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上野万太郎の「この人がいるからここに行く」 北九州市初の“地域おこし協力隊”の安村嘉能さんが推しまくる「合馬のタケノコ」

合馬のタケノコ掘り

3月初め、天神路地裏にあるカレー店主から「タケノコ掘りに行きませんか?」との連絡。何か面白そうな予感がしたので「行きます」と返事。

詳しく話を聞いてみると単なるタケノコ掘りではないらしい。場所は北九州市小倉南区合馬(おうま)。なになに合馬と言えば日本中のタケノコファンを魅了している名産地ではないか。なぜに合馬でタケノコ掘りか。

そこには一人のキーマンとなる男性、安村嘉能(やすむらよしのぶ)さんがいた。福岡人なのだが去年から北九州市の“地域おこし協力隊”に就任し合馬地区の農業振興などに力を入れているというのだ。

その安村さんは僕も知っている人だ、ということでタケノコ掘り体験だけでなく、しっかりと合馬のタケノコと安村さんの活動を取材したいと思い、カメラ片手にタケノコ掘りに参加したのだった。

集合していざ、タケノコ掘りへ(安村さんは前列の一番左)

“地域おこし協力隊”安村さんと再会

タケノコ掘り当日、現地集合して安村さんと再会して早速聞いてみた。「久しぶりです!!合馬で何をやっておられすのですか?」安村さんは北九州市初の“地域おこし協力隊”という名刺を出して説明してくれた。

安村さん 合馬のタケノコは高級品として、関東や関西への遠隔地を中心に販売されているのですが、近距離という地の利を生かしてもっと福岡の飲食店でも使ってもらえるようなシステムを作りたいと思ったんです。ということで、今日は福岡の元気の良い飲食店関係の方々をご招待して、合馬のタケノコの魅力を知ってもらおうという企画なんです。

― なるほど、それは興味深い。

安村さん 今日は合馬の魅力とタケノコの流通についてしっかり取材してください。

― ありがとうございます。よろしくお願いします。

安村嘉能さんについて

まずは安村さんのご紹介から始めよう。1973年福岡市生まれ。大濠高校特別進学コースから推薦で筑波大学に進学。大学卒業後は、大日本印刷(株)に入社。当時花形であった商品印刷物を扱う部門を希望し、企業の販売促進を行う仕事を担当。朝から深夜まで仕事ずくめでまさに「24時間働けますか?」の時代だったようだ。

さんざん仕事をした後、「楽しいことしか仕事にしたくない」と思うようになり、2007年34歳で独立。レディス向けのアパレルブランド「リバーズオール」を立ち上げた。中央区大名で3階建てのビルを一棟借りしてデザイン、製造、販売を自社で行い全国にファンを持つブランドに育てたという。
その後、アパレル時代にリノベーションして使っていた部屋が大反響になり、見学のための来客が絶えず、週末は内覧会とホームパーティーが続く状態となった。それを受けて2014年からは、人が集まる空間創りへの興味が湧くようになり、なんと内装業へ転身。

「古い建物をもっと古く見せるリノベーション」で不動産利回りの改善を提案。「熱量を表現できる場」として撮影イベントやコスプレスタジオの運営企画をするようになったそうだ。

オシャレな場所に人が集まるだけでなく魅力的なコンテンツの「ハブ(接続拠点)」になることを目指して「花田荘プロジェクト」、「裏六本松プロジェクト」などを実現させた。その頃に安村さんが手がけた高齢者向けの昭和歌謡喫茶が評判となり、現在一緒に仕事をしている北九州市役所の安永氏と知り合うことになったそうだ。


北九州市初の地域おこし協力隊に就任

安村さんと北九州市の関りのスタートは、2024年1月に北九州市で実施された「二地域居住モニターツアー」に参加したことだった。ツアー中に小倉南区で郷土料理の「豆腐汁」を食べて魅力ある食文化を後世に残す仕組みづくりをしたいと思ったという。小倉南区の自然と文化を体験するツアーだったが、都市化する福岡市との違いに興味を持ち、家族を福岡市においたまま移住を決断したそうだ。

