"スマホ脳"で記憶力・集中力が低下...学力にも影響

世界的にヒットしているスウェーデンの精神科医 アンデシュ・ハンセン氏が執筆した本「スマホ脳」。スマホの使い過ぎが与える脳への悪影響を明らかにし、様々な視点で私たちに警鐘を鳴らしている。コロナ禍で、いよいよ手放せなくなってしまったスマホ。人々に、いったいどんな影響が出てきているのでしょうか。

Q.なぜスマホ依存に関する本を書こうと思ったんですか?

ハンセン氏
「10年前、地下鉄に乗っていたら2~3割の人たちがスマホを見ていることに気づきました。さらに、翌年にはその割合は半分に増え、その2年後にはほぼ全員がスマホをずっと見つめるようになっていたんです。人の行動がたった10年間でここまで変わるのは歴史上、ありませんでした。だから私は、スマホが私たちにどのような影響を与えているのか‥科学に基づいて検証してみようと思ったんです。」

この10年ほどで一気に普及したスマホ。私たちは、簡単にネットにアクセスできるようになりました。ただ、精神科医として患者と向き合うハンセン氏は、「スマホがいつもそばにある」という環境がさまざまな悪影響を及ぼす指摘します。

ハンセン氏
「最近の研究では、10代の若者の3人に1人がベッドにスマートフォンを持ち込んでいるとされています。ベッドのそばに置くのではなくて、ベッドの中にです。そのため、多くの若者が睡眠に問題を抱えていて、彼らは、「薬を処方してほしい」と言うんです。
しかし、私は、そうした若者に対し、まずはスマホを寝室に持ち込むのをやめるよう勧めます。そうすると、驚くべきことにほとんどの場合、問題が改善するんです。

人は社会的なつながりを求める生き物なので当然です。そうした性質が人間関係を強く結びつけてきましたが、いま問題となっているのは、インターネット上にいる無数の人たちと比べて、「自分が劣っている」と感じてしまうことです。特に若者のスマホの利用時間が長いという実態も...」日本で実施されたスマホの利用時間に関する調査では、10代女性の中で最も多かったのが、「4時間から5時間」と「10時間以上」でした。


スマホやタブレット端末が若者にどのような影響を及ぼすのかを調査している東北大学加齢医学研究所の川島教授。著書「スマホが学力を破壊する」や、ゲームソフト「脳トレ」を監修したことでも知られる専門家です。

東北大学加齢医学研究所・川島隆太教授
「我々、仙台市在住で公立の小中高に通う約7万人の児童・生徒を10年以上追跡調査している。川島教授は、児童・生徒3万人あまりを対象に、LINEといった通信アプリの使用時間と学力の関連について調査しています。」
これは、数学の平均点。スマホを全く使用しないグループと、アプリを長時間使うグループとでは、大きな差が出ています。国語や理科・社会を加えた4教科全てで同じ傾向が見られました。

東北大学加齢医学研究所・川島隆太教授
「「子供たちの脳がどうなっているのか」を調べてみようということで3年間の脳発達をMRIという装置を使って測定するという研究を行いました。スマホ・タブレット端末の使用頻度が多い子供たちは「3年前」と「今」の脳のMRI画像を比べると、ほとんど差がない。要は、脳が発達していないことを見つけたんです。」

5歳から18歳の200人あまりを対象に情報処理などを司る大脳の発達を追跡調査。
2種類の画像の赤や黄色で示されている部分は、「調査開始時」と「3年後」を比較して発達に遅れが見られた領域です。

東北大学加齢医学研究所・川島隆太教授
「特に赤くなっているのは側頭葉の先端部分ですけど、ここは「記憶の中枢」とされています。そのほか、側頭葉や頭頂葉、小脳にも(発達に)遅れが出ている。
スマホ・タブレット端末を使わないと、大体3年間で50CCくらい大脳の灰白質の体積が増えないといけないんですが、ほぼ毎日使いこんでいる子は、平均値にすると(体積増加)がゼロになるということがデータからわかるわけです。
ですから、我々の結論というのはスマホ・タブレット端末を使い過ぎている人たちは、特に子供たちは、脳発達が阻害されている。」

さらに、多くの子供たちが家庭学習と同時にネットを使っているという実態も‥。宿題をしているのはRKBスタッフの小学5年生の娘。
ノートの横には‥パソコンがあります。家ではいつもネット動画を見ながら勉強するそうです。さらに、イヤホンがつながっているのはゲーム機。ゲームで遊ぶわけではなく、通信機能を使い、わからない問題を友達同士で教え合うのに使います。


