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“聞こえない”壁を超える三刀流のサッカー選手 「私にとってデフサッカーは“帰る場所”」

聴覚に障害のある人たちのスポーツの祭典「デフリンピック」が、2025年に日本で開催されます。競技種目の一つ、音のないサッカーとも呼ばれる「デフサッカー」で代表入りをめざす18歳の選手がいます。

大学の女子サッカー部でプレーする18歳

日本経済大学1年の久住呂文華さん(18) 女子サッカー部に所属し、 生まれつき耳が聞こえないハンディを抱えながら耳が聞こえるチームメイトと一緒にプレーしています。ポジションはセンターバック。体を入れたディフェンスと相手の隙を突くスルーパスが持ち味です。

普段の生活では補聴器を着用

久住呂さんは普段、補聴器をつけています。相手の口の形を読み取る読唇術も習得していて、大学の講義は、音声認識アプリを活用して画面に映し出された文字を読んで理解します。

デフサッカーとの出会いは小学4年 「楽しさに気づいた」

サッカーを始めたのは3歳の時。父と兄の影響でした。そして小学4年生で聴覚障害者のサッカー「デフサッカー」に出会います。

 

久住呂文華さん「デフサッカーの場合は自分と同じ立場の人がたくさんいて、その時に『耳が聞こえなくてもサッカーは楽しい』ということに気づきました」

コートでのコミュニケーションのとり方が違う

チームプレイでパスをつなぐサッカーは、コートの中でのコミュニケーションがとりわけ重要になります。デフサッカーでは、競技中補聴器を外すことが義務付けられていて、選手たちは、アイコンタクトや手話でコミュニケーションをとります。また審判は笛以外に旗でプレーの停止を知らせます。ルールは通常のサッカーとほとんど変わりません。

話すことが怖くなった高校時代

しかし、サッカーの強豪校に進学した高校時代は、コミュニケーションの壁にぶつかることも少なくなかったといいます。

久住呂文華さん「話しかけられた時に、言っていることが読み取れないことがたまにあって。内容を理解するために私は相手の顔をよく見るのですが、相手が嫌そうな顔をしていたら、『え、話したくないのかな』とか色々考えてしまう、遠慮してしまうことがありました」

相手の反応が気になったり、言葉が伝わっているか不安になったりして話すことが怖くなる時もあったといいます。

さらに、高校時代は新型コロナにも翻弄されました。

久住呂文華さん「暑い中でもマスクをつけたままサッカーをやるというのが当たり前だったので、私にとっては口が見えないと話せないという状況になってちょっと孤立していました。私自身が『え?何?もう一回言って』という言葉があまり好きではなくて」

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この記事を書いたひと

若松康志

1999年生まれ、鹿児島県出身

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