そして今までの仕事の経験で得たスキルを役立てることが出来ると思い、同年6月に北九州市が初めて募集する“地域おこし協力隊“に応募。前出の安永氏に熱い思いをぶつけ、10月より活動を始めることになった。最近は、特に合馬地区の名産である合馬のタケノコを中心とした農業振興の企画に注力しているという。

合馬のタケノコとは

では、そんな安村さんに合馬のタケノコについて改めて教えてもらった。

安村さん 合馬のタケノコは江戸時代の末期に鹿児島県から持ち込まれた孟宗竹から始まっているそうです。かつては八幡製鉄所で使用していた竹かご用だったそうですが、昭和30年代から食用としての本格栽培が始まり、昭和60年ころからブランド化が行われました。

― 歴史的にはまだ40年くらいですね。

安村さん そうですね。それまでは高級タケノコと言えば京都産が有名だったので、京都に追いつけ追い越せということで栽培方法や流通方法を工夫し、品質アップとブランド化を推進してきたそうです。現在ではその柔らかさと甘みで京都など全国へ出荷され、関東や関西の老舗料亭や有名飲食店で高い評価を受けて高級品として扱われています。

生産者の小緑さんに指導してもらいながらタケノコ掘りをしながら、商品としての良し悪しの説明を受ける

― 合馬のタケノコと一般的なタケノコの違いは?

安村さん 合馬の竹林は赤土で粘土質の土壌が多くタケノコの育成に向いていると言われています。一般的にタケノコは勝手に生えるものを収穫するのですが、合馬地区では1年を通して山の管理をしています。草刈りや伐竹・焼却・客土・施肥などの作業をして「栽培」しているんです。

― 合馬のタケノコの味の特徴は?

安村さん 柔らかく甘みがあるのが特徴です。一般的なタケノコは地上に半分くらい顔を出しますが、合馬のタケノコは先端も地上に出ていません。日光をほぼ受けないまま赤土の地中から掘り出すために淡い栗毛色をしているのです。だからこそ柔らかく甘いタケノコになるのです。掘りたてのタケノコは梨のような甘みがあります。それは現地でしか味合うことはできませんね。

― 赤土が多いという土壌の特性に加え、生産者の手間暇かけた竹林管理の下でこそ合馬のタケノコが生まれているんですね。出荷時期はいつ頃ですか。

安村さん 3月から5月まで、特に4月が出荷のピークです。4月収穫の品質の良い合馬のタケノコは主に、遠隔地用に高級品として販売されています。

ケノコ掘りの後は、生産者手作りの郷土料理をいただきながら合馬地区の話をヒアリング

合馬のタケノコの流通について

― 収穫されてお客様の元に届くまでの工程も一般的なタケノコとは違うのですか?

安村さん 栽培方法だけでなく収獲・出荷作業についても厳しく品質管理基準が設けられています。そのため生産者も限られます。収穫後に日にちが経てば経つほどえぐみが増します。少しでも味や鮮度を大事にするために、収獲したら「山締め」と言って生産者によって当日に湯掻かれます。さらにその日のうちに出荷するという稀に見るスピーディーな物流体系を組んでいます。そのため、山締めされた合馬のタケノコは遠隔地でも翌日にお客様に届けることが出来るのです。一般的なタケノコは生産者から皮が付いたまま青果市場を経由して小売り店や飲食店に届くのでその鮮度の違いがまるで違うのです。

― 今回、福岡市から有名な飲食店のオーナーたちが集まっていますが、関東や関西などの遠隔地ではなく、同じ福岡県内での販売に目をつけられたのはどんな想いでしょうか。

安村さん こんなに美味しく素晴らしい食材があるのに地元福岡ではあまり提供されていないというのはもったいないと思うんです。さらに関東や関西にくらべて最短なら1時間で納品できるという距離のメリットもありますしね。鮮度だけでなくコストの面でも大きなメリットです。