川島教授の調査では、スマホ所有者の8割に当たる2万5000人ほどが家庭学習中にスマホやタブレット端末を使っていると回答しました。
その内訳は、音楽が6割ほど、動画視聴と通信アプリが4割ほど、ゲームが3割ほどでした。全体の割合が100%を超えているのは、この半数が複数のアプリを使用しているためです。

東北大学加齢医学研究所・川島隆太教授
「専門の言葉で「スイッチング」と言っているんですけど、様々なことを切り替えながら短い時間で色んなことに手を出してしまう...。こういう生活習慣が脳に悪影響を与えているのだろうということを多くの心理学者が指摘している。」

さらに、スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセン氏は、スマホを使っていなくても持っているだけで集中力が削がれていると指摘します。

ハンセン氏
「記憶力を調べるある研究では、1つのグループはスマホを持ったままテストを受け、もう1つのグループは、スマホを別の部屋に置いてテストを受けてもらいました。すると、持っていないグループのほうが成績がよかったんです。
もちろんデジタルメディアは私たちの暮らしを助けてくれています。このコロナ禍では人と人とのつながりを維持してくれました。しかし、スマホには明らかな負の側面もあります。これを理解して、賢く付き合うことが大切です。」


スマホゲームに依存した20代前半の女性
「(約束に)間に合う時間ではあるけど、「もうちょっとゲームしたい」と思ってわざわざ「今から遅刻します」って連絡してゲームをしたり、すごく課金する癖もあったので親が借金をするということも...」

生々しい体験を語るのは、福岡市出身の20代前半の女性。スマホのオンラインゲームにのめり込み、課金による借金が膨らんだほか、学業に集中できず、専門学校も中退しました。

スマホゲームに依存した20代前半の女性
「チームを組んでやるゲームで、勝つためには私が必要だと言ってもらったことがあったので、そこからのめり込んだ。」

ディレクター
「チームの仲間というのは面識がある人ですか?」

スマホゲームに依存した20代前半の女性
「全然ないです。ネットで知り合って、Twitter交換したり、LINE交換したりしたくらいで...」

オンライン上の仲間に認めてもらう喜びが依存に繋がったと振り返る女性。インターネット依存の治療にあたる雁の巣病院の栗田医師は、このオンラインゲームの依存で受診するケースが特に多いと話します。

雁の巣病院・栗田晋 医局長
「ソフトを買ってやる家庭用ゲームに依存している人はほとんど見たことがなくて、ネットワーク上のゲームに依存する人が多いですね。
仮想現実のコミュニティの中で自分の価値を見出していくような状況がゲームやネットワークの依存を形成している。仮想現実のコミュニティの中で自分の価値を見出していくような状況がゲームやネットワークの依存を形成している。スマホがアクセスをより容易にしたことが、依存する人の増加に寄与している一面は否めないのかなと思います。」

ゲームに依存してしまった女性は、いま、福岡市の支援施設に入所しています。ここでは、職員らと共同生活を送り、スマホと距離を置いた上で、毎日3回、依存症の人たちが体験などを共有するグループミーティングに参加しています。
入所して、以前よりも過去を客観視できるようになった女性は、幼いころから好きだったイラストの腕前を生かし、依存症の体験などを漫画にしています。

スマホゲームに依存した20代前半の女性
「私は現実社会では充実していなかったんですよ。特に家庭での立ち位置とか...友達はいるのはいたけど、そこまで親密ではなくて...。現実と(ゲームの世界を)比べたら充実しているゲームのほうに行ってしまった。」

カウンセリングスペースやどりぎ・谷川芳江さん
「ゲームだけが悪いのではなく、子供の性格の問題でもなく、子供が依存せざるを得なかった...もしかすると学校、もしくは家庭内での社会的な背景が原因にあるかもしれないということはぜひ一度考えてほしい。」


最後にハンセン氏から、「スマホ脳」にならないために注意すべきことを教えてもらった。
①スマホから離れて、軽い運動をする。
②毎日1~2時間スマホをオフにする時間を作る。
③画面をモノクロにするだけで、脳への刺激が減る。
④親は子供の前でなるべくスマホを使用しない。お手本を見せる。
⑤スマホを寝室に持ち込まない。目覚まし機能を使用しない。

以上のことを気を付けるだけで、スマホ以外のことに集中することができる。
スマホに人間が支配されるのではなく、人間がスマホを支配するように!
スマホと上手に付き合えば、もっと豊かな人生を送ることができるはずだ。

2021年2月5日放送


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