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法廷にいた青年を特定!拡大写真の“傷”が決め手に「どこかの誰か」ではなく人物が浮かび上がる~28歳の青年はなぜ戦争犯罪人となったのか【連載:あるBC級戦犯の遺書】#18

「石垣島事件」に関わり、わずか19歳でBC級戦犯として死刑を宣告された男性。横浜裁判の法廷写真に残る姿が本人かどうか確認しようとご子息に見せたが、若き日の父の顔は晩年の印象とはかけ離れていて、確証は得られなかった。そんな中、拡大した写真の顔の中にあるものを見つけたー。

AIで同一人物を判定

死刑の宣告を受ける小浜正昌(米国立公文書館所蔵)

 

1948年3月17日に撮影された青年の写真。横浜軍事法廷で死刑を宣告されている青年にはふさふさと髪が生えている。判決の3ヶ月半前に撮影された法廷のグループ写真にも同一人物が写っているはずだと思うのだが、ずらりと並ぶ被告の顔を一つ一つ見ていっても、これだという人がいない。そこで思いついたのは、AIによる判定だった。地元大学の研究者を調べていたところ、顔認証システムが研究の範疇になっている人がいた。メールを送ってみると、微妙に研究の対象とは「ずれている」ということだったが、写真を撮影して同一人物かを判定できるソフトのデモページを教えてくれた。

髪が変われば、印象も変わる

石垣島事件の法廷(米国立公文書館所蔵)左最前列が小浜さん

 

試しに、小浜さんと推測される判決時の写真と、グループで座っている被告たちの写真を1枚ずつ撮影して検証してみると、同一人物だと判定された人がいた。傍聴席側に座っている坊主頭の青年だ。ヘアスタイルが違うと印象が変わり、肉眼で見比べても気付かなかった。若ければ3ヶ月半で6センチくらい、髪はすぐ伸びるのだろう。

写真を拡大して見つけたもの

横浜軍事法廷での小浜正昌(1947年12月3日撮影)

 

しかし、2001年のインタビュー時の小浜さんの顔と、判決時の法廷写真を検証してもAIは他人としか判定してくれなかった。19歳と73歳では、54年もの開きがあるので同一人物にはみえないのか、何度やっても結果は同じだった。無料版のお試しだったせいもあると思う。もう一度、小浜さんの息子さんに写真を見てもらおうと、晩年のインタビュー映像から法廷写真と同じ角度の顔の画像を取り出して、同じ大きさの顔のブロマイドを作った。すると、あることに気付いた。額に傷があったのだ。

 

19歳と73歳の小浜さん



CGセンターで画像を重ねてみると、19歳と73歳の2枚の写真の傷の位置が一致した。AIで同一人物と判定された、法廷でのグループ写真に写る坊主頭の青年にも、よく見ると額の同じところに傷があった。小浜さんの息子さんに写真を郵送したところ、「これは間違いありませんね」と言っていただいた。

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この記事を書いたひと

大村由紀子

RKB毎日放送 ディレクター 1989年入社 司法、戦争等をテーマにしたドキュメンタリーを制作。2021年「永遠の平和を あるBC級戦犯の遺書」(テレビ・ラジオ)で石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞奨励賞、平和・協同ジャーナリスト基金賞審査委員特別賞、放送文化基金賞優秀賞、独・ワールドメディアフェスティバル銀賞など受賞。

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