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1万頭殺処分でもまだ安心できない 秋の行楽シーズンこそやるべき豚熱対策も 

8月30日、52年ぶりに佐賀県で感染が確認された豚熱。1万364頭の豚の殺処分が8日ようやく完了しました。全国の生産量の3割を占める九州で拡大すれば、市場や消費者への影響する可能性があります。
改めて、「豚熱」とは何か。防ぐ手立てはあるのか。病原制御学が専門の北海道大学・獣医学研究院教授の迫田義博さんに聞きました。


◆強い伝播力と高い致死率が特徴

改めて、「豚熱」とはどんな病気でしょうか。

迫田義博さん
「豚熱は豚とイノシシに感染して非常に伝播力の強い感染症。横綱級のウイルスによる感染症です。

農林水産省によると、唾液や涙、糞尿からウイルスを排出し、接触などで感染を急速に拡大し、治療法はありません。人に感染しますか。

迫田義博さん
「豚熱に感染するのは豚とイノシシだけで人獣共通感染症ではありません。万が一、感染した豚肉を食べたとしても人への感染を心配する必要はありません」

◆感染経路の解明が重要

豚熱は2018年に岐阜県で確認されて以降、関東や中部地方を中心に本州で散発的に発生してきました。佐賀県での確認は52年ぶりです。

迫田義博さん
「ウイルスがどこから来たのか、どういう性状のウイルスなのか。イノシシが感染していて農場に持ち込んだのか、人や物を介して持ち込まれてしまったのか。本州で見つかっているウイルスと同じなのか、他の国から持ち込まれたのか。そういう点について徹底的な究明を速やかにしていく必要があると思います」


◆人が感染を広げた可能性
中国地方では野生のイノシシが豚熱に感染していたことが確認されています。関門海峡、さらには福岡県を飛び越えて佐賀県で発生したことについては、どのように見ていますか。

迫田義博さん
「イノシシではなく、何かしらの人の活動で持ち込まれた可能性もあります。イノシシは車や新幹線には乗りませんが、人は乗りますから。例えば、生産者や餌の販売業者、猟師、ウイルスを触った人が消毒をせずに移動して次の地点に持ち込んだ例は、国内でも過去に起きています」

豚熱は人には感染しないけれど、人がウイルスを運んでしまうという可能性はあるわけですね?

迫田義博さん
「靴の裏にウイルスが付着することはあります。これから秋の行楽シーズンで山に入る人もいっぱいいるでしょう。山に入ると目に見えないかもしれないけれど、豚熱に感染したイノシシのおしっこを踏むかもしれない。本州では『山から下りてきたら靴を消毒をしてください』と感染拡大防止への協力を呼びかけるポスターを作っています」


◆ワクチンは豚とイノシシ両方に

農林水産省は9月5日、佐賀県を含む九州7県をワクチン接種推奨地域に設定することを決めました。これで、北海道を除く46の都府県がワクチン接種の推奨地域に指定されたことになります。佐賀県は県内の約6万6000頭にワクチン接種を行うため必要な計画を国に提出していて、9月中の接種開始を目指しています。

迫田義博さん
「ワクチン接種は佐賀県だけでなく九州全県で行うのは当然のことだと思います。やっと来るべき時がきましたね、ぐらいのものです。そしてワクチンだけに頼らずに、ワクチンと衛生対策の両輪を速やかに行い、1件でも2件でもこれ以上豚熱を発生させないようにする、『九州全体に広げない』ということが大事だと思います。そして今も行っていると思いますが、農場の周りに柵をしっかりと作って、イノシシが農場に入り込まないようにする。経口ワクチンを散布してイノシシに食べさせる、豚熱に感染させない、ウイルスをまき散らさないようにしていくことも必要です」

聞き手 RKB 三浦良介記者

"豚熱”飼育頭数3割を占める九州でも・・・

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この記事を書いたひと

三浦良介

1999年入社、テレビ営業部、大阪支社勤務を経て2011年から情報番組のディレクターを務める。2016年から報道記者として政治・経済を中心に取材奮闘中。