未知なる食材との出会いは、さまざまな飲食店を訪ねる楽しみの一つ。新たな扉が開かれ、その産地や生産者と繋がるような高揚感を覚えるんですよね。そんな出会いが、鶏料理専門店「鳥焼肉 鳥玄」でも待っていました。食材の名は、兵庫県播州産の希少銘柄「Senca鶏」です。
西鉄薬院駅から徒歩4分。18時半までに入店すれば、通常1,600円の飲み放題が500円になるハッピーアワーがあると聞き、少々早めの訪問です(笑)。
店主兼料理長を務めるのは、以前大阪で「Senca鶏」を食べて虜になった遠藤憲孝さん。生産元と交渉を重ね、「あの感動を福岡にも広めたい!」との心意気で2020年3月に「鳥玄」を立ち上げました。大阪の著名建築家が手掛けたその店内はシック&アダルトな表情。デートにも良さげですね。
一方、それとは異なる趣で目を惹いたのが全8席の半個室。壁一面の書が渋いレトロモダンを醸しだし、なんともセンスの良さを感じさせます。これは京都府指定無形文化財「黒谷和紙」を手掛ける職人兼アーテイストによる作品だそうです。
さてメニューを見ると、コース、セット、アラカルトと選びがいあるラインナップ。この日は一番人気の「満喫コース」(3,400円、注文2人前~)をオーダーしました。
冒頭を飾る「本日の1品」は、味噌と一緒に炊いた鶏ミンチを乗せた鶏味噌豆腐。柔らかな甘味に仕込みの丁寧さがうかがえます。
2品目はたっぷり脂肪を蓄え、フォアグラ級のうまさを備えた肝=「Senca鶏の山うに」です。深みある山吹色に劣らぬ、濃厚な風味と食感が舌をまったりと包みます。
3品目の「パリパリサラダ」で口をリフレッシュさせたら、続いては「しな天」を賞味。手羽元をチキンカツにして三杯酢をかけた料理で、これまた酢の効果でサッパリとした後口です。意外とクセになる味わいで、次回は単品で頼んでみようかな?
それを平らげると、いよいよクライマックスの「焼きもの10品」です。1皿目は上から順に、手羽先、はらみ、つくね、とろ皮、せせり西京焼き、そして中央に特選ももという顔ぶれ。もちろん目玉は「Senca鶏」で、この中ではとろ皮、つくね、特選ももが使われています。
少し時間を置いて、色艶の美しい砂ずり(上)とハツ、野菜2種を盛った2皿目も到着。「Senca鶏」以外の国産鶏を使った部位も、厳しく吟味された良品なのは言うまでもありません。
「鳥玄」では、この“鶏焼”が主力料理。「焼鳥よりも冷めにくく、臨場感ある食べ方だと思うんです」と遠藤さん。勧めに従い、まずは「Senca鶏」の3部位にジリジリと火を通します。「この鶏の特徴は脂の甘さ。それから親鶏特有の歯応えの中に、繊細な柔らかさがあるのも魅力ですね」
食してみると、その言葉すべてが当てはまる美味。甘味が豊かでジューシーで、優れた飼育環境が生みだす綺麗な風味は秀逸の一語でした。
次は皿に添えられたローズマリーやタイムを置くと、鉄板の上でハーブの香りがパッと弾け、食材にふくよかな表情が加わりました。味変ならぬ“香変”とは粋な仕掛けです。
おっ?と思ったのは隠し包丁の入った「手羽先」。1枚肉のように開いて焼くため火の通りがスピーディーで、骨の部分を外してカリカリに焼けば、旨味の強い骨周りの肉も余さず食べられます。
この他、部位をそれぞれ適切なサイズでカットしたり、服に匂いがつかないよう煙の出ないサムギョプサル用の鉄板を採用したり……と、随所に散りばめた細かな工夫が食事を気持ち良くサポートしてくれました。
鶏焼を十分堪能したところで、最後にシメの「鶏ぞうすい」が登場。兵庫の醤油に椎茸といりこを合わせた出汁に、若鶏のもも肉を加えた一杯はスルリと快く胃袋へ。要望があれば、卵かけご飯にも変更できるそうですよ。
なるほど、これは確かに「満喫」保証つきのコース。最近増えている東京・大阪からの客たちも、そのコスパに感激して帰途につくことでしょう。福岡で拡大の気配を見せる鶏焼ですが、「鳥玄」がそこに勢いを注ぐ一軒になるのは間違いありません。
ジャンル:焼肉・ホルモン焼き
住所:福岡市中央区白金1-16-15-1F
電話番号:092-406-5964
営業時間:17:00~OS22:30
定休日:不定
席数:カウンター6席、テーブル30席
個室:なし
メニュー:満喫コース3,400円・贅沢コース4,400円(以上注文2人前~)、プチコース2,400円、得々セット3,600円(2人前)、Senca鶏モモのたたき900円、平戸のばあちゃんのアゴ出汁からあげ(5個)640円、ヨシ子のアジフライ(2枚)540円
URL:https://www.instagram.com/torigen2020/
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