“慣習”にとらわれず同業者が染め場を融通「もう終わったな」大雨で染料が水没した織元の復旧劇~久留米絣
江戸時代から続く久留米絣の工房(福岡県久留米市)は、今年7月の記録的な大雨によって大切な染料が“水没”しました。織元が「もう終わったな」と感じたほどの壊滅的な被害でした。160年以上受け継がれた“技術と伝統”は途絶えてしまうのか。同じ織元が“慣習”にとらわれない支援を申し出ました。
染料が水に浸かり「もう終わったな」
森山典信さん「このあたり太ももぐらいまで水が来ていた」
福岡県広川町にある「藍森山・森山絣工房」の森山さんが語ります。江戸時代末期、1858年の創業以来久留米絣を製作している工房は先月の大雨で浸水の被害を受けました。浸水は床上90センチに達する場所もあり、藍染めの工程に必要な甕50個ほどが使用できなくなりました。
森山さん「空洞になっているところから水が入ってきて地面が緩くなって、(染料が入っていない甕は)プカプカ浮いている状態。染料が入っていた甕も泥水が入って全部使えなくなった。もう終わったなと」
ほかの久留米絣の織元も記録的な大雨によって被害を受けたものの、とりわけ森山さん一家の工房の被害は深刻でした。糸を巻く機械も水に浸かり工房は稼働停止を余儀なくされました。途方に暮れていたところに支援の手を差し伸べてくれたのは仲間たちでした。兄・浩一さんがSNS=会員制交流サイトで支援を求めたところ、知人や仕事で付き合いのある約100人が工房の清掃作業や復旧に必要な物資の調達などをサポート。柳川市の料亭でイベントを予定していたこともあり料亭の関係者も手伝ってくれました。
“慣習”にとらわれず同業者が染め場を融通してくれた
御花・金原梨奈さん「私たちにできることは何だろうとすごく悩んだけど、(SNSの呼びかけに)行っていいかなと思い、現場で泥のかき出しを手伝いわせてもらった」
さらにイベントに向けた準備では「慣習」にとらわれずに力を貸してくれた同業者がいました。
森山さんの兄・浩一さん「同業者同士で染め場を借りることはなかなかないこと、今回(同業の)坂田織物さんの場所を借りて演出ができた、坂田さんがいなかったら一切できていなかったので本当に助かっている」
久留米絣協同組合に加入している20の織元で最も古いとされる森山さん一家の工房。来年春ごろの再開を目指して復旧を進めています。
森山さんの兄・浩一さん「藍染めする甕を狭い間隔で置いていたので広げて海外や一般の人も気軽に入れる工房にしていこうかなと」
森山さん「伝統や技術は残しつつ、僕らの強みは兄弟でやっているところもある、兄弟だからできる新しい物作りにも挑戦していきたい」
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