昔ながらの店が並ぶ大手門商店街周辺は、最近新しい飲食店が次々にオープンしている、いま注目のグルメスポット。この大手門に6月、新しくタイ料理店「m?ek」が誕生しました。
訪れてみると、いい感じのレトロ感が漂っています。前身は50年続いた「雲」という喫茶店で、その店名をタイ語で継いでいるのだそう。カウンターがメインのこぢんまりとした店内には、小さなテーブルが一つ。店内からは簀子公園を眺められ、のんびりとした空気に包まれています。
店主の橋本博さんは、19歳の頃からタイに通っていた筋金入りのタイ好き。その思いが高じてエスニック料理の人気店だったジャミンカーやメキシコ料理店、中東料理店などさまざまな店で経験を積み、ついに念願のタイ料理店をオープンしました。
まずは「ランチA」(1,200円)を注文。セットとして付いてくる揚げ春巻きや冬瓜のスープを味わっていると、メインの「カオマンガイ」がお目見え。一見シンプルに見えますが、鶏油にニンニクや生姜の香りをうつして、タイ米を生の状態で炒めて鶏油でコーティングし、鶏のブイヨンで炊き上げるという手間ひまかけた一皿。しっとりした鶏肉と香り豊かなライスが絶品です。タイのもろみとエシャロット、ライムジュースなどを使ったタレもさっぱりしていて食が進みます。今後カオマンガイは、別の料理に変更になる場合もあるそうです。
ランチがとっても良かったので、別の日に夜もお邪魔してきました。夜は7~8品が付くコース(5,000円~6,000円)のみ。コースはだいたい、前菜、サラダ3種、肉料理、スープ、揚げもの、蒸しもの、米料理、麺などを楽しめますが、日より内容が変わるそうです。
3種のサラダのうちの1種として登場したのが、豚肉とミントのサラダ「ナムトックムー」。タイの東北地方に伝わる料理で、たっぷりのせたミントとタイの紫タマネギ、ライムの爽やかな辛さがクセになります。味付けはナンプラーだけのシンプルな料理なのですが、食材の組み合わせが独特の風味を醸し出していて、タイ料理にこんな味わいがあるなんて!とちょっとびっくり。炊き立てのタイの餅米がサーブされるので一緒にいただいたのですが、これがモチモチしていて美味しくて、ついおかわりしてしまいました(笑)。
次はスープ料理「トムヤムヘッド」。スープ自体は澄んでいるけれど、スパイスの複雑な香りと味わいを堪能できるスープで、後味はさっぱり。「トムヤムクン」と異なり、エビ(=クン)ではなく、きのこ(=ヘッド)を使った料理で、ヤマドリダケモドキとあんず茸を使用。とろりとした食感の冬瓜も入っています。
そして揚げものを味わった後は、沖縄産のバナナの葉に包まれた鶏肉の蒸し料理「ホーヌンガイ」が登場。葉を開くとバナナの葉のなんともいい香りが湯気とともに広がります。鶏肉とゴーヤ、オクラ、シシトウといった旬の野菜をしっとりかつホクホクとした食感で楽しめます。素材の甘みや苦味の奥に、自家製のカレーペーストの風味がほのかに感じられる、なんだかホッとする優しい味わいです。
次は牛肉入りのタイ風ビリヤニ「カオモックヌア」。レモン汁やナンプラーを使った酸味のあるタレ(手前)や、辛いカレー(奥)をお好みでちょこっとずつかけながらいただくとさらに美味しさアップします。この後、麺が出てコースは幕を閉じます。
「タイは4つのエリアに分かれています。北部は中国・雲南省の発酵料理、南部はマレーシアが近いためイスラムの影響を受けた料理、中央部は潮州の麺料理やチャーハン、東北は農村地帯で昆虫を食べる文化もあるなど、地方によって食文化に結構違いがあって面白いんですよ」と橋本さん。今までタイ料理大好き!と食べていたカオマンガイやトムヤムクンはタイ料理のほんの一部だったんだなぁ。今日のコースで今まで知らなかった料理を味わえて、タイ料理の奥深さをしみじみと感じました。
店では橋本さんのディープなタイ話を聞けますが、タイ料理初心者もウェルカム! 大人4名以上であればお子さん連れでも大丈夫です。
実は野菜にもこだわっていて、福岡の「金子商店」など話題の野菜店から仕入れた食材を中心に使っています。橋本さんとカウンターに座っておしゃべりしながらコースを味わっていると、あっという間の3時間半……すっかり心はタイにトリップしていました。
《m?ek/メーク》
福岡市中央区大手門3-1-21
なし ※予約はインスタのDMから
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