砂糖を通して見る台湾と日本の近代化の記憶 台湾を拠点に活躍するアーティストの新作をYCAMで公開!
浪のしたにも都のさぶらふぞ
山口情報芸術センター[YCAM]では、2023年6月3日(土)~9月3日(日)の期間、台湾を拠点に活躍するアーティスト、許家維(シュウ・ジャウェイ) +張碩尹(チャン・ティントン)+鄭先喻(チェン・シェンユゥ)による新作を発表する展覧会「浪のしたにも都のさぶらふぞ」が開催されます。この3人は、それぞれ台湾の主要な美術賞を受賞し、海外の国際展にも招聘されて国際的にも注目を集めているアーティストです。近年は、共同で、日本統治時代の台湾における砂糖産業を起点に、台湾と日本の歴史的関係や近代化の記憶を辿るプロジェ クトをおこなっています。
撮影:山中慎太郎(Qsyum!) 北九州市門司での制作の様子
本展では、このプロジェクトに連なる新作として、日本の近代化とともに産業が発展し、国際貿易港が誕生した北九州の門司および門司港を舞台に、人形浄瑠璃とCGアニメーションを組み合わせ、映像とライブパフォーマンスからなる作品を、YCAMとのコラボレーションにより制作・発表します。山口からほど近い門司および門司港の近代化や太平洋戦争の記憶を、多様なアプローチから紐解く本展を通じて、日本と台湾との間の知られざる歴史を描き出します。
許家維+張碩尹+鄭先喻
許家維(シュウ・ジャウェイ)
1983年台中生まれ。従来の歴史の語りでは見過ごされてきた人間、物、場所の関係性を紡ぎ直すような映像作品を制作し、台湾を含むアジア一帯の地理的、歴史的、文化的繋がりや、時代の荒波に翻弄される個人の歴史を浮かび上がらせる。2013年にヴェネチア・ビエンナーレ台湾館代表を務め、同年2013年ヒューゴ・ボス・ア ジア・アート賞ファイナリスト。日本では、「シアターコモンズ'18」(2018年)や森美術館の「MAMスクリーン」(2018年)、国際芸術祭「あいち2022」(2022年)で作品を発表。
張碩尹(チャン・ティントン)
1982年台北生まれ。科学や生物学などの知識を元に没入型インスタレーション、映像、演劇的作品を制作し、人間、科学技術、社会の関係性について考察してきた。台湾の近代を個人史の視点から俯瞰する作品まで、多様なアプローチで現代社会の側面を切り取るプロジェクトを手がける。
鄭先喻(チェン・シェンユゥ)
1984年高雄生まれ。アーティスト、ソフトウェア開発者。電子機器を用いた作品、ソフトウェア、実験的な生体電子工学的装置を手掛ける。人間の行動、感情、ソフトウェア、機械の間の関係性に重きをおいた作品を通して、社会と環境に対する独自の視点をユーモラスに表現している。
国際的に活躍するアーティストと YCAM のコラボレーション
YCAMは、開館以来、メディア・テクノロジーを応用した新たな表現の探求を活動の軸に据えており、これまでに坂本龍一、ダム タイプ、中谷芙二子、ホー・ツーニェンといった第一線で活躍するアーティストたちとともに多種多様な作品を制作・発表してきました。本展では、台湾を拠点に活動する、アーティストの許家維、張碩尹、鄭先喻が YCAMとのコラボレーションのもと、映像とライブパフォーマンスからなる新作を発表します。
3人は、ともに1980年代生まれで、それぞれアーティストとして活動しており、台湾の主要な美術賞を受賞するほか、海外の国際展にも多数招聘されるなど国際的な評価も高いアーティストです。この中でも許は日本で作品が紹介される機会も多く、日本国内の芸術祭で新作を発表するなど、日本国内でも高い注目を集めています。近年この3人は共同で、日本統治時代の台湾における砂糖産業を起点に、日本と台湾の関係や東アジアの近代化の記憶を辿るプロジェクトを行っており、2021年には、このプロジェクトの第一部として、製糖業で発展した台湾の街・虎尾(フーウェイ)を舞台に制作したインスタレーション作品《等晶播種》を台湾・台北で発表しました。
