あの人気店の店主が、“しっかり料理が食べられる”立ち飲み酒場をスタート

2014年に誕生し、瞬く間に福岡グルマンたちの話題をさらった「食堂えぶりお」。店主・太田栄治さんはその後、「ニューえぶりお」「うどん栄」「食堂はまかに」と業態を変えながら私たちを常に驚かせ、胃袋をぎゅぎゅっと掴んでいきました。

そんな太田さんが、また新たなるお店を始めたというニュースが耳に届きました。

そのお店「立ち飲みモンブラン」は、8月に地下鉄薬院大通駅のすぐ側にオープンしました。「食堂はまかに」の流れを汲むモダンでスタイリッシュな印象です。カウンターだけの空間で、10人ぐらいまではゆったりと、詰めれば20人ぐらい入るそうです。

奥の方に暖簾で仕切られた個室があります。 2～4人で利用できるので、プライベートに飲みたい方はスタッフに声をかけてみてください。

いろいろと変貌を遂げながら、その手腕とチャレンジング精神を見せてくれる太田さんですが、なぜ、今回は立ち飲みなんでしょう？　「しっかり料理が食べられる立ち飲み酒場が作れたらおもしろいだろうなと思って」と太田さん。しっかりの基準は、手作りかつ旬のもの、そして家では作らないようなものだと話します。

品書きには「自家製ポテサラ」（330円）、「薬味たっぷり揚げたて厚揚げ」（550円）、「四川麻婆」（880円）、「ヤリイカ天ぷら」（1,100円）などなど魅惑の顔ぶれです。また、白板に書かれた日替わりメニューもあるのでそちらもお見逃しなく。

ドリンクは日本酒、ビール、ワイン、焼酎などを揃え、ソフトドリンクもあります。日本酒以外は冷蔵棚から自分で取り出すセルフスタイルです。私は日本酒でスタート。16種ほどある日本酒から好みを伝えて、選んでもらいました。

料理はまず日本酒のお供にと、日替わりメニューから「本カツオたたき刺」（770円）を選びました。鮮魚は営業開始前に「はまかに」から届けてもらっているそうです。ほかに「ブリ塩たたき」「薬味たっぷりアジたたき刺」（各880円）もメニューにありました。

本カツオは長崎産。肉厚の切り身にまずはニンニクとミョウガを乗せ、藻塩をつけて、ひと口で頬張りました。カツオのさっぱりした甘みに、薬味のパンチが交わっておいしさ増し増しに。太田さんお手製の煮切り醤油でも食べてみましたが、これまたおいしさに深みを与えてくれました。

次にいただいた料理は「ジュジュワ～A5ランクの名物にしたいメンチカツ」（550円）です。ゴルフボールより2回りほど大きいサイズでしょうか？ 愛らしいヴィジュアルですが、その実とてもパワフル。なんと宮崎黒毛和牛、それもA5ランクが使われています。
「脂っぽくならないように」と赤身肉を使っていて、その凝縮された肉の旨味にほんのりした玉ねぎの甘みとトマトの酸味が合わさって、まろやかかつリッチな味わいです。すだちをかけると一気に和に寄り添う味になり、日本酒にもよく合います。

ここで2杯目に移ります。嬉しいことに焼酎の前割りがありました（200cc・715円）。先に水で割った焼酎を冷蔵庫で冷やしたものを出してくるので、氷で味が薄まることなく最後まで均一の味を楽しめます。さすが、呑兵衛の気持ちをよくわかってらっしゃる。冬場は、前割りの燗付けも出すそうです。

そして最後に「糸島太もずくと季節のおつまみスープ」（880円）を頼みました。丁寧にとった和だしのスープで、ひと口目から身体に優しく染み渡ります。

糸島太もずくは初めて食べましたが、なんでも糸島の福吉海岸で海女さんたちが手摘みした天然もずくだそう。その名の通り太めのもずくで、ツルんとした粘りと強いもっちり感に驚きます。締めにもいいけど、いい感じに塩味もあり確かにおつまみにもなります。また、山芋入りの鶏肉団子はふわっふわでとろけるよう。トマトとオクラのさっぱり感、花山椒のピリッとした風味もお見事です。

どの料理も丁寧でおいしく、器使いも素晴らしく、ここで太田さんからもらう感動は「食堂えぶりお」時代から変わらないまま。ですが大きな違いは、その手頃なお値段です。「立ち飲み屋という業態を考えると、高級食材ではなく日常的な食材を使うのがごく自然。食材と食材を重ねたり、調理の工夫を重ねながら、満足いただける料理を提供できればと思っています」と太田さん。この「重ねる料理」の発想から、何層にもペーストを重ねる「モンブラン」につながったそうです。

太田さんの味を手頃な価格で気軽に食べられるとあって「えぶりお」からのファンが頻繁に訪れることもあれば、太田さんの味をここで知って魅了された新規の常連もすでにたくさんいる模様。でもそれも想定内で納得済みです。予約はとってないので、週末は特にカウンター争奪戦になりそうですが、あの味をこの価格で食べられるのなら……前のめりで争奪戦に挑みます！

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