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記念日ディナーからバー使いまで!懐深き、春吉の隠れ家トラットリア

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外食が趣味の方なら、きっと“隠れ家”を1、2軒はお持ちでしょう。そして、そういう店は大抵居酒屋やバルのような場所が多いもの。そんな意味で、先日お邪魔した「葡萄房」は意外性のある店でした。
趣はリストランテのそれですが、実はワインバーにもなる気取らなさ。加えて、うっかり見逃しそうな目立たぬ立地。「店は入ってみるまで分からない」──そんな格言さえ浮かぶ隠れ家イタリアンです。

葡萄房外観

春吉でもとくに閑静な一画に、その玄関はあります。まだ春吉が薄暗かった2006年開業なので、当時の“隠れ家感”はかなり強烈だったのでは? さらに、重厚な扉を見て「格式高そう」とひるんだ人も多いはず。が、思い切ってドアを開ければ、そこには得難い快適空間が広がっています。

葡萄房内観

心地いいBGMが流れる店内は、欧州のクラシックホテルを思わせる表情。半個室のスペースを含む、テーブル席主体のフロアです。穏やかな気品に「やはり高級店?」と緊張しますが、オーナー兼ソムリエの兼子敬三さんが懸念を払ってくれました。
「リストランテではなく、常に“トラットリアよりやや上”を目指しています」。7年前に前オーナーから店を引き継いだ後も、「気軽にワインを楽しむ大人の隠れ家」という「葡萄房」のテーマは変わりません。

また店名が示すように、ほぼイタリア産が占めるワインも約250種と豊富。ボトルは4,800円から30万円ほどで、15年以上熟成のヴィンテージ目当てに訪れるマニアも多いそうです。

葡萄房前菜

このほどよいカジュアルさの理由は、多分コースとアラカルト両方を揃えた点にもあります。このクラスの店に珍しく、メニューにはピッツァもありました。アラカルトを気ままにつつくもよし、特別な日は豪勢にコースを頼むもよしという自由度が、肩肘張らない空気の源になっているのです。

今夜は記念日利用なので、全7品の「シェフお薦めコース」(9,500円)を予約。九州産主体の野菜・魚介・肉類を、イタリア伝統技法で仕上げた美味揃いです。

1品目の前菜盛り合わせは、鹿児島産マグロのカルパッチョ、マイワシのマリネ、ホタテのスモーク、低温調理の鴨ロースなど文句なしのバリエーション。「添加物使用の調味料は使わない」とのポリシーもあり、うまさが優しく舌に沁みます。

葡萄房パスタ1

さらに「魚の一皿」「温かい前菜」を挟み、楽しみだったパスタ2品の登場です。というのもシェフの後藤竜之さんは、手打ちパスタに定評ある大橋の「Cucina Italiana TESHIMA」出身。自身もパスタ職人の矜持を持つだけに、パスタ好きの僕には期待しかありません。

まず供されたのは、サンマと銀杏の手打ちタリオリーニ。オイル控えめの軽い食味に、炙りサンマの香ばしさとカラスミのコクが加わって、淡麗な味がふわり。タリオリーニ特有のプツッとした歯応えも最高でした。

葡萄房パスタ2

2皿目は、熊本産馬スネ肉とポルチーニのラグーを和えたストロッツァプレティです。ソースと一緒に長めに炊いて、味を染み込ませたパスタはひと噛みごとに旨味が倍増。少し遅れて湧きあがる、北海道産小麦の甘い風味もリッチな余韻を残します。

葡萄房 肉1

大満足の2品の後は、鹿児島産黒毛和牛イチボのロースト。野菜や魚介料理には優しみを感じましたが、さすがメインの肉系はメリハリある食べ応えです。トリュフもたっぷり散らされて、コースならではの贅沢に酔いました。
佐賀産白石レンコンや、ヒヨコマメのピューレなど、丹念に仕込んだ付け合わせも丁寧な仕事でしたよ。

葡萄房シェフ

とにかく食材重視のたおやかな味つけが好印象。ラストのドルチェまで、熟年の常連客がぺろりと平らげるという話も頷けます。
「僕が大切にするのは、イタリアンの真髄であるシンプルさと素材感です」と後藤さん(写真左)が言えば、「シェフは引き出しが多く、器用なので安心して厨房を託せます」と兼子さん(同右)が即フォロー。この信頼し合ったコンビの妙も、居心地よさの秘密かもしれません。

そして最後に「ワインバー利用も歓迎です。2、3軒目に来店し、ドルチェとワインだけ頼むお客様もいらっしゃいますよ」と嬉しい一言。思えばハレの日には非カジュアルな店を選ぶものですが、ここにはハレとカジュアルが両立する懐深さがあるんですよね。つまり、「葡萄房」とは“知っていると得するトラットリア”なのです。

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

店舗名:葡萄房
ジャンル:イタリア料理
住所:福岡市中央区春吉3-24-4 K’s square1F
電話番号:092-711-6660
営業時間:17:00~OS23:00 (日曜はOS21:00)
定休日:月曜、月1回不定
席数:カウンター4席、テーブル20席
個室:なし
メニュー:季節のコース6,300円、シェフお薦めコース9,500円、12,000円(3日前まで要予約)、本日の前菜の盛り合わせ3,200円、トリッパのトマト煮込み1,800円、スパゲッティカルボナーラ2,000円、生ハムのピッツァ2,000円、和牛ホホ肉の赤ワイン煮込み3,000円
URL:https://budo-bou.jp

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この記事を書いたひと

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