「母の日に比べて、父の日は忘れられるよね」。この時期よく耳にするフレーズだ。大きな声では言えないが、私は息子として、父の日を覚えていたことはほとんどない。
先日、RKBテレビ「タダイマ!」内で「父へメッセージを伝える」機会があった。「父の日」に向けての企画であったが、気恥ずかしさもあり最初は気が進まなかった。
父は私が小学生の時に山口県から関東地方に転勤となった。単身赴任の形をとったので、私は父と離れての生活。それゆえ会える機会も多くはなかった。
ふと、自分が大学4年まで取り組んだ陸上競技のビデオを見返してみると、全てのレース動画に「謙、ファイト!」の声が入っていた。父の声だった。私は長距離に取り組んでいたので、父は一生懸命、10~15分も手がぶれないようにビデオを回してくれていた。休みの日に関東から山口県に帰ってきてまで。自分も社会人となった今、その過酷さがわかる。「言葉にして父に感謝を伝えたい」。自然に出た感情だった。
収録後。抱いたのは、「やっぱり少し恥ずかしい」との思いだった。まっすぐ思いを伝えることはなんとも難しい。世の中のお父様方、子供が素直になれる時まで今しばらくお待ちください。
6月17日(土)毎日新聞掲載
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