PageTopButton

移転のため今年の夏で一旦閉店する老舗焼肉店「三馬力+1/2」

UMAGA

2年前に「三馬力+1/2」の2代目と出会った話

「万太郎の喫茶と定食ノスタルジア」という連載ですが、今回も「ノスタルジア」中心のお話です。

実は、2年前に約40年ぶりに早良区飯倉にある老舗焼肉店「三馬力+1/2」に行ったんですよ。というのも、ちょっとした出会いがありまして、、、。今回はそのことを。

事の発端は2年前、僕がお昼に初めて行ったお店でたまたまカウンター席の隣になった40代後半のご夫婦が声をかけて来られたんです。「そのカメラ、僕も持ってます・・・」と。それからカメラの話で盛り上がり。ご夫婦はここの店主の友人のようでしたが、その場はそれだけでお互いの素性も分からず別れたのでした。

そして4日後の日曜日、天神にあるカレー店の休日を借りて観葉植物店が主催の展示販売会があったんです。僕がそこに顔を出して2階でダラダラしていたら、階段を上がってきた一人の男性が僕を見るなり「あっ~~!!!!この前の!!!」と。
そしてその後をついて上がってきた奥様。それを見た僕も「お~~~~!!!この前のランチの時の?!」と。

僕はこのカレー店には何十回と来ているんだけど、ご夫婦は初めて来た場所だったらしい。たまたま友達である観葉植物店家族に誘われて観に来たのだとういうではありませんか。
「先日のランチの後、もっとお話ししたかったので、ちゃんと連絡先を聞いてとけば良かったね!!と嫁さんと話してたんですよ!!」と男性。その偶然にみんなでびっくり。

sanbariki 偶然2回続けて会ったご夫婦

てな話から、お互い自己紹介を始めたのでした。ご夫婦はどうみてもサラリーマンの雰囲気を全く感じなかったので「お仕事は何をされてるですか?」と聞いてみると「焼肉屋をしてます」とのこと。

ーほー、焼肉店ですか。どこで??

「早良区の飯倉です」

飯倉と聞いて、ある焼肉店が頭に浮かんだ僕は慌てて聞いてみる。

ーえ??飯倉???なんというお店ですか?

「『三馬力+1/2』って言います」

ーえーーーーーーーー!!!!!三馬力???!!!若い時に何回も行ってましたよ。もう何十年も行ってないけど、すごく記憶に残ってるんです。ということは2代目さん??

「マジですか?そうです、その店主の息子です」

ー僕は22歳で博多区東比恵の会社に就職したんだけど、飯倉近くに住んでいる上司がいて『三馬力』がお気に入りだったんですよ。仕事終わって会社のみんなで何回も焼肉食べに行ってましたよ。懐かしいなぁ。

「そうでしたか!!その頃、僕は小学生か中学生ですね」

ー夏でもエアコンがなくて、排煙設備もなくて煙モクモクでしたよね!!お店の方がお客さんにウチワを配ってくれるんだけど、それで自分を煽ぎながら汗ダラダラで食べてたっけ。スーツとか焼肉臭くなるから車の中に脱いできてたもんなぁ。

「今もそのままですよ(笑)」

ー今でもエアコンなしですか?面白過ぎる(笑)

「はい、無いです(笑)。お客さんも大変ですが、働くのも大変です(笑)」

ーところで先代のお父さんはどうされてます?あの頃は元気なお兄さんだった記憶がありますが・・・。

「糸島の実家を改築してそちらでまだ元気に焼肉屋をやってますよ。もう70歳過ぎてますけどね」

ーそうでしたか、良かったです。とにかく、今度飯倉に食べに行きますよ!!

