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“THE 鮨”という言葉が似合う、久留米の「鮨 よし田」

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久留米にある「鮨 よし田」は、“THE 鮨”という言葉が似合う店だ。
奇をてらった演出や過度な華やかさはないが、素材、シャリ、所作、そのすべてが研ぎ澄まされている。そのシンプルさこそが完成度の高さを物語っており、まさに“THE 鮨”と呼ぶにふさわしい一軒だ。

「ミシュランガイド福岡・佐賀・長崎 2019」で一つ星を獲得したほか、食べログの「寿司 WEST 百名店2021」に選出、「The Tabelog Award Bronze」も複数回受賞している。

鮨よし田外観

場所は西鉄久留米駅から徒歩約10分。表には看板も暖簾も掲げていない。

鮨よし田内観

店内はカウンター9席のみで、木目を基調とした簡素で清潔感のある空間。天井は茶室や書院造りに見られる網代天井(あじろてんじょう)で、凛とした空気が流れている。

鮨よし田の吉田さん(左)

店主の吉田健司さんは地元の学校を卒業後、さまざまな職業を経験。いとこの影響で28歳から寿司の道に入り、約8年の修業を経て独立。2006年6月6日に「鮨 よし田」をオープンした。
当初は個室も備えていたが、2015年の改装を機に、現在のカウンターのみの構成へと転換。板場には松のフローリングを使用し、夏は裸足、冬は五本指ソックスという独自のスタイルも印象的だ。

また吉田さんは茶道の心得もあり、井伊直弼(いいなおすけ)の説く茶道哲学に深く感銘を受けているという。「余剰残心」や「独座観念」といった精神を大切にしており、その姿勢は店の空気感や一貫一貫の所作にも自然と表れている。

鮨よし田の山葵

提供はコースのみで、36,300円~。仕入れにより変動はあるが、つまみ6~7品、握り約11貫に巻き物と玉子という構成だ。

料理は、エイの頭の皮で山葵をすりおろすことから始まる。
最高級の真妻(まづま)の3~4年物を使っており、粘りと香りの力強さが際立つ。

鮨よし田 3点盛り

最初のつまみは3点盛り。この日は、あん肝、たこ、合馬(おうま)のたけのこ。
あん肝は裏ごしして固めたもので、なめらかな口当たりとチーズのようなコクにブラックペッパーが効く。
玄海産のたこは1時間かけて丁寧にぬめりを取り、やわらかさと程よい弾力を両立。
合馬のたけのこはカツオと昆布の出汁で炊かれ、えぐみがなく、長崎産の菜の花と酢みそで合わせている。さらに玄海産のあわびは2時間酒蒸しにし、やわらかさの中に力強い食感を残す。

ほたるいか

富山産のほたるいかは軽く蒸すことで海の香りを引き出し、それを叩いてシャリと和える。赤酢の酸が効いた一皿は、酒との相性も良い。

鮨よし田 あおりいか握り

握りはシンプルながら、緻密に計算されている。
シャリには十年甕で熟成させた赤酢を使用し、やや硬めに炊き上げることで、酸味・塩味・甘みのバランスを際立たせている。口の中でハラリとほどける感覚が心地よい。酢は東京・横井醸造の「與兵衛」と純粕酢をブレンドしているようだ。

本手返しで握る長崎産のあおりいかは、ねっとりとした食感が魅力。

鮨よし田 ムラサキウニ

山口県産のムラサキウニは、やわらかく、ふわりとほどける上品な味わいで、夏場に重宝される。

鮨よし田 マグロ

福島県産のマグロは、真妻と赤酢のシャリと合わさることで、赤身とトロのコントラストがより際立つ。
シャリはやや小ぶりだが、量はリクエスト可能だ。

鮨よし田 純米酒 DISCOVERY

酒へのこだわりも深い。
「自分が使っている米で日本酒を造りたい」という思いから、若波酒造や農業のタカダと共に開発したのが「純米酒 DISCOVERY」。ササニシキで仕込まれたこの酒は、鮨に合うというよりも寄り添う存在だ。
ほかにもクラフトビールを用意しており、「鮨よし田オリジナルクラフトビール」から始め、日本酒、そして「純米酒 DISCOVERY」へとつなぐ流れがおすすめ。日本酒は17~18種類を揃え、「十四代」もラインナップされている。

吉田さんの鮨は、強い主張で押すのではなく、素材とシャリ、そして空間が一体となって静かに余韻を残していく。食後にふとその一貫を思い返したくなる、そんな奥行きのある一軒だ。

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