地下鉄七隈線・渡辺通駅の目の前にある“博多の食材市場”といえば、そう「たべごろ百旬館」です。プロの料理人や食にこだわりのあるお客さんが集うこの店には、ありとあらゆる食材が揃います。
プロ御用達の店「百旬館」へ!
精肉、鮮魚、青果売り場はもちろんなのですが、それに加えて個人的に大好きなのが「調味料コーナー」です。「百旬館」にはあらゆるメーカーの調味料が揃っており、他のお店ではあまり見かけないような“レア物”もチラホラと。これ使ってみたい、あれも気になる……といった具合にワクワクが止まらないんです。
聞けば、醤油・だし醤油・ポン酢・お酢・みりんなどの液体調味料だけでも300種類以上を揃えていると言うではありませんか。
「1998年に創業し、25年間営業を続けてきた中で、種類はどんどん増えて今ではこの通りです。私達が試してみて気に入ったものや、一般のお客様や飲食店の方々のご要望を受けて取り扱いを始めるものも多く、気付けばこんな数になってしまいました」。そう笑顔で話すのは、店長の田中尚輝さん。
スタッフ&ライターの独断と偏見で醤油を選ぶ!?
この充実したラインナップを前に、私は前々から一度やってみたいと思っていたことを田中店長にお願いしてみました。
――醤油の味比べをしてみませんか?
「それは面白そうですね、ぜひやりましょう! 当店のスタッフにも声をかけて一緒に選んでもらおうと思います」。田中店長はそう言って、調味料コーナーの商品を担当する松下洋平さん(写真左)と二宮裕子さん(中央)、広報担当の綾部結香さんに助っ人を要請。田中店長と私を含めた5人で醤油の味比べをしてみることに。
「売れ筋の商品を挙げるとすれば、『キッコーマンのしぼりたて生しょうゆ』や、料理人の愛用率が高い『ジョーキュウ醤油』なのですが、今回は他店ではあまり扱いのないものや、私達が純粋に気になるものを選んでみませんか?」と田中店長。そうして、1人ずつピックアップした結果がこちらです。
左から「大久醤油/さしみ醤油」(150ml 378円)、「フンドーダイ/透明醤油」(100ml 540円)、「藤安醸造/極あまくち専醤」(500ml 459円)、「マルヱ醤油/九州あまくちさしみ醤油」(420ml 286円)、「北伊醤油/純もろみしょうゆ特選」(900ml 1,401円)の5本となりました。色もまったく違いますね。
鯛の刺身に付けて味比べしてみよう!
今回は「百旬館」の鮮魚部が用意してくれた鯛の刺身につけて味比べをすることにしました。身が締まり脂も程よくのって、さすが「百旬館」の刺身は美味し~……なんていけませんね、今日の主役は醤油です。気を取り直して、レッツトライ!
「これは塩味が強いな」「こっちは大豆の香りを感じるね」と、感想を言い合いながら真剣に味比べをしていきます。
ちなみに、JAS(しょうゆの日本農林規格)によると醤油は大きく分けて5種類に分類されるそうです。白、淡口、濃口、再仕込み、たまりとなり、後のものほど熟成期間が長く、旨味や味も濃くなるという印象です。
この分類で分けると、今回選んだ醤油は以下の振り分けとなりました。
日本の醤油生産量の8割以上は濃口醤油であることと、「刺身に付けるなら」というテーマで選んだこともあり濃口が多いですね。
※濃口醤油(混合)
…「大久醤油」(糟屋郡)、「藤安醸造」(鹿児島県)
濃口醤油(本醸造)
…「マルヱ醤油」(みやま市)、「北伊醤油」(糸島市)
しょうゆ風調味料
…「フンドーダイ」(熊本県)
※商品名は省略
「本醸造」「混合」というのは、醤油の製法の違いです。「本醸造」は江戸時代から続く伝統的な製法で、「混合」は「生揚醤油(本醸造または混合醸造)」に大豆などのたんぱく質を塩酸分解してつくったアミノ酸液を加えたもの。この他、本醸造の「諸味」にアミノ酸液を加えて作る「混合醸造」という製法があります。
「しょうゆ風調味料」には様々なタイプがあるようですが、「透明醤油」は本醸造の濃口醤油を独自の分離精製によって透明化しているのだそうです。
選ばれた醤油はコレだ!
さぁ、5人で味比べをした結果はいかに? 味比べの感想と共にベストワンを発表します!
