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今や運動会は「屋内」「夜間」開催? 専門家が指摘「5月中旬下旬は屋外行事に適さない」

福岡県久留米市の中学校で今月17日、体育祭の練習に参加していた複数の生徒が体調不良を訴え、そのうち7人が病院に運ばれました。久留米市ではこの日、日中の気温が7月中旬並みの32.2℃まで上がり、体調不良の原因は熱中症とみられています。今月23日の福岡の空。大陸から飛来した黄砂でかすみ、各地で見通しが一時、10キロ未満まで落ちました。さらに、大気中に浮遊する微粒子、PM2.5もやや多いと予測される日が続いていて、屋外での活動には不安が伴います。


◆実際は春は屋外行事に適さない?
近年、春に開催する学校が増えている運動会や体育祭。秋に集中しがちな学校行事の分散化などさまざまな事情がある中で、まだ残暑が厳しい9月に練習することで危惧される熱中症への対策も、時期をずらした理由の1つとされています。しかし実際には、春が屋外の行事に適した季節とは言えなくなってきていると気候変動の専門家は指摘します。

九州大学・竹村俊彦教授「地球温暖化が進行して5月中旬下旬というのは真夏日が出る日があるなど、やはりもうすでに運動に適した時期ではなくなってきている状況があります」

「西日本九州地方は越境大気汚染であるとか黄砂の飛来の影響を受けやすい地域、越境大気汚染は春に起こる現象なので、もともと呼吸器が弱いお子様は屋外での運動は控えた方がいいので」


◆福岡では春開催が主流に
福岡市中央区の警固小学校ではこの日、来月4日の運動会に向けて、4年ぶりに全員そろっての練習を始めていました。春に運動会を開く理由は、気候が比較的安定していることに加え、クラス替えでできた新しい仲間との絆を深めることだといいます。

警固小学校体育主任・杉上亮教諭「体調が一番なので徐々に体を慣らすようにと工夫しています。たとえばはじめのころは1時間で計画をして、徐々に体が慣れる2週間くらいたってから2時間の練習を取り入れます。特に暑い日はミストを出して少しでも涼しくなるようにしています」

この日の全体練習は、午前中の40分ほどで終わりました。

6年生「涼しい時もあるけど暑い時はよく汗をかいたりします」「ダンスとかたくさん動くのでマスクを外してこまめに水分補給をしています」

福岡市教育委員会によると、運動会や体育祭の開催時期はそれぞれの学校に判断を委ねていて、市立の小・中学校では今年、151校が春、63校が秋に運動会の予定を立てました。市教委は「熱中症指数計」をすべての学校に配布し、学校は指数に応じて、屋外での運動ができるか判断しています。


◆ドーム開催、夜間開催を試みる学校も
熱中症を防ぐために屋外での開催を見直した学校もあります。福岡県筑紫野市の九州産業高校が24日に開いた体育祭の会場は、屋根付きのPayPayドームです。

九州産業高校・霧島悠司広報部長「ドームによって、密にならないこと、非常に素晴らしい人工芝がありますので、けがすることなく競技ができると言うこと、あとは、天候に左右されないというのも一番大きなところ」
保護者「涼しいのがいいと思います」

熱中症に加えて、日焼けの心配もないとして生徒だけでなく、応援する保護者にも好評でした。また、暑い昼間を避けることで熱中症を防ごうという学校もあります。福岡市南区の福岡第一高校と第一薬科大学付属高校は、去年の体育祭を初めて、夕方6時以降に開催。プロジェクションマッピングやペンライトを使った応援合戦など、昼とはひと味違ったユニークな演出がすばらしい思い出になったとして、今年も夜の開催を予定しています。


◆「10月中旬~下旬」が適した時期
ただ、すべての学校でこうした取り組みができるわけではありません。運動会や体育祭を開くのに最も適した時期はいつなのか、専門家は次のように話しています。

九州大学・竹村俊彦教授「9月も残暑が厳しくて熱中症の危険性があります。今後の地球温暖化のことを考えますと、気温の点から言うと西日本は10月の中旬から下旬あたり、そのあたりが快適に運動して先生も熱中症に気を遣う必要もない、そういった適した状況」

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