高級レストランも良いけれど、本格派の味を自由に気ままに……というビストロが僕は大好きです。親密だけど、くだけ過ぎない格式を持つ温度感がちょうど良いんですよね。そんな僕の最近の注目店は「okashiki」。2025年9月、名店出身のシェフが舞鶴に開いたニューカマーです。
静かな通りに明かりを灯す「okashiki」は、緑のドアと白い壁が目印。案外ビストロが少ない地区だけに、「待ってました!」という周辺住民の方も多いのでは?
その店内は、一面が温かいオレンジ色に包まれていました。厨房との距離が近いカウンター席も含め、「これぞビストロ」な趣が好印象。僕と波長がピタリと合うのか、初訪問とは思えぬ“肌に馴染む感じ”が気持ちよく、ついつい頬が緩みます。
「我が家に友達を招く感じの店にしたくて」と、人好きのする笑顔で迎えてくれたのはオーナーシェフの若松隆士さん。名店「ラ・ターブル・ド・プロヴァンス」をはじめ、幾多の店で腕を磨いた48歳のフレンチ職人です。30代の頃は施工管理技士という意外なキャリアも持っており、ここの設計も自ら手がけたそうですよ。
手仕事のぬくもりが残る店内を見渡すと、壁際のレコード棚がひときわ目を引きました。その数なんと6,000枚超! ジャンルもロックから民族音楽まで幅広く、ここで音楽談義やレコード談義に花を咲かすマニアも多いでしょう。
奥の方にはDJブースもあり、「そのうちアダルトな音楽イベントをやるつもりです」と(実は料理歴よりDJ歴の方が長い)若松さん。他にも友人の手がけたクラフトや絵画などが飾られ、店主の人柄や感性がフワリと伝わってきました。
さて、メニューの方もビストロらしく、主役は当然アラカルト。九州産食材を多用した料理名が、2枚のメニューにびっしり手書きされています。
定番「前菜の盛り合わせ」(1人前2,600円~)はその一つ。手数をかけた料理が8品も乗り、この一皿で満足できそうな充実ぶりです。実際、これとグラスワイン2~3杯でさらりと帰る常連もいるのだそう。
八角で炊いたタコ+「古野農園」の2年熟成味噌を使った柚子味噌。ヤリイカの(ジェノベーゼならぬ)紫蘇ベーゼ。4種の部位で仕込んだ鶏のテリーヌ+「成清海苔店」一番詰みの海苔等々、この夜も憎いばかりのラインアップです。なお、予約すればコース(12,000円~)も作ってくれますよ。
ワインといえば、ここのリストは9割がナチュールです。主に綺麗な味の銘柄を選んでおり、特に若松さん好みのロゼとオレンジワインは100種以上。これって市内でも屈指の品揃えかもしれません。
澄んだキレを持つワインの味は、「エゾ鹿もも肉のステーキ」(2,800円)とも相性抜群。えぐみのない赤身のうまさを、スパイシーな胡椒ソースがいっそう引き立てます。上質な肉の証であるリッチな余韻も感嘆ものでした。
一般的に重たいイメージのフレンチですが、こちらの料理は一皿ごとに食欲が増すような軽さも魅力。鰹出汁や昆布出汁を使ったり、酸味や香りをうまく生かすなどして“抜け感”を出すのが秘訣だと言います。「ボリュームもできる限り調整しますので、おひとり様でも遠慮なくお越しください」と頼もしい一言も添えてくれました。
そして、この夜のシメはパスタに決定。メニューには「オイル、トマト、クリーム」とベースが書かれ、当日の具材で内容を決めるスタイルです。早速オイルベースで注文すると、糸島産ケールと春菊ピューレを和えたパスタが登場。青々とした香りのソースと、トッピングされた子持ち鮎のコンフィの香ばしさが絡み合い、鮮やかな食味のコントラストを描きます。あぁ、これは逸品! 「何が出てもうまい!」と賛辞を惜しまぬパスタファンが多いのも納得です。
王道から少しはみだし、和のエッセンスも用いて大らかな世界観を生む「okashiki」の料理。時に繊細、時に大胆なその美味しさは今後も幅広い層を魅了しそうです。「様々な文化圏の人々が集まり、そこから新たな文化が生まれる──ここがそんな場所になれば嬉しいですね」と若松さん。なるほど、それで店名の由来が「いとをかし」。扉を開ければ、そこには今宵もいろんな「をかし」が待っていることでしょう。
ジャンル:フランス料理
住所:福岡市中央区舞鶴2-7-1 ライオンズマンション舞鶴第3-1F
電話番号:092-401-6778
営業時間:18:00~24:00
定休日:火曜、隔週水曜
席数:カウンター12席
個室:なし
メニュー:前菜の盛り合わせ2,600円~(1人前)、田舎風パテ1,400円、本日のポタージュ1,200円、和牛ホホ肉の赤ワイン煮こみ2,800円、イイダコのトマト煮こみ1,600円、仔羊のグリエ2,400円、パスタ2,000円~、グラスワイン各1,200円~
URL:http://www.instagram.com/okashiki_fukuoka
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