「是非是非!!ピシャリ準備して待ってますよ!!」

それが老舗焼肉店「三馬力+1/2」の2代目楢崎洋介さんご夫妻との出会いでした。

sanbaliki

40年ぶりに行った「三馬力+1/2」

そんな感じで、2023年5月、約40年ぶりとなる「三馬力+1/2」へ行ってきました。お店は確かに昔と変わらずエアコンは無し。幸いにも季節的に暑くはなかったけど煙はモクモクで昔のまま。逆にそれがまた懐かしかったですね。

それでも店内はボロボロにはなってなくて綺麗に保たれているのは手入れの良さでしょう。周りを見渡すと家族連れやカップルや仲間たちと焼肉を楽しむお客さんで大賑わい。その風景も昔と変わらず。なんか嬉しくなりました。

ということで、恒例によりまして「三馬力+1/2」の歴史からおさらいしましょう。

―創業はいつ頃でした?

「創業は1972年11月、現在の場所から数10m北側あったんですよ。元々遠縁にあたる人が春日市で経営していた『たつみ屋』(後に「三馬力」に店名変更)の2号店として父が店長になってオープンしたそうです」

sanbaliki 開業時の「三馬力」店舗前と先代時代のお客様(お店より提供)

―その後、現在の場所に移転されたってことですか?

「そうです。1982年に入居していた建物が取り壊しになったので、現在の場所に移転し、それと同時に父が独立してオーナーになったそうです。本店に負けないようにということで、店名に『+1/2』と付けたらしいです。取材にちゃんと答えるために母親にピシャリ聞いてきましたよ(笑)」

―ありがとうございます(笑) じゃあ、その3年後くらいに僕はここに来てたんですね。当時からサーファーとか海のイメージがあったんですよね。

「父親が最初のうちは焼肉屋の店長をしながら、『アメリカンマーケット』というサーフショップも西公園あたりで経営していたんですよ。その関係でここにもサーファーが出入りしてましたね。『サーファーガール』で有名なSGカンパニーの藤社長さんも父の友人だったのでよく来られてました」

なるほど、サーファーたちが集まるんだったら、エアコンは不要でしたね。納得です(笑)

sanbaliki

2代目店主となった洋介さん

ー洋介さんが「三馬力+1/2」を継いだのはいつだったんでしょうか?

「2015年10月、父が実家の祖母の面倒を看るということで糸島に帰ることになり、僕が40歳で継ぐことになりました」

―やはり「三馬力+1/2」を継ぐことは小さな頃から決めていたんですか?

「学生の頃から店を手伝っていたので、なんとなくそうなるだろうなとは思ってました」

―それまではどこで仕事されてたんですか?

「タイ料理屋で3年、居酒屋で6年、そして博多区奈良屋町にある『松坂屋』で焼肉の勉強をしました。その後『三馬力』に戻って3ケ月間、父と一緒に働いて引継ぎをしました」

―お父様から引き継いで10年経ったんですね。やっぱり今でも昔からの常連客のみなさんが多いですか?

「もちろん先代からのお客様もたくさん来てもらってますが、コロナ禍で年配の方がどうしても外出を控えられるようになったので、それ以降は逆に若いサラリーマンの方や学生さんたちがぐっと増えましたね」

確かに最近何回来ても20代~30代の若者のお客さんが多かったですね。洋介さんがとっても明るく元気よく笑顔で接客してくれるので若い人も気軽に楽しめるんでしょう。さらに、リーズナブルなお値段で美味しいときたら、もう最高でしょうね。

「三馬力+1/2」の焼肉

肉の仕入れ元は地元飯倉で創業60年以上になる老舗精肉店「明治屋食肉有限会社」。九州産和牛を中心とした精肉店で直営の焼肉店も経営する会社なので安心。洋介さんも「ピシャリとした肉を出してくれます」と言い切るほど親子2代にわたって信頼関係を築いているようです。

