3月27日、白金にやまやの旗艦店「やまや総本店」が誕生。各種メディアでも話題になっている新スポットですが、開業前はベールに包まれていた情報が1つだけありました。それが「やまや総本店 膳」のコース料理について……です。開業後、予約して出かけたところ「この内容で7,700円はすごすぎるのでは!?」と驚く結果に。これは詳しくご紹介したいと筆を執らせていただきました。
「やまや総本店 膳」は、九州をテーマにした割烹料理を味わえる日本料理店。完全予約制で夜のみの営業となっており、黒い箱のような建物の左側にある門扉(写真左)がその入口です。
足を踏み入れた先には桜、ツツジ、紫陽花といった四季折々の花や木々に囲まれた中庭が! この中庭をぐるりと囲むように店舗が築かれており、門扉から入店すると「やまや総本店 膳」。銅葺きの正面エントランスから入店すると、辛子明太子をはじめとした食事や買い物などを楽しめる「白金小径」という造りになっています。
料理長の安部大志郎さんやスタッフが笑顔で迎えてくれました。
店内はカウンター席を主体に、テーブル席や半個室からも厨房を望める臨場感のある造り。中庭に面したフロアは全面ガラス張りで、天井も高く開放的です。田川市の消石灰を用いた漆喰壁や鹿児島県・霧島の赤い土壁など、空間の随所に九州の素材が散りばめられており、欄間などは元々この地に建っていた旧家の一部を利活用したものだそう。モダンな中にも温かみを感じ、実に居心地がいいです。
料理を手掛けるのは、京都の懐石料理店や割烹、九州の郷土料理店でも経験を積んできた安部料理長。総監修には、世界のベストレストランやアジアのベストレストランにも選出される東京・日本料理店「傳(でん)」の店主・長谷川在佑さんを迎え、“世界屈指のホスピタリティ”を「やまや総本店 膳」にも継承しています。料理メニューは計7品のコース料理(7,700円)一本で勝負。生産者の元へ直接足を運んで出合った名品や鮮度が光る採れたての素材など、九州各地の旬素材を注ぎ込みます。早速、その美味をいただきましょう。
1品目に供されたのは、炊いた合馬の筍に叩いた芝海老を挟んでカラリと揚げた先付けです。ザクッとした歯ざわりの後、ほわっと広がる淡い筍の香りと香ばしい芝海老の風味がたまりません。底に敷いているのは、大分県産の白菜のソース。春の白菜は冬と違って葉の部分がより緑がかり、甘味もぐんと増すのだそう。味付けはお出汁のみといいますが、繊細かつ風味豊かで驚きました。
福岡市の陶芸家・北岡幸士さんに作っていただいたという貫入皿にも良く映え、春の訪れを感じさせる色彩と味わいが素敵です。
2品目には、八女産の卵を使った滑らかな茶碗蒸しが登場。熊本産の新ゴボウのすり流しと素揚げが重ねてあり、実に香りが良いです。
続く3品目に出されたのは対馬産の鯖と酢飯を重ねたおしのぎ(写真)で、有明海苔でくるっと巻いてかぶりつきます。安部料理長の実家・大分から届く原木椎茸とカンピョウで作る中具の旨味、黄身酢の酸味も絶妙。添えられた佐賀の白石蓮根は予め蒸しておき直前に揚げているそうで、蓮根の食感と甘味を引き出す丁寧な仕事が光ります。
さらに4品目は寝かせて甘味を引き出した天然真鯛と、鮮度抜群の鯵が出てきました。「傳」のスペシャリテである「畑の様子」に習ったサラダも添えられており、農家直送野菜のほろ苦さと青味が魚の美味しさを引き立てます。
5品目に供された写真の焼き物は、玄界灘産サワラの淡雪焼きです。サワラは幽庵地(調味液)に漬けて焼いてあり、ふっくらしっとり。大根おろしとメレンゲを合わせて焼いた淡雪からは自家製の柚子胡椒の香りも漂います。添えられた春菊、アマドコロ(山菜)もよく合い、春の芽吹きを感じました。
6品目に登場したのは、朝倉の地鶏・古処鶏とカブを使った椀仕立ての煮物です。古処鶏は皮目をじっくり焼いて脂を落とし、落ちた脂は野菜の皮や切り落しでとった出汁に還元。この野菜出汁でカブを炊き、みぞれ餡にして注いでいます。古処鶏は香ばしく身はジューシー。柔らかくミルキーな味わいのカブと、根三つ葉の食感や香りも重なります。食材を一つも無駄にせず活かしきるという日本料理の粋と安部料理長の思いが、舌に心に染み入りました。
コースの最後を締めくくるのは、有田焼「安楽窯」に特注した赤い土鍋で炊き上げるピカピカの銀シャリ。この土鍋、取手が明太子の形になっていました。お米は「しろいしびより」など、大粒揃いの特Aランク米を季節ごとに選りすぐっているそうです。一緒に出される やまや自慢の「できたてめんたい」をのせてかき込めば……し、幸せ~! 真鯛やイサキといった魚のアラでとる出汁と柳川市「鶴味噌醸造」の合わせ味噌で作る味噌汁、自家製の漬物も美味しく、文句なしに大満足です。
食後のデザートはお好みで追加でき(+1,100円)、うきは市「松野牧場」直送の牛乳で作るアイスクリームと旬の果物を楽しめます。「田中六五」や「古伊万里 前」といった九州の地酒から「十四代」をはじめとした特別な日本酒、ソムリエが選ぶ50種類以上のワイン、水出しの八女茶など、ドリンクのメニューも充実していますよ。
この日私は日本酒を3杯飲んで料理を食べ、お会計は1万円アンダーでした。食材もコース料理も高騰化が進んでいる中、これはお手頃とも言える価格です。高級食材ではなく地元の輝く旬食材に目を向け、どうすればもっと美味しく、より楽しんでもらえるかと手をかけ工夫を凝らす。そんな料理とホスピタリティが素晴らしいと感じました。季節が移ろう度に訪れたい、今度は誰を連れて行こう――。一度足を運べばきっと、そう再訪を誓うはずです。
やまや総本店 膳(ぜん)
福岡市中央区白金1-5-5
092-406-8820 ※完全予約制。電話受付時間12:30~17:30(定休日を除く)
ジャンル:日本料理
住所:福岡市中央区白金1-5-5
電話番号:092-406-8820 ※完全予約制。電話受付時間12:30~17:30(定休日を除く)
営業時間:18:00~OS22:00
定休日:日・月曜
席数:カウンター10席、テーブル20席
個室:半個室4~8名
メニュー:コース料理(7品)7,700円、食後の水物(デザート)コースに+1,100円、日本酒1杯660円~、グラスワイン990円~、水出し八女茶660円
URL:https://yamaya-sohonten.jp/zen
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