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大雨で浸水する土地は売れない?不動産評価が下落中、対策しても“床上浸水”の予測 

先週からの大雨によって福岡県や佐賀県では、住宅などへの浸水被害が発生ました。毎年のように繰り返される水害に対して自治体は「かさ上げ」や「移転」などの対策を進めています。

一時的な水瓶・田んぼダムは464万平方メートルまで拡大


RKB小畠健太「久留米市では大学生や業界団体の人たちが一緒になり、水路の浚渫作業を行っています」

今年5月、福岡県久留米市では、市内全域で約800人のボランティアが集まり、水路の土砂を取り除く作業が行われました。水害に備えるとともに、参加者に防災意識を高めてもらおうと企画されました。おととしまで4年連続で水害に見舞われた久留米市。市役所内に、全庁を横断する組織を作るなど、水害対策に力を入れてきました。降った雨を一時的に貯めるため、公園の地下の貯水施設や学校のグラウンドの周囲をコンクリートで囲む工事などを実施。農家の協力を得て、田んぼに一時的に水を貯める「田んぼダム」も、約464万平方メートルまで拡大しました。現在整備中のものもあわせると、2021年と比べて51万トン増の83万トンの水を一時的に貯めることができるようになる予定です。さらに全長8.4キロに渡る河川の護岸のかさ上げも完了しました。それでも先週からの大雨では床上浸水が1件床下浸水は10件報告され、完全に防ぐことはできませんでした。

対策しても約500件が床上浸水するシミュレーション


一方、2019年と2021年に広い範囲が浸水したのが佐賀県武雄市です。こちらも、ため池の水を事前に放流する施設や、河川の水を流れやすくする対策工事など、国や地元自治体が一体となってハード面の整備を進めています。ただ、すべてが完了しても、約500件の床上浸水が発生するというシミュレーション結果が出ました。浸水が想定される北方町の商業地が県内で最も地価が下がるなど、不動産の評価にも影響が出ています。浸水被害が発生した地域では分譲地の買い手がつかず、現在も空き地のままの区画が残っているほか、売れる見込みがない古い家がそのまま残されています。武雄市は住宅のかさ上げ工事や、水害の危険性が少ない地域への移転を補助する事業を展開。これまでに23件が移転、22件でかさ上げ工事が行われましたが、対策が完了したのはごく一部です。

開発にブレーキ?1000平方メートルの開発には「貯水池」


武雄市はハード面での対策を加速するため、「特定都市河川」の認定を国に申請し、今年3月に指定を受けました。指定を受けると、1000平方メートル以上の土地を開発する際に、貯水池を設けるなど雨水対策を実施する必要があります。開発にブレーキがかかるという指摘もありますが、小松市長は、「命が最優先」と話します。

小松市長「我々としては開発に規制がかかるという一定のリスクをとったうえで、それでも住民の命を守るために、そういう思いから特定都市河川の指定をお願いしたというところでございます」

武雄市は2019年の水害後、住民に対して防災行政無線の「戸別受信機」を無料配布しています。今回、この「戸別受信機」を活用してFMラジオで緊急放送ができるよう、機器を整備しました。行政によって各地で進められる水害対策。被害の軽減は進んでいますが、最終的に身を守るためには、個人の備えが何より大切です。

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この記事を書いたひと

小畠健太

1983年生まれ、岡山県出身。2008年入社。「寄り添った取材」をモットーに10年以上取材に取り組む。3児の父 趣味は釣りと楽器演奏