PageTopButton

あの福山シェフが“ターブルドット”に挑戦!「Goh」待望の再始動

UMAGA

事前情報の少なさがスリルを呼ぶせいでしょうか。ニューオープンのレストランに行く前は、いつもと違う期待や緊張を覚えます。そんなとびきりの高揚感を、住吉の「Goh(ゴウ)」で味わうことができました。
昨年まで西中洲にあった超人気店「La Maison de la Nature Goh(ラ・メゾン・ドゥ・ラ・ナチュール・ゴウ)」のオーナーシェフ・福山剛さんが、あらゆる要素を一新させた話題の一軒。とくに世界でも珍しい“ターブルドット”を採用すると聞き、この日を待ち侘びたファンは少なくないはずです。

goh店内1

これに先立つ昨年12月。福山さんは住吉にできた「010 BUILDING」1階に、バンコクの著名シェフであるガガン・アナンドさんと共同で「GohGan(ゴウガン)」を開きました。「アジアのベストレストラン50」のスターシェフ2人が組んだレストランとあって、大きな話題をさらったのは記憶に新しいところ。
そして1月11日、同じビル3階に構えたもう一つの“城”がこの「Goh」です。西中洲時代は8,800円だったコースが今回は19,800円。ほぼ倍額の値段は料理にどんな飛躍をもたらすのか? 食事が一斉スタートになったことも含め、とにかく興味が尽きません。

最初の驚きは、長いテーブルが一つきりのフロアに待っていました。そう、ここに複数の客が座り、同じ時間を共有するのが“ターブルドット”の流儀なのです。この日は6組11名が着席。初めての感覚にそわそわしていると、18時に福山さんが登場し、「これから2時間半ほどの間、楽しく過ごしていただけたらと思います」と挨拶を述べました。他のどこにもない、美味なる一夜の開幕です。

gohバナナ1 gohバナナ2

するとテーブルの端の壁が開き、その向こうに“地続き”のキッチンが現れました。スタッフの調理風景を間近に見られる心憎い趣向です。

さて、冒頭を飾るアミューズはサブレと熱々のトマトスープ。そのうまさも冷めぬうち、続く1品目に思わず笑みを誘われました。どこからどう見てもソフトクリームですが、コーン部分は杯を埋め込んだ石川の九谷焼。そこに盛られたクリームを頬張ると、優美な甘さが膨らみます。
これは焼きこんだ沖縄産島バナナの中身を取り出し、アーモンドオイルを加えたもの。底の方にはキャビアが潜み、リッチな塩気でさらに甘みを引き立てます。数々の独創的な料理を考案してきた福山さんらしい、遊び心の効いた一品でした。

goh猪1 goh椀物

アラを爽やかな酸味で包んだ冷前菜の後は、温かい前菜が登場。鹿児島産の猪肉と福岡のかつお菜でこしらえたミートソース状の餡を、小麦粉の生地に巻いて焼きあげた一品です。赤万願寺唐辛子のソースとともに立ち昇る、アジア的なスパイシーさも実に魅惑的。

続いてスタッフが、客一人ひとりに温めた急須の香りを楽しませます。中身はフグヒレや香味野菜、ハーブなどで、なんとも快いかぐわしさ。テーブルを一周した急須は福山さんに手渡され、中身をドリッパーに移した後、熱々のフグのコンソメが注がれました。こうしてできた香り高いお椀は、薬膳のような滋養が詰まった一杯。白子と「三原豆腐店」の豆乳を合わせた白子豆腐の存在感も秀逸です。

goh福山

そうした間にも、客席には絶えず食材の香りが漂い、調理器具の音が耳をくすぐってきます。客席と繋がったオープンキッチンのライヴ感は、やはり半端ではありません。これぞ完璧なシェフズテーブル。料理が一つできるたび、福山さんが全員に生解説する姿は「出張シェフ演出の晩餐会」の趣さえありました。。

一方、ワインの進んだ客たちもすっかりリラックス。席間の適度な距離が意外とプライバシーを保ってくれますし、いつしか意気投合したグループの姿もあります。この辺は屋台文化のある福岡らしい風景でしょう。
「そうやって、いろんな縁がここで繋がれば嬉しいですね」と言葉に力をこめる福山さん。「笑いや会話のある食事はこんなに美味しいんだ──コロナ禍で忘れかけた、そんな楽しさを取り戻せる場所にできたらと思ってます」

goh魚 goh肉

続く魚料理は、今宵僕がもっとも感激した一皿。2日間寝かせた高級マナガツオの皮目だけを炙り、大量の溶かしバターに浸したまま63℃で50分火入れした珠玉作です。しっとりした身の隅々にバターの香りが染みわたり、一口ごとに陶酔が充満。ほろ苦い菜の花のピューレと、コクのあるオランデーズソースとの相性も抜群でした。
その至福を、鹿児島産鴨の肉料理が上書きします。えぐみのない身はベストな焼きあがりで、鴨ミンチの出汁に鴨レバーを加えたソースも贅の極みです。

さらに、これらの美味を彩るクラシカルな器も見応え十分。例えば鴨料理の皿は、手描きゆえ1日2枚しかできない伊万里の逸品ですし、この後のデザート「バニラ味噌のイチゴミルフィーユ」の器も、日本で初めて磁器食器を皇室に納め、現在も宮内庁御用達の窯元だという有田の「辻精磁社」によるものだそうです。

そして最後の「薪火番茶」を飲み終え、福山さんが再び謝辞を述べたら、印象深き「Goh」の晩餐会は閉幕。その余韻が招くのは「まったく新しい体験をした」という感慨でした。より高級な食材を用いた料理の進化はもちろん、親密なサービスやゆとりある空間などすべてがグレードアップ。何よりも“ターブルドット”という突出した個性は、今後レストランの可能性を広げる新たな指標になるかもしれません。そんな体験そのものがご馳走になる無類の店が、福岡に生まれたことを心から喜びたいと思います。

《Goh/ゴウ》
福岡市博多区住吉1-4-17 010BUILDING3F
電話/092-281-0955 予約制
時間/18:00~(一斉スタート)

店舗名:Goh(ゴウ)
ジャンル:フランス料理
住所:福岡市博多区住吉1-4-17 010BUILDING3F
電話番号:092-281-0955  予約制
営業時間:18:00~(一斉スタート)
定休日:不定
席数:テーブル14席
個室:なし
メニュー:ディナーコース19,800円 サービス料5%
URL:https://010bld.com

この記事はいかがでしたか?
リアクションで支援しよう

この記事を書いたひと

UMAGA

homePagefacebookyoutubexinstagram

魅力的な福岡の食文化をもっと楽しんでいただくためのバイブルとして、厳選した信頼性のある情報を毎日更新中。