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大名の古民家で楽しむ、素材にこだわる老舗の打ち立て蕎麦

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福岡に暮らし始めたころ、大名を歩くたびに気になっていたのが「手打ち蕎麦 やぶ金」です。個性的な飲食店やカフェ、アパレルショップなどが並ぶ大名のまちの中にある、昔ながらの和風建築。「料亭か、はたまた割烹料理店か」と思っていたら、しばらくして実は蕎麦屋と知りました。

「手打ち蕎麦 やぶ金」の外観

格式高い雰囲気にちょっぴりドキドキしながら格子戸を開き、靴を脱いで店内へ。国の登録有形文化財に指定された建物は、昭和初期に住居用に建てられたものです。席によっては中庭を望むことができ、福岡の中心地にいることを忘れるくらい、ゆったりとした雰囲気が漂っています。

「手打ち蕎麦 やぶ金」の店内

「やぶ金」は、1950年に渡辺通で創業したのち、何度か移転してから2010年に今の場所に移ってきました。創業当時は、蕎麦やうどんなどを提供していましたが、1997年に本格手打ち蕎麦の店へ。現在、店をまかされているのが三代目・後藤将人さんです。「子どもの頃から店を手伝うことが多くて。自分が蕎麦屋を継ぐんだろうと、なんとなく思っていました」と笑う後藤さん。東京・渋谷にある蕎麦の名店「玉笑(たまわらい)」での修行を経て、2019年に「やぶ金」を二代目であるお父さまから受け継ぎました。

メニューには、冷たい蕎麦・温かい蕎麦の定番に加えて、季節限定メニューのほか、蕎麦の前にお酒と一緒に楽しむのにはぴったりの「そばがき」(980円)、「だし巻」(1,100円)といった一品料理もそろいます。

「手打ち蕎麦 やぶ金」のメニュー表

この日は、「やぶ金」の夏のイチ押し「やまかけ」(1,600円)を注文。7月~10月後半ごろに登場する限定メニューです。

「手打ち蕎麦 やぶ金」の「やまかけ」

蕎麦が隠れるほどたっぷりと乗ったとろろは、粘りが強く、味にコクがある山芋「ネバリスター」。さらに、中央にあるレモン色の卵黄は、開放鶏舎で平飼いされる鶏の玉子「旅をする木」を使用しています。「蕎麦はスーパーフード。せっかくだから、おいしいことはもちろん、体に良い物を食べてほしい」と食材ひとつひとつにこだわりをみせます。出汁には鹿児島産のカツオ節、かえしには同じく大名にあるジョーキュウ醤油の醤油を使った程よい甘味で、すっきりとしたあと味。粗挽きの蕎麦粉で打った、風味豊かな外一蕎麦(蕎麦粉とつなぎの割合が10:1)としっかり絡みます。「粗挽きの蕎麦は、伸びるのも早いので、ぜひ出来立てを味わってほしい」と後藤さん。提供されたら、手早く混ぜていただきます。とろろと卵黄が絡んだ蕎麦は、プチッした歯切れのよさ。喉越しを感じたあと、ふっと鼻に抜ける蕎麦の爽やかな香りに満足感が込み上げます。

「手打ち蕎麦 やぶ金」の「けいらん」

温かい蕎麦なら、通年食べられる「けいらん」(1,500円)がおすすめ。葛粉でとろみをつけ、生姜を効かせた出汁で玉子をとじた蕎麦で、体の芯からあたたまります。冬の寒い時期はもちろん、夏バテ気味のときに食べても元気が出そうな一杯。とじた玉子はまるで湯葉のように繊細で、やわらかな口当たりと優しい甘さに癒されます。

「手打ち蕎麦 やぶ金」の店主・後藤将人さん

「やぶ金」の蕎麦は、毎日、営業前とランチ終わりにそれぞれ、その日の分だけを打って提供しています。蕎麦粉は国産で、時期に合わせて産地を厳選。

「手打ち蕎麦 やぶ金」の手打ち蕎麦

夜は単品のほか、事前予約をすればコースでの利用も可能です。冬は鴨鍋のコースがありますが、ほかにも5,000円から予算に合わせて注文できるので、ぜひ気軽に相談してみましょう。

厨房に立つのは後藤さん1人とあって、提供までの待ち時間が長い日もありますが、ゆったりとした古民家の雰囲気に身を委ねるのも楽しみのひとつ。長い付き合いの酒屋さんがセレクトしたという純米酒を手元に、庭を眺めながらのんびりと蕎麦を待つ、贅沢な時間を過ごしてみてはいかがでしょう。

「手打ち蕎麦 やぶ金」のメニュー表

手打ち蕎麦 やぶ金
福岡市中央区大名2-1-16
092-761-0207

店舗名:手打ち蕎麦 やぶ金
ジャンル:蕎麦
住所:福岡市中央区大名2-1-16
電話番号:092-761-0207
営業時間:11:30~OS14:30/17:00~OS21:00(火曜は昼のみ/蕎麦が売り切れ次第閉店)
定休日:火曜夜、水曜
席数:テーブル20席
個室:なし
メニュー:やまかけ1600円(7~10月ごろ限定)、けいらん1500円、せいろ1000円、鴨南2200円、そばがき980円、そば田楽980円、天ぷらの盛り合わせ2500円、だし巻1100円、コース5000円~
URL:https://www.instagram.com/yabu.kin/

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この記事を書いたひと

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