「今、住吉界隈がおもしろいらしい」。そんな話を聞いて、訪れたのが住吉交差点を南に入った、ちょっとディープな雰囲気が漂う夜の街。個性ある小箱の飲食店やバーが点在し、気取らずふらりと楽しめるエリアです。実はここに「アジアベストレストラン50」にランクインするレストラン「Goh」の福山剛シェフが、有名シェフや美食家を連れて訪れる名店があります。それが、「ゴーサイン食堂」です。
早速、暖簾をくぐると現れたのは、カウンター6席に4人がけテーブル席というこぢんまりした空間。迎えてくれたのは、店主の山内剛さんです。美食家たちを虜にする料理を振る舞う山内さん、どんな経歴があるのだろうと尋ねてみると、「実は以前はサラリーマンだったんです」と笑います。飲食業に興味はあったものの、大学卒業後は自動車販売の会社に就職。その後、30歳を機に退職して飲食の道へと進んだのだそう。東京で飲食業界の仕事に携わったのち、福岡へ戻り転職。「わっぱ定食堂」にて経験を積み、2012年に「ゴーサイン食堂」をオープンしました。当時から変わらず目指しているのは、普段から食に関心があり、美味しいものが好きな人たちが普段使いで楽しめる居酒屋。その言葉通り、福山シェフをはじめ多くの飲食店関係者やグルマンたちが訪れる知る人ぞ知る店となっています。
冷酒だけで常時20種ほどは用意しているという「本日のコップ酒」(600円)を頼み、まずは乾杯! それからじっくりとメニューをチェックします。価格がないので、ちょっぴり緊張するかもしれませんが、大体1人5000~7000円程度の予算で楽しまれる方が多いのだそう。せっかくなので、この日は福山シェフおすすめのメニューを注文することにしました。
まずは「だし春菊」。提供された瞬間、ふわりと出汁の香りが漂います。シャキシャキ感が程よく残る春菊を昆布とカツオ節で取った出汁とともにいただく一品。空きっ腹にまずはほっと温かい出汁が入ることで、体がほっこりと温まります。トロンとした山芋のすり下ろしのおかげで、出汁が春菊にしっかり絡み、やわらかな舌触りで楽しめるのもうれしいです。最初の一品に選びましたが、お酒を飲んだあと、締めの一品にしても良さそう。実際、最初と最後、2回楽しむ方もいるのだそうです。
山内さんが、オープン当初から力を入れるマグロ料理は数種類ありますが、一番人気が「本鮪食べ比べ」。ブロックで仕入れたマグロ次第で、日によって異なる部位の食べ比べが楽しめます。この日はしっかりと脂が乗った長崎産マグロを仕入れたとのことで、赤身、中トロ、トロ、大トロ、大トロの炙りの5種類。赤身といえばさっぱりとしたイメージですが、舌でとろける脂乗りです。大トロは甘みがある脂がじんわり広がり、一口で十分な満足感があります。
小料理屋のような丁寧で上品な出汁や上質なマグロを味わったあとに頼むのは、「紙カツ」。このビジュアルは、まさにザ・大衆酒場です。豚ロース肉を叩いて伸ばして揚げた一品ですが、脂っこさはなく見た目に反してとても軽やか。サクッサクッと、まるで駄菓子のようにあっという間に一人で食べ進めてしまいました。
メニュー表をじっくり見ると「紙カツ」のほかにも、「赤ウィンナーたこ」「ハムエッグ」「カツ丼の頭」などが並び、本格和食と大衆酒場メニューが混在しています。そのギャップがなんだか面白いのです。
小箱なので確実に入りたいなら予約は必須ですが、予約の受付は18~19時入店のみです。それ以降に訪れたい方は、一度お電話してから席の空き具合を確認するのがおすすめ。一度訪れたら、きっと誰かに教えたくなるグルマン御用達の名店です。
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