日々、バイヤーたちが九州を東奔西走し、新しい美味を届けてくれる「大丸福岡天神店」。2024年1月24日(水)~2月14日(水)まで開催されるバレンタインイベントには、今、九州で最も旬と言われているパティシエたちのショコラが登場します。一体どんな人たちが、どんな思いでお菓子づくりに取り組んでいるのか? 熊本・福岡・長崎の各県で、オープン以来瞬く間に人気となった彼らのお店を訪ね、インタビューしてきました。第3回は長崎「BLUEPRINT」のシェフパティシエ・神﨑琢也さんです。
強豪・横浜高校に勝利した甲子園球児からパティシエに!
長崎市の中心地、百貨店「長崎浜屋」の前にあるモダンなビルの1階にある「BLUEPRINT」は、“一杯のコーヒーから、一生を住まう家までをデザイン”をコンセプトに、造船・建築設計事業を展開する「そとわコーポレーション」が手がけるパティスリー&ラウンジです。お菓子文化が豊かな長崎ですが正統派のフランス菓子を手がける店は稀少で、2022年12月のオープン以来、一気に人気店となりました。
なんと、シェフパティシエの神﨑琢也さんは波佐見高校出身の元甲子園球児。しかも、現在ソフトバンクホークスで活躍する近藤健介選手がいた横浜高校との対戦で、自らヒット3本を放ち、チームを勝利へ導いたという輝かしい経歴の持ち主です。その活躍が新聞で報じられた際、「将来の夢は何ですか?」という問いに対し、神﨑さんが答えたのが「パティシエ」でした(きっと記者の方も驚いたはず)。
「小学1年生の時から野球一筋で、甲子園出場は夢。出場できたことで大きな達成感に満たされたので、野球には未練を残すことなく次のステップに進むことにできましたね。もともと母が家でよくお菓子をつくる人で、自分も幼い頃に一緒につくっていたので“野球が終わったらパティシエになろう”と決めていたんです。大阪の「辻製菓専門学校」に入学したのも野球が縁。新聞記事を見た辻製菓の方から「うちに来ませんか?」と声をかけてもらったんです。当時の理事長が甲子園の名門校、徳島の「報徳学園」の元理事長だったので、興味を持っていただけたようでした」と神﨑さん。(以下太字部分、神﨑さん談)
丸坊主&土下座で憧れの店へ入店志願
神戸・台湾・ハウステンボスとキャリアを重ね、長崎へ
入学後、わずか1ヵ月間で近畿圏の人気パティスリーの食べ歩きを制覇した神﨑さん。その結果、当時学校の講師でもあった坊佳樹シェフの店、神戸「ル・プレジール」の味に惚れ込みます。
「とにかく美味しかったんです。「ル・プレジール」は学校からも就職先として薦められていたのですが、あくまで自分の力で就職したかったので、頭を五厘刈にして土下座し“働かせてください”と坊さんにお願いしました。それまで「ル・プレジール」は経験者しか採用していなかったのですが、なんとか入れてもらえたのでそれから必死で働き、数年経った頃、台湾に出店することになったので師匠と一緒に台湾に渡りました。師匠の元で学べた日々は人生の宝物です。「ル・プレジール」のスペシャリテ「マロンカシス」(680円・写真_栗がのったもの)は今もつくり続けていて「BLUEPRINT」でも人気です。ホワイトチョコレートのブラウニーに栗のムース、カシスの酸味が一体となった師匠直伝の味をこれからも大切にしていきたいと思っています」。
台湾から帰国してからは故郷である長崎・佐世保に戻り、自分の店を持つことを視野にいれながら、ハウステンボスのカフェ「BLUEPRINT」で気軽にアルバイトをしていた神﨑さん。そこで大きな転機を迎えました。
「当時、事業計画を練って公庫を訪ねたりしていました。空いた時間に気軽にアルバイトしようと思ってカフェに入ったのですが、自分がパティシエだと知った社長から「何かつくってみて」と言われたんです。とはいえ、そこには家庭用オーブンとミキサーが1台、ボウルが1個しかなったので、段ボールで型をつくり、アルミホイルを巻いてムースつくったりと工夫しながら、全部で40種類くらいのケーキを食べてもらいました。そうして「フレジエ」(写真・中央_イチゴがのったもの)を出した時に「これうまいね! 店を出すから好きにやったらいいよ」と認めてもらい、今の店ができることになりました」。
