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2023年にもなってまだ飲酒運転をしている人がいる…「県民の義務」になった“通報”が浸透すれば変わる?

福岡市の市民の記憶に深く刻まれた悲劇の日が8月25日です。市街地と人工島エリアをつなぐ「海の中道大橋」を走行中のRV車が飲酒運転の車に追突され、橋の欄干を突き破って海に落下。幼児3人が死亡しました。運転していたのは、あろうことか市民の模範となるべき公務員の男でした。あまりにも衝撃的で悲惨な事故を受けて「飲酒運転は“絶対悪”だ」「飲酒運転をなんとしても撲滅せねば」という気運が一気に高まりました。その後、厳罰化や医学的アプローチ、飲食店の取り組みなどのさまざまな対策によって確かに減少傾向にはなったものの、市民が願う「飲酒運転0」には遠く届きません。多くが、暗い海で命を奪われた子供たちの無念さに思いをはせ、もう3人のような犠牲者を出してはならないと考える一方、2023年にもなって、まだ飲酒運転をする人がいるのです。 “代行運転”がより利用しやすくなり、“県民の義務”になった「見たら通報」が徹底されれば、撲滅されるのでしょうか―。

新型コロナが5類になり「飲酒機会」が増加

福岡市東区の海の中道大橋では25日、市民が花を手向け、静かに手を合わせました。17年前、家族5人の乗った車が飲酒運転の車に追突され海に転落。幼いきょうだい3人の命が奪われました。運転していたのは、福岡市の職員でした。

 

福岡市・高島宗一郎市長「飲酒運転はしない、させない、絶対に許さない、そして見逃さない、この決意を新たに飲酒運転の撲滅に向かって一丸となって取り組んでいきましょう」

 

福岡県は事故を風化させないために毎月25日を「飲酒運転撲滅の日」に定め様々な啓発活動を行っています。しかし、検挙件数は下げ止まりの状態が続いています。今年は、先月末までに883件と去年の同じ時期と比べて100件増加しています。県警は、「新型コロナが5類に引き下げられ飲酒する機会が増えたことが要因のひとつ」と考えています。

福岡県の条例で通報は「県民の義務」

一方、飲酒運転を防ぐために警察が力を入れているのが市民や飲食店からの通報です。福岡市博多区の焼肉店で25日に行われた飲酒運転の通報訓練。酒を飲んだ客が会計をした後、車で帰ろうとするのを従業員が目撃した想定で通報の手順を確認しました。福岡県は3年前に、飲酒運転撲滅条例を改正し全国で初めて飲酒運転を目撃した際の通報を「県民の義務」と定めました。それ以降、通報件数は年々増加しています。去年は2050件の通報がありそのうち検挙されたものが207件。約1割が検挙につながっています。

「代行を待ちきれず運転した」利便性がカギ

飲酒運転の撲滅に向けてより活用が期待されるのが代行運転サービスです。沖縄の企業が開発した代行運転の配車アプリは位置を指定すれば10分程度で車が到着します。福岡県は沖縄に次いで全国で2番目に代行運転の業者が多く、利用しやすい環境が整っています。

 

開発したAlpaca.Lab・棚原生磨代表「下げ止まりの現状が長く福岡でも続いていると思います。さらにもう一段階下げるには、具体的に減らすために、運転代行を使うことが非常に大きなポイントになる」

 

警察によると飲酒運転で検挙された人の中には「代行運転を待ちきれずに自分で運転した」と話す人もいるということで、こうした配車アプリの活用も期待されています。

最愛の人を亡くした遺族の思いは変わらない

中央警察署で警察官の前で講演したのは大庭茂彌さんです。今から24年前に飲酒運転の車による事故で次女の三弥子さん(当時21)を亡くしました。

 

大庭さん「なんでうちの娘たちが飲酒運転の車にぶつけられて3人も亡くなるのかと憤りを感じていた。加害者を作らない世の中を作っていかないと娘の死が無駄になるのではないかという考え方に変えた。遺族としての思いを生涯伝え続けていく」

警察官の前で強い決意を示しました。

 

大庭さん「やはり飲酒運転というのは犯罪やからね。酒は楽しく飲んで、絶対にハンドルを握らないっていう社会を作っていかないと。ああ、やっぱり飲酒運転ってだめだ」って理解してもらえればそれが一番いいと私は思っています」

 

悲惨な事故を二度と繰り返さないために。飲酒運転をしない、させない、見逃さないという気持ちが何より大切です。

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