お洒落な隠れ家のようでパンブティックと呼ぶにふさわしいガラス扉を開けると、高加水パン特有の旨味が凝縮した香りに包まれます。コンクリート打ちっ放しの壁を背景に、低温長時間発酵を経て強めに焼き上げられたパンたちに出迎えられ、訪れるパンラバーは瞬時に魅了されてしまいます。
今や福岡のハード系パン屋を牽引する一軒である「Yakichi」が大橋に続いて平尾に2号店を出したのは2021年12月のことでした。店を切り盛りするのは藤川優さん、南美さん夫妻。店名は大橋本店を自ら左官をして作り上げてくれた藤川シェフの父親、八吉さんの縁起の良い名前からとったそうです。
週末金曜の午後にお邪魔したため惣菜パンなどは売り切れ間近で、他のお客さんの分がなくなるといけないので、数に余裕があった甘めのものを中心に5個を自分用に何とか確保しました。日にもよるそうですが、今も店内に入れるのは6名までにしており店外にお客が並ぶこともあるので、できれば午前中早めの訪問をお勧めします。
第2回ベーカリージャパンカップ食パン部門で優勝に輝き、農林水産大臣賞を受賞したことで有名な北九州の「木輪」や東京の名店「パーラー江古田」で修業をされた藤川さん夫妻は、具材はもちろんソースまで自家製にこだわってます。自家製レーズン酵母で小麦の旨味をゆっくり引き出すよう、機械に頼らず手で丁寧にこね上げたパン種を15~20時間発酵させると言います。この長時間熟成こそ、香り高き風味の源といってよいでしょう。
もちろん焼きにも細心の注意を払っています。表面のカラメル化が進み褐色になった頃合いを見て、水分やアルコールなどを程よく飛ばし仕上げるという、まさに、言うは易く行うは難しの職人芸です。
小麦粉は「キタノカオリ」など厳選された国産のもの。それら粉と水の配分と焼成の具合をはかりつつ、同じバゲットでも外側がバリッかパリッか、中がもっちりかさっくりかといった点に気を配り焼き上げます。
最初にいただいたのは、ぷっくり膨らんだ丸めの形状の「クロワッサン」(220円)。見事に折り込まれた発酵バターの風味も格別です。
「ミルクフランス」(195円)ははさまれた発酵バターと練乳クリームが、店内では溶けておらずホロホロとかたまりが見てとれるほどの状態。持ち帰って食べる頃にしっとりしてくるように計算しているそうです。
思わずワインが欲しくなったのが「チョコといちじく」(272円)。ハード系のほろ甘なラム酒漬けのいちじくとチョコレートが絶妙のバランスです。
また、外はあくまでもカリッと中はしっとりした「カヌレ」(192円)はパティスリーも唸る美味しさでした。
購入したパンの中で「ミルクフランス以外は翌日リベイクしても美味しく食べられますよ」と笑顔でアドバイスを下さった南美さん。テイクアウトの際、ドリンクも欲しいという方にはレジ傍にある「そふ珈琲」(城南区別府)の豆を使ったコーヒーも購入できたりと至れり尽くせりで、ここに通いたくなる秘密に温かく触れた思いがしました。
次回は粒々なのに滑らかな自家製あんが絶品と評判の「あんバター」(224円)をぜひゲットしたいと思います。
ジャンル:パン
住所:福岡市南区那の川2-3-30 will do平尾 1F
電話番号:092-521-8810
営業時間:9:00~18:00 (売り切れ次第閉店)
定休日:月、火曜
メニュー:クロワッサン220円、メロンパン180円、チョコといちじく272円、ミルクフランス195円、カヌレ192円
URL:https://www.instagram.com/yakichi0891/
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