― これが実現できれば“食都”と呼ばれ日本国内や海外からも美味しい料理を食べに来る人が多い地元福岡から、合馬のタケノコの魅力をもっと発信できることになりますね。

安村さん そうなんです。そして合馬のタケノコのいわゆる高級品と言われるものの割合は出荷量の1割くらいしかないんです。形がちょっと曲がっていたり大きさが小さかったり、皮の部分にちょっと傷があったりするとランクが落とされるのですが、味はまったく変わりません。逆にそういう商品を少しでも地元福岡で使ってもらえるようになれば、産地としても福岡の飲食店としてもウインウインになると思うんです。

当日、タケノコ掘り後に参加者で試食して味や品質や物流について真剣な協議が行われた。まさにシェフたちの仕入れの目利きのアンテナがピン!と立った真剣な話し合いとなった。後日、さっそく等級別の価格表が産地から提出され、4月からの具体的な販売をやってみようという話になったのは楽しみな限りだ。

今後の合馬地区での取り組み

― 最後に安村さんが今後合馬地区でやりたいことを教えてください。

安村さん 合馬のタケノコの生産者は一時期より減って現在は30軒弱になっています。どこも後継者問題を抱えているんです。これをなんとかしたいと思っています。現在僕は合馬農産物直売所が活動拠点としていますが、生産者とのコミュニケーションを第一に考え、彼らが何を望み今後どうしていきたいのかを考えてきました。じっくり合馬での農業の魅力を聞き取り生産者の笑顔を乗り戻すことが出来る直売所になるようにしたいです。

― 今回、僕も直売所に寄らせてもらいましたが、地元の生産者とも触れ合えて自分が出荷した野菜の説明をしてくれ距離感が縮まりますよね。人と農業にふれあいながらもっと合馬地区の自然全体にふれたいと思うようになりますね。

安村さん 合馬のタケノコを起点にして、合馬地区に観光・農泊などアグリツーリズムの「ハブ」を作りたいと思っています。小倉市街地より30分、福岡市からも高速道路で1時間と地理的な可能性もあります。ここはタケノコだけでなくコメの生産としても評価が高いのです。ところが情報発信が不十分なうえに遊びに来ても寄る場所がない、つまり合馬の魅力を体験できる場所が少ないのです。僕は“地域おこし協力隊”の任期中になんとしても「ハブ」を作りたいと思っています。合馬のみなさんと接触する場面が少ない人たちに合馬に来てもらうことによって合馬地区の関係人口を増やしていくこと。魅力的な体験についての情報発信をしていくことにより地元の若者もこの地区での将来的な人生設計に夢を見ることが出来るようになると思います。

安村嘉能さん

― 北九州初の“地域おこし協力隊”としての任期は最長でも3年ということですが、それまでやること盛りだくさんですね。

安村さん 時間も限られていますので、これらのことをやりとげ合馬地区全体のブランド力をアップすることにより、後継者問題や地域の活性化に向けて頑張っていこうと思っています。任期終了後は北九州に本格移住してでも何かしらこの事業に継続的に関わって行きたいと思っています。

“地域おこし協力隊”という制度は2009年にスタートし現在では全国で1,100以上の自治体が導入して7,000人以上の隊員がいるそうだ。若い世代の流入や、新しい視点での課題解決が期待できることがメリットだが、安村さんの場合も、長年の仕事の経験やノウハウを生かして合馬地区のためにその力を注ぎ込んでいる姿は輝いて映った。なにより安村さんと地元の人々との間で築かれた関係性というものが、みんなの笑顔を通して伺い知ることが出来た気がする。安村さんの今後の活躍が楽しみだ。

ということで、合馬のタケノコ掘りイベントお疲れさまでした。企画された安村さん、生産者の小緑さん、北九市役所の安永さん、誘っていただいた「路地裏カレーTIKI」のトシさん、お世話になりました。今回一緒にタケノコ掘りに参加された飲食店は、「Goh」の福山剛さん、炉端焼き「雷橋グループ」の佐竹孝雄さん、「日本料理ながおか」の長岡周吾さん、うどん居酒屋「二◯加屋長介グループ」の玉置康雄さんなど。その他にも当日来られなかった「藁焼みかん」の末安拓郎さんも参加予定。今年の春に合馬のタケノコをお店で食べられることを楽しみにしています。

【データ】
店名: 北九州市初の“地域おこし協力隊”安村嘉能さん
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