“五味五感”に響くお菓子をつくりたい
「BLUEPRINT」は手前がパティスリー、奥がラウンジとなっており、ケーキはラウンジでも食べることができます。開店以来、神﨑さんがつくるお菓子の美味しさが評判となり、ホテルのオリジナル菓子などの製造卸も行っているため、神﨑さんもスタッフも大忙しです。
「昔からパティシエは労働時間が長く、重労働の仕事とされてきましたが、ここではそれを変えたい。うちは忙しくても8時間労働が基本です。いい店、いいチームをつくっていくためには、働きやすい環境を整えることも大切。そのために製造卸の仕事も積極的に受けて、しっかりと利益が出るようにしていきたいと考えています」。
パティシエとしてのこだわりを貫きながら、チームを率いるシェフパティシエとして経営者的な視点も持ち合わせた神﨑さんがつくるケーキは、シンプルさの中にも華やかさが光るクラシックなフランス菓子。全体的に甘さが控えめなのも特徴です。
「甘味、塩味、苦味など、舌で感じる「五味」、視覚や嗅覚などの「五感」、つまり“五味五感”に響くお菓子を心がけています。これは師匠・坊シェフからの教えでもあります」。
一番人気の「モンブラン」(820円・写真)はフランス産栗のペーストにラム酒をしっかりと利かせ、中に大きな栗と爽やかな風味が広がるレモンのメレンゲが入った大人の味わいです。また、12月に登場したばかりの新作「フラゴーラ」(イタリア語でイチゴの意・650円・写真)は、ホワイトチョコレートとパッションフルーツのムースをイチゴのジュレで包んだ春らしい一品です。ほかにもコーヒー風味のシロップがじゅわっと溢れる「オペラ」(600円)や、ヘーゼルナッツのダコワーズとプラリネのムースを重ねた伝統菓子「マルジョレーヌ」(650円)も絶品です。
大丸福岡天神店のイベントではボンボンショコラの実演を披露
今回のバレンタインイベントに登場するショコラは2シリーズ。1つは「塩」シリーズ。まろやかな味わいが特徴の長崎・五島の「まあるい塩」がショコラの甘さをぐっと引き立て、長崎そのぎ茶の抹茶や、宮崎の味噌、柚子などのフレーバーを展開します。もう1つは「ケーキ」シリーズ。オペラやミルフィーユなどの味わいがショコラの中に閉じ込められています。ショコラは2011年の「クープ・ド・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」(フランスで開催される世界を代表するパティスリーのコンクール)日本代表チームキャプテンを務めたパティシエ・鍋田幸宏氏とともに開発したものです。
「“ショコラに塩?”と思われるかもしれませんが、奇を衒ったものではないので新たな美味しさをお届けできると思います。ボンボンショコラは1粒300円程度と決して安くはないですよね。でも、それだけの価値があることをお伝えしたくて今回、会場での実演販売を提案させてもらいました。期間中は現地でテンパリング(カカオバターの結晶を最も安定した状態にする温度調整作業のこと。これにより光沢の美しい、滑らかな口当たりのチョコレートに仕上がる)を行い、ガナッシュにショコラをかけて固めた出来たてのボンボンショコラを販売します。その格別な風味をお楽しみください」。
繊細なショコラの美味しさを引き出すシェフの技術を間近で見ることができるのは2月7日(水)~14日(水)までの1週間限定。ぜひ、お楽しみに!
ジャンル:複合施設
住所:福岡市中央区天神1-4-1 大丸福岡天神店 本館・東館エルガーラB2F
電話番号:092-712-8181 (代表)
営業時間:10:00~20:00
定休日:なし
URL:https://www.daimaru-fukuoka.jp/
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