※【刺身に付けて食べるならコレ!】
1位「大久醤油/さしみ醤油」
「コクと旨味のバランスがちょうどいい」「九州出身なので、少し甘味がある方がしっくりくる」「甘味が強すぎるわけではないので、魚の種類を選ばず使いやすい」
【家に置いておきたいのは?】
1位「北伊醤油/純もろみしょうゆ特選」
「最初はキリッと。でも後口に大豆の旨味や香りを感じる」「昔ながらのシンプルな味わいでオールマイティに使える」「甘味が苦手な方にはコレがオススメ」
【その他、こんな意見もありました】
「透明醤油は白身魚の刺身に良さそう。素材の色を邪魔しないのもいい」
「極あまくち専醤は、さすが鹿児島産! 地鶏や馬肉といった肉刺しにつけたい」
「九州あまくち刺身醤油はゴマサバみたいな胡麻和え、煮魚にも良さそう」
補足ですが、今回試食したメンバーは全員九州出身です。“甘味のある醤油に慣れ親しんでいる”というのも、選出結果に影響していそうですね。製造の地域や製法、出身地、味の好みによっても意見が分かれる醤油、いやはや奥が深いです。
念願だった醤油の味比べが出来て大満足……なのですが、「百旬館」には醤油以外にも魅力的な調味料が盛りだくさん。せっかくなので、オススメのポン酢とだし系調味料もご紹介したいと思います。
これは使ってほしい!「ポン酢 5選」
早速左から順に、田中店長の推しコメントと共にチェックしていきましょう。
※「チョーコー醤油/実生ゆず かけぽん」
(370ml 580円)
「長崎の老舗『チョーコー醤油』定番の『ゆず醤油かけぽん』をさらにグレードアップさせた1本。 超特選・本醸造丸大豆醤油と、種子から育った木に実る希少な「実生ゆず」の果汁が香ります」
「内堀醸造/美濃 特選味付ぽん酢」
(360ml 486円)
「料理人の方に愛用者が多い人気の品。とあるテレビ番組で木村拓哉さん愛用の1本としても紹介されていました。利尻昆布と枕崎カツオ節の一番だしにすだちと柚子果汁を合わせた、上品な味わいです」
「博多料亭 満佐/老舗料亭のぽん酢」
(360ml 874円)
「こちらは他店であまり販売されてないレア物。創業明治27年、博多で最も歴史のある『料亭 満佐』特製の1本です。橙果汁や赤酒などを使用した料亭ならではの味わいが光ります」
「馬路村/ぽん酢醤油(ゆずの村)」
(500ml 734円)
「“他のポン酢には戻れない!”と、リピーターが多い人気の1本。高知県の馬路村で有機栽培された柚子と、カツオだしのバランスが絶妙なんです」
「馬路村/ぽん酢醤油(馬路村)」
(500ml 777円)
「緑キャップの『ゆずの村』はよく見かけますが、“幻の赤キャップ”と言われる『馬路村』の方はなかなかにレアですよ。緑は通常版で、赤は2倍量の柚子を使用した特別版です。高知に研修に出かけた際に出合って、ぜひ『百旬館』にも置きたい!と仕入れた1本。普段は緑、夏場はよりさっぱりとした赤……なんて使い分けもおすすめです」
レアな1本にも注目の「だし系調味料 5選」
こちらも左から順に、店長の推しコメントと共にご紹介します。
※「対馬醤油江口/まるごと対馬だし醤油の素」
(18g 716円)
「ボトル内には穴子の骨、干椎茸、干アジという、対馬の天然素材が入っています。お好みの醤油を注いで、数日置いておくと特製のだし醤油が完成。醤油を継ぎ足しながら使え、ニンニクや唐辛子を加えてパンチを効かせてもよいですね」
「唐船峡食品/唐船峡めんつゆ」
(500ml 429円)
「『唐船峡』は、“回転そうめん流し発祥の地”として有名な鹿児島県指宿市にある渓谷です。このめんつゆは、そこの湧水や枕崎産のかつお節で作られているんですよ。程よい甘味とかつお節の香りが食欲をそそります」
「今村食品工業/贅沢炒り子だし」
(280ml 398円)
「創業大正9年、大牟田市の『今村食品工業』のだし系商品も、他店にはあまり置いていない1本。このだしは『三州みりん』使用で、粉砕したイリコもそのまま入っており、味噌汁や煮物の隠し味に使うのがオススメです」
「今村食品工業/天然真鯛濃厚だし」
(280ml 451円)
「玄界灘産の天然真鯛を煮出し、羅臼昆布、鰯の魚醤などを加えた鯛だしです。濃厚な鯛の旨味が広がり、潮汁など吸い物の味もバチッと決まりますよ」
「今村食品工業/贅沢昆布だし」
(370ml 580円)
「北海道産の3種類の高級昆布、あごだしエキス、鰯の魚醤などを使用した白だしです。とろみのある緑がかった液体で、上品な旨味が魅力。『百旬館』で人気のおでんには、この「贅沢昆布だし」を使っているんですよ」
とにかく気になる調味料が盛りだくさん
醤油にポン酢、だし系調味料まで、熱量たっぷりにご紹介させていただきましたが、いかがでしたか? 「百旬館」にはありとあらゆる調味料が揃っているので、気になる方はぜひ調味料コーナーを覗いてみてください。
個人的には、江戸幕末・安政2年に創業した大名の老舗「ジョーキュー醤油」から出ている「博多ごまさばのたれ」(210ml 486円)や「フライ革命 マヨ醤油」(200ml 473円)も気になります。右端の「塩魚汁(しょっつる)」(360ml 853円)は私が自宅で愛用している調味料。これを使って太刀魚やサワラなどの魚をサッと炊くと最高に美味しいんですよ、ぜひお試しください。
《たべごろ百旬館 /ひゃくしゅんかん》
福岡市中央区渡辺通1-11-16
092-731-3014(代表)
営業時間 8:00~21:00(対面販売コーナーは15:00頃まで)
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