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「返礼品の見直し」迫られる自治体 10月からふるさと納税の規制強化で駆け込み需要も

10月から変わるふるさと納税のルール。返礼品については発送などの経費まで含めて「寄付額の5割以下」と定められていますが、それが厳格化されます。肉やコメについては「地場産品」の基準がこれまでより厳しくなります。 自治体は、ルールの変更に伴い「返礼品の見直し」を迫られています。

豪華すぎる返礼品の弊害

2008年に始まった「ふるさと納税」 応援したい自治体に寄付することで住民税や所得税の控除が受けられ、さらに自治体から返礼品がもらえる制度です。バラエティーに富んだ返礼品が人気を呼び、寄付金額は年々増加。昨年度は全国の寄付額の総計が開始時の約134倍の9654億円となりました。ただ、その一方で、豪華すぎる返礼品や、その地域と全く関係がない返礼品が増え自治体間の競争が過熱したため国は規制を強化してきました。
 

10月から終了する返礼品も

福岡県で1位、全国で8位の寄付金を集める飯塚市は、10月からのルール変更への対応に追われていました。

飯塚市ふるさと応援課 今田浩二さん
「熟成肉の取り扱いが県外産の物は認められなくなるので、それに伴って返礼品としての登録を取り下げるものもいくつかあります」

これまでは海外から輸入した肉も一定期間熟成させれば「地場産品」として返礼品にすることができました。しかし、10月から肉とコメについては同じ都道府県で生産されたものでなければ返礼品として認められなくなります。

飯塚市ふるさと応援課 今田浩二さん
「国産豚の切り落とし4キロ。寄付金額は1万1000円。こちらについては、産地が宮崎県・鹿児島県になっているので、提供は取りやめなければなりません」

飯塚市では牛タンやTボーンステーキなどの熟成肉約30品目を返礼品から取り下げることを決めました。
 

ポータルサイトへの「隠れ経費」も対象に

さらに、返礼品などの経費を寄付額の5割以下に抑えるルールも厳格化されます。ポータルサイトの手数料や寄付金受領証の発行にかかる費用など、これまで隠れていた経費も10月からは5割以内に含めなければなりません。

 

「返礼品ハンバーグ」1万円→1万5000円に

飯塚市の2022年度の寄付金額90億8600万円のうち半分以上の50億円を占める「デミソースの鉄板焼きハンバーグ」も「値上げ」せざるを得ないといいます。

飯塚市ふるさと応援課 今林直久課長
「今まで1万円で20個のハンバーグをお礼品として出していましたが、ルール改正に伴い、1万5000円に寄付単価を上げる予定です」

駆け込みの申し込みが殺到

10月以降、同じ返礼品でも寄付金額が上がったり量が減ったりすることが予想されるため、駆け込みの申し込みも殺到しています。

飯塚市ふるさと応援課 大橋祐子係長
「8月の末ぐらいから駆け込みが増えてきまして、約5万9000件、対前年比で2倍くらいになっています」

飯塚市は受領証の発行などの業務と並行して、860品目の返礼品について、寄付金額や内容量などを事業者と交渉しながら見直しを進めています。

3億円超える寄付を集めた返礼品のコーヒーは

RKB三浦良介記者
「福岡県飯塚市のコーヒー専門店です。ふるさと納税の返礼品の梱包作業がフル稼働で行われています」

飯塚市のふるさと納税の返礼品で二番目に人気の「きれいなコーヒー」 えぐみの元となる豆に付着した汚れや渋皮を独自の製法で取り除き、焙煎したコーヒーを提供しています。ふるさと納税の返礼品は105袋入りで寄付金額は1万2000円です。2022年は3万5000件ほどの申し込みがあり、約3億6000万円の寄付を集めました。

オアシス珈琲 石川高信社長
「今回の制度改正で、私のところ返礼品は、1万2000円だったところが1万8000円になるんですよ。それを企業努力で1万5000円に抑えて販売したいと思っています。利益が少し削られても、多くの人に飲んでいただきたい」

実質値上げも「ふるさと応援」本来の趣旨では

子育て支援やまちづくりなど自治体の大きな財源となっているふるさと納税。
ただ、経費が5割を超えるということは、納めた額の半分も自治体の発展のために使われていないことになります。寄付する側にとっては実質の値上げとなりますが、「ふるさとを応援する」という本来の趣旨からすればやむを得ないルール改正といえそうです。

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この記事を書いたひと

三浦良介

1999年入社、テレビ営業部、大阪支社勤務を経て2011年から情報番組のディレクターを務める。2016年から報道記者として政治・経済を中心に取材奮闘中。