電気ビルの真裏の路地に店を構える「筑豊ホルモン ボタ山」。結構な築年数がありそうな雑居ビルの2階というロケーションからも、穴場の酒場感を醸し出しています。
店の前にかかる白いのれんをくぐり、店内に入ってみると天井から各テーブルに伸びた排気ダクト、そして壁に貼られた手書きのおすすめメニュー。これぞ“ザ・大衆焼肉”といった雰囲気にテンションが上がります。
こちらの店のオリジナリティは、福岡市内で唯一「天道ホルモン」が食べられるということ。「天道ホルモン」とは飯塚市の天道地区にあるホルモン専門店のことで、小売りしかしていません。もちろん飯塚の店舗に行けば商品は購入できるのですが、売り切れることがザラで、地元民もわざわざオープン前に並ぶほどの人気ぶりです。
「ボタ山」の店主、江原聡さんは天道地区で生まれ、幼少期から「天道ホルモン」を食べて育ったといいます。
「どうしてもこのホルモンを福岡市内で出したくて、『天道ホルモン』の大将に頼み続けました。幼少期から顔なじみだったのもありますが、2年間行く度にしつくこく頼んでいたら、『仕方なかね』と仕入れさせてもらえることになり、店を開くことができたんです」と江原さんは話します。
なるほど! ということは「ボタ山」は「天道ホルモン」なしにはできなかった店ということ。これは絶対食べないといけませんね!
しかし、ここで焦りは禁物! 最初はホルモンが焼ける間につまめる「名物!ボタ山サラダ」(800円)を注文しました。炭鉱の町・飯塚のシンボル、ボタ山をイメージした山型の見た目がユニーク。中央がキャベツの千切りと梅ひじきを合わせたもの、周りのレタスは巻き野菜、散りばめたハート型のカクテキと、焼肉店らしいサラダで、ホルモンや肉と一緒に食べるのにちょうどいい味付けです。
さて、いよいよ真打ち「天道ホルモン」です。「直腸」(750円)と「小腸」(750円)があり、小腸は文字通り小腸のみ、直腸はシマチョウを中心にテッポウなどさまざまな部位が入っていると教えてくれました。そして「天道ホルモン」の一番の特徴が、牛と豚のホルモンがブレンドされていることです。炭鉱の町として栄えた筑豊では豚ホルモンが最初に食べ始められたといわれており、現在もその食文化が残っているということですね。
江原さんはタレを揉み込む前のホルモンを見せてくれながら、こう話します。
「ホルモンの味わいの良し悪しを決めるのは掃除や脂を取り除くといった下処理です。『天道ホルモン』は丁寧に掃除をしているため臭みがなく、さらにできるだけ脂を取っています。だからしつこくなく、いくらでも食べられるんです。もちろん胃もたれもしづらいですよ」
早速ロースターで焼いてみました。一般的なホルモンの場合、脂がたくさんあるので炎が上がりがちですが、天道ホルモンはそれがありません。焼き進めるほどに身がキュッと引き締まっていき、表面にやや焦げ目が付いてきたら食べごろです。
小腸は身が薄いのですがほどよく脂が付いており、弾力もちょうどいいです。一方、肉厚の直腸はしっかりとした歯ごたえで、噛むほどに旨味が広がります。どちらも豚ホルモンを絶妙な割合でブレンドしているので独特な風味もあり、ビールが欲しくなること請け合いです。
筑豊の食材を使った名物メニューはまだあります。それが、嘉麻市で育てられた赤崎牛です。肥育頭数が少ないことから、ほとんど市場に出回ることはなく、福岡市内の飲食店からの引き合いも多い話題の牛肉。江原さんの後輩が二代目を務めている縁から、「ボタ山」では仕入れることができるそうです。
赤崎牛のメニューは「赤崎牛ミスジ」(2,100円)、「赤崎牛炙りユッケ」(1,500円)などがあり、今回いただいたのは「赤崎牛イチボ」(1,760円)。食べてみると、赤身の旨味がとっても濃い! 脂身が少なく、食べやすいのも良いですね。店特製の焼肉ダレもさらりとしており、さっぱりいただけました。
“入荷次第”と書かれたメニューも気になります。それが「朝引き鶏レバー刺」(750円)です。天道ホルモンとこの鶏レバー刺を目当てに、数日前から電話確認の上、東京から来る常連もいるというから期待が膨らみます。鶏レバーは新鮮なのはもちろんですが、脂肪が多い白レバーに近いものを厳選しているとのこと。食べてみると、とろけるほど柔らかく、甘みが口いっぱいに広がります。ゴマ油に入れた塩を多めに付けて食べると、味が引き締まっていいですね。
物価高騰のあおりを受け、飲食店でも値上がりが続く中、こちらでは2022年5月にドリンクを値下げしたというから驚かされます。江原さんは「せっかくコロナ禍が少しずつ落ち着いてきて、今度は値上がりじゃ、お客様もテンション上がらないでしょ? だからドリンクだけでもギリギリまで値下げすることにしました。財布のことを気にすることなく、楽しくワイワイ酔っ払っていただけたら!」とニッコリ。とにかく、おいしいものを食べて、飲んで、楽しく酔うことを大切にした「ボタ山」。行きつけに加えてみてはいかがでしょう?
《筑豊ホルモン ボタ山》
福岡市中央区渡辺通2-9-1 Shin Watanabedoriビル2F
080-3996-3929
ジャンル:焼肉・ホルモン焼き
住所:福岡市中央区渡辺通2-9-1 Shin Watanabedoriビル2F
電話番号:080-3996-3929
営業時間:17:00~OS23:00
定休日:不定
席数:カウンター4席、テーブル8席、小上がり8席
個室:なし
メニュー:天道ホルモン直腸750円、小腸750円、牛タン980円、ビンタ830円、牛ハツ750円、牛サガリ1420円、牛ハラミ1540円、ミックスホルモン2,420円~、センマイ刺750円、牛ハツ刺750円、朝引き鶏レバー刺750円、赤崎牛炙りユッケ1500円、赤崎牛ミスジ2,100円、赤崎牛イチボ1,760円、名物!ボタ山サラダ800円
URL:https://www.botayama-fukuoka.com/
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