では、どんな肉が出されるのでしょうか。まずは予約客にはお茶碗に入った生ビール(またはウーロン茶)が一杯サービスされます。当日でも良いので是非電話予約されるのがおススメ。

sanbaliki

そのあとにどうしても食べてもらいたい名物は三馬力ステーキですね。ドーンと持って来られた一枚もののステーキ肉を自分で焼いて、ある程度焼けたら一回厨房に引いてもらってカットして皿に盛りつけて出してくれるスタイルです。脂が少な目なのにとにかく柔らかくて最高。のっけから白ご飯が欲しくなります。

sanbaliki sanbaliki 三馬力ステーキ2,900円

さらに新鮮できれいに処理された肉のお皿が続く。まずは塩タン。厚過ぎず薄過ぎずの絶妙の厚さの塩タン。歯応えとタン独特の味のバランスが最高。

sanbaliki 塩タン1,750円

他にも人気メニューをいくつかご紹介します。

sanbaliki サガリ1,700円

sanbaliki かしわ750円

sanbaliki カルビ1,350円、ホルモン950円

sanbaliki 三馬力風辛みそ生野菜450円

sanbaliki 横山商店のキムチがまたまたご飯に合う。辛み、甘み、酸味の塩梅が最高。

sanbaliki テールスープ450円

sanbakili デザートの黄な粉アイスは必須ですね。

今年秋までに移転することが決定

そんな「三馬力+1/2」だが、現在入居しているビルが老朽化のために建て直しが決まっているそうです。この良い感じにノスタルジックな歴史ある店舗が無くなるのは残念でたまらないですね。そんな想いの常連客さんはとても多いことでしょう。

―移転先は見つかりました?

「今年の秋までに退去しなければいけないんで去年からずっと探してるんですけどね、まだ見つからないんです。やっぱり地元のお客さんが多いので飯倉で店を構えたいんですが・・・」

―近くが良いですよね。新店舗はどんな店にしたいですか?

「僕もまだ50歳ですからね、あと20年は頑張らないかんと思うんですけど、次の世代でも使えるような少しはお洒落な店作りをしたいと思ってます。焼肉屋としてだけでなく、お客さんや仲間たちと集まっていろんなイベントや企画ができるような空間を作りたいと思ってますよ。もちろん、今度はエアコンもピシャリと付けますよ(笑)」

sanbaliki

―後継ぎとしての3代目の予定はいかがでしょうか?

「現在大学の長男がいるんですが、飲食業には興味があるみたいですが、ただ本人がやりたいと思わないとやれる仕事ではないので、本人の気持ちに任せてます。とりあえず今は珈琲に興味があるみたいですけどね(笑)。本人がやりたいと言ってきた時はタレのレシピをピシャリと教えますよ。今は僕と母親しか作り方を知らない秘伝のタレなので」

sanbaliki 左:洋介さん、右:長男のタイキくん

サーファー家族の楢崎家。今でも時々糸島の海で先代含めて親子孫の3代そろってサーフィンをすることもあるらしい。日頃から本当に仲良し家族なんですよね。50年以上続いている老舗焼肉店として、これからも時代の波に乗って3代目、4代目へと続いて欲しいものですね。

今年が最後になることが確実となった“エアコンの無い三馬力での熱く暑い夏の焼肉”。とりあえず現在の店舗があるうちに懐かしい人は行ってみてはいかがでしょうか。僕も思いっきり汗をかく気で真夏に食べに行ってみようと思います。

店舗名:三馬力+1/2
ジャンル:焼肉・ホルモン焼き
住所:福岡市早良区飯倉5-14-51
電話番号:092-863-2557
営業時間:18:00~23:00
定休日:水
席数:カウンター6席、テーブル4席、掘りごたつ16席、座敷12席
メニュー:三馬力ステーキ2900円、上ロース1,700円、サガリ1,700円、カルビ1,350円、塩タン1,750円、かしわ750円、ホルモン950円、三馬力風辛みそ生野菜450円、キムチ450円、クッパー800円、テールスープ450円

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

この記事を書いたひと

UMAGA

homePagefacebookyoutubexinstagram

魅力的な福岡の食文化をもっと楽しんでいただくためのバイブルとして、厳選した信頼性のある情報を毎日更新中。