贅を尽くした“懐石広東料理”でもてなす、浄水通の静かな隠れ家

福岡に「完全予約制・コースのみ」を謳うレストランは数あれど、これが中国料理だとその限りではありません。店自体の少なさから、「ハレの日」候補店から漏れやすいジャンルとも言えるでしょう。
そんな意味でも「かたおか」は注目すべきお勧め店です。オーナーシェフは、ホテル日航福岡の広東料理店「鴻臚」で11年も料理長を務めた大ベテラン。そう聞くだけで、素敵な口福に逢える予感がしませんか？

その舞台は、動植物園にほど近い浄水通のマンションにあります。入口が裏手にあるため少々迷って到着しましたが、辺りを包む秘めやかな空気は好ましく、“隠れ家”特有のドキドキする高揚感がありました。

店内は、カウンター席・テーブル席・４名収容の個室で構成。こちらを緊張させる華美さはなく、ほどよい気品と温もりでリラックスさせてくれます。カウンターの奥からは、オーナーシェフの片岡徹さんが笑顔で一礼。いかにも百戦錬磨な貫禄をまとう頼もしき職人です。
片岡さんは「鴻臚」に在籍した30年間、ひたすら技術を磨いた広東料理の名手。2019年に「かたおか」を構えると、広東の枠を越え、和洋のエッセンスを採り入れた独自の料理に挑んでいます。“懐石広東料理”と名付けたそのディナーコースは、11,000円・19,800円・27,500円。今宵は７品構成の19,800円コースをセレクトしました。

実は、前からここのハイコスパな料理の評判は聞いていました。が、早くも最初の２品でそれを実感できるとは……。１品目の「海鮮の盛り合わせ」は、本マグロの香り醤油和え・ヒラスのネギ＆柚子胡椒のオイル漬け・天然真鯛の四川山椒南蛮などの旨味が渦巻くラインナップ。コースのシンボル的存在でもある、２品目の「糸島野菜の盛り合わせ」に至っては、極彩色のビジュアルに圧倒されっぱなしでした。18～19種の野菜を多彩な技法で仕立ててあり、のっけから「贅を尽くした」感が満載なのです。

その余韻も冷めぬうち、このボリューミーなフカヒレ姿煮が続くのだからたまりません。聞けば１kgのフカヒレから７枚しか取れない希少品で、素材の醍醐味である繊維も太く、愉悦満載の歯応えをたっぷりと堪能！　極上の上湯（ショントン）と干し貝柱で仕立て、ズワイガニを加えた濃厚な餡も特筆もののうまさです。

柔らかく蒸したアワビ料理に続き、５品目には旬の壱岐産活け締めアラが登場。衣を付けて油通しし、干し海老や揚げガーリック、エシャロットなどと炒めた“香港風”での提供です。他の料理同様、ケミカルな添加物を一切使わず、干し海老と塩だけで生む華やかな風味がお見事。一見素朴な小品ながら、温度・食感・有田焼の器も含め、あらゆる要素を巧みにまとめるシェフの凄みを感じた逸品です。

肉料理は、佐賀牛のフィレに五香粉とカレー粉を降った夏らしい仕上がり。洋風の低温調理を採用し、しっとり艶かしい弾力を与えた火入れにも唸りました。
「それが私の料理の特徴かもしれません。中国料理には“火入れ”の種類が幾つもあって、そこにこだわり、上手く操ることで他の料理ジャンルにない魅力を表現したいんです」と片岡さん。「お客様にも、ぜひ料理ごとの“火入れ”に注目してほしいですね」

胡麻団子・エッグタルト・フルーツのデザートが済むと、テーブルには心潤う満足感が広がりました。皿を彩る素材の美しさ、格調高く雑味のない味……。真に完成度が高い料理とは、これほどまでに豊潤なのですね。
どの料理にも溢れていた一球入魂の熱量も印象的。片岡さんにそう伝えると「すべてのお客様に驚きや感動を与えたくて、日々仕事に励んでいます」と微笑みました。「高価なコースですし、“想定内だね”と思われたら申し訳ありません。だから最初から最後までクライマックスです（笑）」

その言葉に嘘や偽りはありません。大切な人と美味しい食事がしたい時、「かたおか」は120％期待に応えてくれるでしょう。中国料理マニアに独占させておくには余りに惜しい名店ですよ、本当に！

この記事は積水ハウス グランドメゾンの提供でお届けしました。

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