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バンドネオン世界大会の優勝奏者・川波幸恵がラジオスタジオで生演奏

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アルゼンチン・タンゴに歯切れの良さを与えるのに欠かせない楽器・バンドネオン。福岡市在住のバンドネオン奏者、川波幸恵さんが6月25日、RKBラジオ『田畑竜介Grooooow Up』のスタジオで、魅惑的な音色を披露した。

バンドネオンの世界大会で優勝

RKB神戸金史解説委員長(以下、神戸):福岡市在住のバンドネオン奏者、川波幸恵さんにお越しいただきました。

バンドネオン奏者の川波幸恵さん

神戸:川波さんは福岡県宗像市出身。東京音楽大学でピアノを専攻し、学外ではバンドネオンも学びました。2015年の第1回チェ・バンドネオン世界大会で優勝。2020年には、地元福岡のピアニスト・岡直美さん、バイオリニスト・松本さくらさんと、女性演奏家によるタンゴトリオ「タンゴ三姉妹+」を結成。イタリアで開催された「アストル・ピアソラ国際音楽コンクール トラーニ2021」のアンサンブルの部で優勝、という経歴の持ち主です。

71のボタンを操作する複雑な演奏

右手と左手で合計71のボタン

神戸:すごい楽器ですね。

川波幸恵さん(以下、川波):耳で聞くと「アコーディオンっぽいな」と思うんですけど、形を見てください。違いますよね。

田畑:鍵盤があるわけじゃない…。

川波:そうなんです。たこ焼き器が両サイドにあるみたいな。

田畑:そんな例え?

川波:ボタンが全部で71個付いているんです。右に38、左に33。(閉じると)ちょっと運動会を思い出しません? 5段重。

田畑:縦にすると、そうですね。

川波:間は蛇腹。紙でできていて、ボディーは木。とてもアナログな作りです。

橋本由紀アナウンサー(以下、橋本):蛇腹部分は紙なんですね。

川波:そう、だから雨に弱いです。

田畑:伸ばす、縮めるだけでは音は出ないんですね?

川波:出ないです。それと、「バンドネオン」という名前はハインリッヒ・バンドさんというドイツ人の方が作ったからです。自分の名前をつけちゃったわけ。だから、もし私が作っていたら「ユキエネオン」でした。

神戸:どうやって音階を出すんですか?

川波:たこ焼きみたいな71個のボタンの1個を押して音を出してみます。(蛇腹を広げて)吸って、(蛇腹を縮めて)吐いたら、違う音なんです。「1個のたこ焼きを転がしたら、違うよ」って感じ。

田畑:どういうことですか、それ?

川波:本当、摩訶不思議な楽器で、実は教会のパイプオルガンの代わり、携帯用として作られた楽器で、それがコンパクトになったらそうせざるを得なかったのかな。ピアノの鍵盤は、ドレミファソラシドとお行儀よく並んでいるでしょう? ドの隣はレ、レの隣はミ。これは(ドレミファの順にボタンを押して見せると)、バラバラなわけ!

 

橋本:全然違う!

川波:その先(1オクターブ上とも、ボタンが)違います。なんだか、人の人生に似ていませんか?

田畑:深い話になっていきそうですね!

神戸:どこがどう転がるかわからない。

川波:本当。この楽器は、歌心、恋心、旅心をくすぐる楽器だと思っています。

神戸:でも、難しいですね。

川波:難しいけど、癖があるほど面白い、みたいな。

「川の流れのように」スタジオで圧巻の演奏

神戸:ではちょっと演奏を聴いていただきましょう。

川波:皆さんがご存じであろう曲を用意してきました。

スタジオでバンドネオンを演奏する川波幸恵さん

田畑:ブラボー! 重層的な和音の壮大さもあれば、すごく繊細な音も表現できて、そういうところが心のひだに触れるというか、郷愁を駆り立てるところもありますよね。

川波:うれしいですね。私も何度となくこの楽器を止めようと思ったけど、UFOキャッチャーで拾い上げられたように、また戻ってきてる。

田畑:何があったんですか? でもやっぱり、また魅力に戻っていくわけですね。

橋本:なんか鳥肌がずっと止まらなくて。美しかったんですけど、質問がたくさん浮かんできました。強弱はどうやって付けているのだろう、と。見ていてわからなかったので伺いたいな、と。

川波:皆さんが声を出している時、ささやく時は声を少なくしているじゃないですか。だからそれをコントロールして、(蛇腹を開いて)空気をたくさん入れると、音が大きくなる。

橋本:どこから音が出ているんだろう?

川波:いい質問! たこ焼き器に“割り箸”がつながっているんです。たこ焼きの丸(71個のボタン)から割り箸がついて、そのところに弁が付いているわけです。シーソーのように、ボタンを押したら反対の弁が開いて、裏側にリードがあるので、中の部屋に風が当たって音が鳴る、という仕組みです。

本場アルゼンチンに留学へ

神戸:移民とともに南米・アルゼンチン、ウルグアイに渡って、アルゼンチン・タンゴに欠かせない楽器になったと。

川波:元々アルゼンチン・タンゴは、フルートとギターでかわいらしい音楽だったんですが、ピアノやバンドネオンが入って、歯切れがいいリズムに。歯切れがいいと言われるのは、この楽器が入ってきてから。それで花形楽器とされたんです。

 

神戸:今度、留学するんですって?

川波:そうなんですよ。日本の夏を体験せずに、7月からアルゼンチンの本場で勉強したいなと思って、行ってきます。

田畑:南半球は冬ですからね。

神戸:それでは、もう一度、時間まで川波さんのバンドネオンの演奏をお聴きください。

 


 

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この記事を書いたひと

神戸金史

報道局解説委員長

1967年、群馬県生まれ。毎日新聞に入社直後、雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。東京報道部時代に「やまゆり園」障害者殺傷事件を取材してラジオドキュメンタリー『SCRATCH 差別と平成』やテレビ『イントレランスの時代』を制作した。現在、報道局で解説委員長。