大分県は「日本一のおんせん県」。そして「豊の国」と呼ばれるほどに、自然の恵みに満ちた土地です。海・山・里が育む食材やお酒、食文化が、この地の“味力(みりょく)”を豊かにしています。
「OITA TERROIR」の協力人。左から「Goh」福山シェフ、「GohGan」安藤シェフ、「Ristorante fanfare」梶原シェフ、「La Verveine」渡辺シェフ、「ENOWA」タシシェフ
UMAGAでは、先月2月11日に開催されたディナーイベント「OITA TERROIR GohGan × fanfare」のレポートを軸に、大分県産食材やその産地、お酒の魅力を全3回にわたってお届け。最終回は、大分県産食材の“味力”と産地を深掘りします。
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カボスが磨く白身の気品〈かぼすヒラメ〉
「OITA TERROIR」プロジェクトは、4人のシェフが大分県内の産地をめぐる食材探しの旅から始まりました。最初に向かったのは大分県の南東端・佐伯市。豊後水道に面し、入り組んだリアス式海岸の恩恵を受けた “九州屈指の水産のまち”です。
「ヒラメ小屋」と呼ばれる天井の低い平屋造りの養殖場。屋内の水槽に新鮮な海水を常に注ぎ込み、温度や状態管理を徹底
まずご紹介するのは、大分県ならではのブランド魚〈かぼすヒラメ〉。大分県が日本一の生産量を誇る養殖ヒラメに、同じく日本一の生産量であるカボスを餌として与え育てた逸品です。柑橘の力によって魚特有の臭みが抑えられ、身質は一層きめ細やかに。視察では、生産者の一員として〈かぼすヒラメ〉のおいしさを追求する、佐伯市蒲江の森岡道彦さんを訪ねました。
〈かぼすヒラメ〉の白身を、「GohGan」安藤シェフはアミューズの一品(写真左手前)に仕上げました。活締めした透き通るような身は脂のりがちょうど良く、あと味は軽やか。大分県産カボスと塩昆布を合わせたピュレ、炭火で炙った葉の花とそのピュレが、おいしさを引き立てます。
若い力が弾ける〈若武者ハマチ〉
平均年齢30歳という「浪井丸天水産」を引っ張る、3代目の浪井大喜さん(左下)。昨年の「令和7年度農林水産祭」では、最高賞である「天皇杯」を受賞!
さらに、佐伯市蒲江はブリの養殖も盛ん。それは豊後水道沖合でブリの稚魚「モジャコ」を獲るところからはじまります。
元気なモジャコにビール酵母を加えた栄養価の高いエサを与え、丹精に育てられたブリの若魚が「浪井丸天水産」の〈若武者ハマチ〉。独自の締め方でしっかりと血抜きし仕立てているため、血合いの変色も遅く、香りも爽やか。締めたてはもちろん、熟成させてもさらに旨味が増しておいしいんですよ。
イベントでは〈若武者ハマチ〉とタシシェフの農園「ENOWA Farm」で採れた有機栽培の根菜の華麗なマリアージュが実現しました。〈若武者ハマチ〉は脂にくどさがなく、新鮮な歯触りが格別。「スワン」「あやめ雪」「桃寿(とうじゅ)」といったフレッシュなカブが調和します。
別格の旨味と香り〈うまみだけ〉
伐採したクヌギの木に椎茸の種駒を打ち、「ほだ場」に移して栽培。準備から収穫まで、2年もの年月を要する
林業も盛んな大分県は、乾しいたけの生産量だって質・量ともに日本一です。なかでも、農薬や肥料を使わず、自然の力で育つしいたけは安心のおいしさ。収穫を終えた原木はまた土に返るという、栽培方法もエコな食材なんです。豊後大野市の冷涼な山間地で栽培に取り組む、熟練の生産者・小野晋作さんの元を訪ねました。
〈うまみだけ〉は、2020年に誕生した大分県産乾しいたけのブランド。「どんこ」「こうしん」といった形状ではなく、品種の持つ「うまみ」「香り」「歯ごたえ」といった特徴に着目し、指定8種で展開しています。歯応え抜群の〈にく丸〉、香り高く芳醇な〈193〉など、料理や好みに合わせて選べるのも良いですね。それぞれの特徴は分かりやすくチャート分けされているので、〈うまみだけ〉の公式HPを参考にどうぞ。
