク用としても伸びてるんです」

ヴィンテージも多く、年代の幅が大きいのも特徴。池田さんの店にある一番古いものは、なんと! 1850年。

「黒船でペリーがやってきて日本人がびっくりしてる時代のお酒を今飲めるって考えると楽しいんじゃないかなぁ」と池田さん。170年前に想いを馳せながら飲むお酒はきっと格別。「マディラワイン、どんな香りがするんですか?」と田中アナ。

「皆さんがイメージしやすいのは紹興酒とかシェリーです。辛口から甘口まであります。甘口を食後に飲むのがおすすめです」

こちらも奥が深い葉巻。池田さんはその資格も二つ持っています。なぜ葉巻なのでしょう。

「ワインを飲む時にチーズを合わせるように、葉巻もお酒の最高のパートナーなんです。葉巻を吸いながらお酒を飲むと、味わいが向上します。特に肉や脂っこいものなどを食べた後に楽しんでいただくと、相性がいいですよ」と池田さん。

料理だけでなく、ブランデーやコーヒー、コーラなどのドリンクとも相性がいいのだそう。

「私はバーテンダーなのでコーラのカクテル『キューバリブレ』がおすすめです。葉巻を吸いながらだと、抜群に美味しいです」

池田さんは、より酒を楽しむための知識の宝庫なのです。

最後に、バーテンダーを目指す人へメッセージをいただきました。

「飲食業の一番の魅力は、年齢や性別、職業問わずいろんな方に出会えること。自分が出会いたい方に、出会うための努力をしていけば、どんな方にでも来ていただくことができる。自分が目指す方向性さえつけて、それに向けて頑張っていくと、そういうお客さまが集う店ができるんじゃないかなと思っています。可能性を自分の力で引き出せるっていいなと。もちろんサービス業ですから、自分がいいと思っていても、お客様がいいと満足してくれなければ意味がない。そのためには、コミュニケーション力含め、いろんなものを身につけなくてはと思っています」

池田さんの熱い思いが伝わってきます。貴重なお話をありがとうございました。

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