本展では、その作品に続く第二部として、YCAMとのコラボレーションにより新作を制作し、世界初公開します。舞台となるのは、虎尾と同様に現在に至るまで製糖工場が稼働し続ける北九州市の門司。東アジアの近代史において合わせ鏡のような運命を辿ってきた二つの都市の記憶を多様なアプローチで紐解いていきます。
撮影:山中慎太郎(Qsyum!) 北九州市門司での制作の様子
人形浄瑠璃と CG アニメーションを融合した、映像とライブパフォーマンス
本展覧会は新作を含む二部作で構成されます。第一部の《等晶播種》は製糖業で発展した台湾の虎尾を舞台に、日本統治時代に建てられた製糖工場をはじめ近代化の遺産が残る街の歴史を、台湾の伝統的な人形劇による語りや音楽とともに描く映像インスタレーションです。
第二部の新作《浪のしたにも都のさぶらふぞ》の舞台は、日本の近代化とともに産業が発展し、国際貿易港が誕生した北九州の門司、そして門司港です。門司にも製糖工場があり、かつては虎尾の製糖工場と同じ会社が運営していました。二つの街は砂糖で繋がっていたのです。また戦時中に戦略的に重要な拠点であったため、戦争の激化に伴い、空襲による大きな被害を受けたという共通点も持ちます。
本作では、この門司および門司港の近代化や戦争の記憶を、地域 に伝わる平家の物語と重ねながら、日本の伝統的な人形劇である人形浄瑠璃とCGアニメーション、音楽、ライブパフォーマンスにより描きます。作品タイトルは、「壇ノ浦の戦い」の様子を綴った『平家物語』の一節を引用したものです。人形遣いと人形、パフォーマーとアバターの動きが象徴的に表すのは、複雑に絡み合う「操るー操られる」関係性。歴史の中で繰り返されるこの関係性を生み出す動力とは何なのか。伝統と現代の表現を織り交ぜ、現実世界と仮想世界を行き来しながら見る者に問いかけます。
INFORMATION
タイトル: 許家維+張碩尹+鄭先喻 浪のしたにも都のさぶらふぞ YCAM とのコラボレーション
期間: 2023年6月3日(土)~9月3日(日) 10:00~19:00
会場: 山口情報芸術センター[YCAM]スタジオ A (山口県山口市中園町7-7)
入場料: 無料
休館日: 火曜日
新作《浪のしたにも都のさぶらふぞ》上演時間: 上演時間 (約40分) 平日:14:05 ~ 土日祝:10:45 ~/ 12:50 ~/ 14:55 ~/ 16:20 ~
主催: 山口市、公益財団法人山口市文化振興財団
関連イベント: [アーティストトーク] 6月3日(土) 14:00 ~ 15:30 会場 : ホワイエ 参加無料(要申込) 通訳あり [「The Flavour of Power」展とのクロストーク] 6 月 4 日(日) 14:00 ~ 16:00 会場:ホワイエ 参加無料(要申込) 通訳あり 6月25日まで開催中の展覧会「The Flavour of Power̶紛争、政治、倫理、 歴史を通して食をどう捉えるか?」の出品作家と本展作家が両展覧会の共通 するトピックについて話します。 [キュレータートーク] 6 月 18 日(日) 11:30 ~ 12:30、7 月 23 日(日) 13:40 ~ 14:40、 8 月 5 日(土) 13:40 ~ 14:40 集合場所 : ホワイエ 参加無料(要申込) [サンカクトーク] 6月17日(土)、7月9日(日)、7月23日(日)、8月26日(土)各回16:00~18:00 集合場所:ホワイエ 参加無料(要申込) 作品について参加者同士でディスカッションするイベントです。 このほか、会期中に台湾映画の特集上映や台湾インディーズバンドによるコ ンサート、台湾からゲストを招いてのトークイベントを開催予定です。詳細は YCAM のウェブサイトにて順次公開します。
YCAM WEB サイト: 関連イベントの詳細ならびに申込方法は YCAM のウェブサイトをご確認ください。 https://www.ycam.jp/
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