「fanfare」梶原シェフが選んだ〈うまみだけ〉は、肉厚で旨味も濃い〈115〉。軸の部分はラビオリの中に詰め、傘の部分はペーストやピュレに。さらには、低温ローストした〈115〉を仕上げに削るという妙技も! これが本当にとんでもなく良い香りと旨味で、私も真似してみたいと思いました。
大分の米が育む〈豊後・米仕上牛〉
さぁ、まだまだいきますよ! 大分県は西日本一の生産量を誇る白ねぎの産地で、豊後高田市には見渡す限りの白ねぎ畑が。そして、その白ねぎ畑に囲まれて建つのが「真玉キャトルファーム」の牛舎。ここで、大分県産の飼料用米を食べてのびのびと育てられているのが〈豊後・米仕上牛〉です。
風通しがよく、ゆったりとした牛舎内。飼料用米は、地元の米農家と連携し、耕作放棄地等も活用して栽培
大分のブランド牛といえば黒毛和種の「豊後牛」や「おおいた和牛」が有名ですが、近年人気が高まっている交雑種の〈豊後・米仕上牛〉も負けない魅力を放ちます。交雑種とは、濃厚な霜降りの黒毛和牛種と、ヘルシーな赤身のホルスタイン種のハーフ。両方のおいしさを併せ持ち、コストパフォーマンスにも優れた“いいとこどり”の牛なのです。
安心・安全な飼料用米を食べた健康的な牛の堆肥は、飼料用米の水田や白ねぎ畑に還元。大分の美しい田園風景を守る循環型農業、資源循環にも繋がっているそうで、ますます応援したくなりますね。
しっとり焼き上げられた〈豊後・米仕上牛〉のサーロインは美しいロゼ色。旨味と脂の甘味は濃いのに、サラリとしたあと口がヤミツキに。〈豊後・米仕上牛〉の肉片やスジで作られたメンチカツ、1回目の記事でご紹介した日田市大山町産の〈エノキ茸〉も主役を引き立ていました。
美しい湧水の恩恵〈大山クレソン〉
そして、大山町がある日田市は「水が磨く郷=水郷(すいきょう)」と呼ばれるほど、豊富な水資源を誇る土地。大山町は〈エノキ茸〉だけでなく、梅や栗、山から湧き出る美しい水を利用したハーブ類〈大山クレソン〉などの栽培にも力を入れています。
大山町農協のクレソン畑に流れ込む水は、そのまま飲めるほど澄み切って清らか。ハウスに流水を引いてクレソンを育てているのは、大分県内で大山町だけだそうです。持ち味である爽やかな辛味と清涼感のある心地よい苦味を、「fanfare」梶原シェフによる〈大山クレソン〉のジェラートで楽しみました。
じっくり熟成、蜜のごちそう〈甘太くん〉
「JAおおいた 野津選果場」で、〈甘太くん〉のおいしさを堪能
最後は、臼杵市や豊後大野市などで栽培されている高糖度かんしょ〈甘太くん〉。元々甘い県産の「紅はるか」を収穫後40日以上冷暗所で貯蔵し、さらに甘味を高めた大分県独自のブランドサツマイモです。焼き芋にするとしっとり、ツヤツヤの蜜がにじみ出します。
天然の豊かな甘味の虜に
「GohGan」安藤シェフは、〈甘太くん〉尽くしのモンブランを仕上げました。軸となるのは、100度で6時間かけて石焼き芋にし、ラム酒で香り付けたペースト。中にはサッと炙って砂糖をまぶした〈甘太くん〉、上には剥いた皮をローストしたチップスを。ねっとり濃密な甘味、香ばしさ、食感まで〈甘太くん〉の魅力が存分に表現されていました。
3回に渡りお届けした記事はこれで最終回。しかし、「OITA TERROIR」プロジェクトはまだまだ続いていきます。大分県産食材やお酒を楽しむことはもちろん、ぜひ現地にも出かけてみてくださいね。大分県には、土地や季節のそれぞれに “味力”満点のおいしいものがたくさん待っていますから。
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