皆さん、啜っていますか? 私、ラーメンライター上村がお送りする連載「福岡ラーメン愛が止まらない」。今回は、西鉄井尻駅の改札を出てから(僕の足で)“96歩”の駅至近「福岡太麺 NO RAMEN」を紹介します。
線路沿いの細路地。訪れたこの日は平日でしたが、当たり前のように順番待ちの列を作っていた「福岡太麺 NO RAMEN」。並んだ最後尾から客層を見てみると若い男子だけでなく、女性グループがとにかく多いという印象を受けます。
今回改めて同店を紹介しようと思ったのは、この様子も示す通り「女性にも愛されるG(ガッツリ)系」の真髄をしっかりとお伝えしたかったから。掲げられた“福岡太麺”というフレーズは、いわゆる二郎系の醍醐味“ボリューミー&ジャンキー”を連想させるかもしれません。それらは、おおむね正解。しかしながら単なる男飯、パワー飯という魅力だけでなく、女性目線のキメの細かいこだわり、“洗練”も宿っていることが「福岡太麺NO RAMEN」の大きな特徴です。
二郎系でも、横浜家系でもない、独自の福岡太麺“醤油”ラーメン
「福岡太麺NO RAMEN」は2024年、それまであった「はや川2nd」の場所を引き継ぎオープンしました。店主は山田翔己(やまだ・しょうき)、里穂(りほ)さん夫婦。翔己さんは元システムエンジニア、里穂さんは看護師からラーメン店経営への転身という、人生における大きなチャレンジ。
「僕がサラリーマン時代、母が病気で47歳という若さで亡くなってしまったんです。それを機に日々をより大切に生きること。一度きりの人生は本当にやりたいことに没頭するべきだと強く思うようになりました。では自分の好きとは何か? 真っ先に思い浮かんだのがラーメンの世界だったんです」。
北九州市出身の翔己さんは東京で過ごした学生時代、ラーメンにおける未知との遭遇「ラーメン二郎」にどハマリした筋金入りのジロリアンでした。システムエンジニアへの道を順調に進みながらも、太麺のラーメンに特化した業態を出すことにおもしろみを感じていたと言います。母の死をきっかけに、胸の奥底に漠然とあったラーメン店開業への熱が一気にわき上がってきた翔己さん。太麺のつけ麺で人気を博す「麺や 兼虎」の門を叩きました。
「独立開業までの明確なビジョンをもち、2020年から約3年間修業させていただきました。『兼虎』の益成兼太郎オーナーと、当時上司だった『おいげん』の津曲剛さんが僕の師匠。一本立ちすることにも背中を押してくれましたし、今でも気にかけてくださっています。お二人には本当に感謝していますね」と翔己さん。
ここで声を大に言いたいのは、「福岡太麺 NO RAMEN」は二郎系とも、修業先とも異なる“太麺の醤油ラーメン”だということです。翔己さんが学生時代から恋い焦がれている“太麺”という軸は決してブラさずに、ビジュアルも含めこだわり抜いた洗練のガッツリラーメン&スープOFF。「二郎が好きすぎて」と同系のラーメンを出している店主は九州にもたくさんいますが、入口は同じでも全く異なる味わいへと昇華させたことが翔己さんの凄みだと思います。「素材の特長を分析して設計を考える、構築していくという意味では、システムエンジニアだった経験はラーメン作りにも生きていると思います。妻の味覚や視点も取り入れることでより見た目もおいしそうで、老若男女に愛される福岡太麺ラーメンが完成しました。いわば僕の夢に“巻き込まれて”ラーメン店をやることになった妻にも感謝の気持ちでいっぱいです」。
一方で、里穂さんは「突然、脱サラしてラーメン店を始めたいと聞いた時は本当にびっくりしましたが、止めはしませんでした。一度きりの人生ですし、そもそも夫はいったん口にしたら曲げない人ですから」と笑いながら話します。あ・うんの呼吸で厨房、ホールを切り盛りするおしどり夫婦。さまざまなラーメンファンと話をするのが楽しみになったと口を揃えます。
若い男性だけでなく、老若男女に開かれたガッツリ太麺ラーメンワールド
この日オーダーした「特製ラーメン」(1,500円)は、焼印を施し、割るとリキッドな黄身があふれ出す煮卵丸1個、低温調理のレアチャーシュー、燻製をかけた刻みチャーシュー、和風だしを染み込ませた極太メンマなど、具材ひとつひとつに丁寧な手仕事を感じます。心地よく鼻腔をくすぐる“燻”の香りがいいですね。
そして、麺は昨今注目株の山口県「木嶋製麺所」の太麺。もとの形状はストレートですが、翔己さんが1玉ずつ手揉みをかけて緩やかなウェーブを出しています。同製麺所の生地「朧月(おぼろづき)」シリーズの名作。ワシワシではなく、みずみずしいツルシコ感が際立ち、チュルチュルッ!と口唇を心地よくすべっていくような滑らかさが持ち味です。
これら豪華な具材や存在感のある太麺と合わせるのは肉系清湯スープ。この味わいが濃厚ではなく“淡い醤油スープ”であることも肝であると思っています。ベースは豚骨、醤油ダレの中に魚介乾物も入っていますがあくまで主張しすぎない上品繊細系。スープに余白があるからこそ、個性的な麺や具をうまく包みこんでいるのだと実感できます。
さらには細かい視点ですが、外の浄水器を見ても分かるようにπ(パイ)ウォーターを使っていたり、卓上のニンニクも風味や粒感にこだわって店内で都度クラッシュしたものを詰めています。
麺メニューは辛いver.もあるラーメン、油そば、煮干し系の汁なし「ニボぺぺ」など。
ラーメンを待っている間に厨房仕事を見たり、温かい接客にふれることでも「あ~、この店は間違いないな」と感じるでしょう。
繰り返しますが、西鉄井尻駅の改札を出てから(僕の足で)“96歩”。
「福岡太麺NO RAMEN」は新たなラーメン観を広げてくれる名店です。
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