PageTopButton

全国に5万か所以上~盛土造成住宅地の災害リスク 関東大震災で沈んだ「海底の駅が」示す危険メカニズム

関東大震災で崩れ落ちた駅舎が、今も海底に残されています。この駅が崩れた原因をたどると、盛土によって造成された住宅地にも同じような危険があることが分かりました。

海底に残る関東大震災の痕跡

考古学者の林原利明さん。神奈川県小田原市根府川の海で調査を続けています。

 

 

考古学者 林原利明さん
「今から100年前、関東大震災ありましたよね。その時の痕跡が残っている。海の中ではおそらくここだけ。陸上でもおそらく痕跡ないでしょう」

 

100年前の痕跡とは何なのか。記者が、水深10メートルの海底に潜りました。

 

 

 

RKB 今林隆史記者
「2本の棒のようなものが並んでいます。磁石を近づけてみると、しっかりとくっつきます」

 

磁石がつく金属の棒がありました。考古学者の林原利明さんによると、これは鉄道の「レール」である可能性があるということです。

 

 

 

さらに、同じ大きさの直角の石が等間隔に積まれている様子も確認できました。これは駅の「ホーム」とみられています。その近くからは、こんな発見も…

 

 

RKB 今林隆史記者
「金属の破片が複数、周辺に散乱しています」

 

金属の破片の正体はまだわかっていませんが、調査が続けられています。しかし、線路や駅のホームとみられるものがなぜ、海の中にあるのでしょうか。

標高50メートルから海に落ちた駅

 

現場は、JR東海道線根府川駅の沖、約300メートル。100年前の関東大震災では、標高50メートルに位置する駅と列車が海に崩れ落ち、約130人が犠牲になりました。

 

 

考古学者 林原利明さん
「駅自体が流されている、その痕跡がそのまま残っているのがインパクトがあります。いま減災教育が研究されているけれども、いつ地震が来てもおかしくない。そういうものにいかせると思います」

なぜ駅は海に落ちたのか

 

京都大学の釜井俊孝名誉教授は、関東大震災の土砂災害を調査してきました。根府川駅周辺は溶岩の上に地下水を含んだ軽石や火山灰が堆積していて、地震の揺れで液状化したことで滑りやすくなり、海に向かって崩れ落ちたと見ています。

 

そして、同じように地下水が影響して土砂災害のリスクが高まっているのが、造成された住宅地だと指摘します。

 

 

 

京都大学 釜井俊孝名誉教授
「我々は100年間の間に谷を埋めたりして、非常に平らな土地を都市の郊外にいっぱいつくってきたわけです。そういう造成地の一部は地震の場合には崩れる可能性があります。リスクは増えていると思います」

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

この記事を書いたひと

今林隆史

1976年生まれ 福岡市出身 政治・経済などのニュース取材に加え、ドキュメンタリー番組の制作にも携わる。第58次南極観測隊に同行。JNNソウル特派員として韓国の大統領選挙(2022)などを取材。気象予報士・潜水士の資格を有し、環境問題や防災、水中考古学などをライフワークとして取材する。 番組「黒い樹氷~自然からの警告~」で科学技術映像祭 内閣総理大臣賞(2009)、「甦る元寇の船~神風の正体に迫る~」同映像祭 文部科学大臣賞(2013)など受賞。

深掘り!特集

もっと見る