桑田佳祐が神宮外苑再開発に異を唱える歌「Relay~杜の詩」に松尾潔もエール
サザンオールスターズの新曲「Relay~杜の詩」で、桑田佳祐さんは神宮外苑の再開発を憂える思いを表現した。さらにこの歌は、昨今「閣議決定」で重要なことが決められてしまっている現状も批判していると、音楽プロデューサー・松尾潔さんは指摘する。そうした桑田さんの姿勢について9月25日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』でコメントした。
神宮外苑再開発に異を唱える
今回は、9月18日に配信でリリースされたサザンオールスターズの最新シングル「Relay~杜の詩」についてお話しします。
東京都心・明治神宮の外苑である神宮外苑は、美しい街路樹があって、多くの人が憩いの時間を過ごしている都会のオアシスです。そこが再開発され、結構な量の植物が伐採されるという計画があります。
「Relay~杜の詩」は、それに異を唱えるサザンオールスターズ、桑田佳祐さんの思いが形になった曲です。サザン45周年の今年は、新曲を相次いで出していますが、その第3弾ということになります。
神宮外苑はサザンにとってのアビーロード
歌の冒頭から「美しい森が消えるのを」というフレーズが出てきます。まさに神宮外苑再開発のことですね。サザンのオフィシャルホームページから歌詞を見てください。桑田さんの歌ではよくあることですが、いろんな当て字も使っています。例えば「音を紡いだ場所」と歌う部分、ここは歌詞には「音楽を紡いだスタジオ」って書いてあるんです。
神宮外苑のすぐ近くにあるビクタースタジオのことです。サザンオールスターズがよく利用してきた名門のスタジオで、僕もたまたま2週間ほど前にここでレコーディングをしました。僕はいつもそこの3階を使うんですが、サザンは401スタジオを使っています。
サザンにとってここはホームグラウンド。つまりビートルズにとってのアビーロードみたいなもので、レコードジャケットで有名なあの横断歩道の日本版にあたる場所が、この神宮外苑って言ってもいいかもしれません。
坂本龍一さんの思いをつなぐ
この再開発をめぐっては、前々から「伐採反対」という市民運動が盛り上がっていました。坂本龍一さんがこの問題に声を上げる文化人の代表のような存在でしたが、桑田さんは当初、そこまでこの問題に高い意識があったわけではなかったそうです。
しかし、坂本さんが亡くなったことをきっかけに、桑田さんも同時代を生きるミュージシャンとして立ち上がりました。坂本さん死後、彼のいろんな言葉を改めて探ったり、本を読み返したりしていたと、インタビューで話しています。
最近桑田さんは「自分たちは人生の残り時間を数えるような年齢になっているけれど、この先の未来を生きていく次の世代のために何を残せるか」ということに、すごく自覚的になっています。
去年の『NHK紅白歌合戦』で、佐野元春さん、世良公則さん、Charさん、野口五郎さんと一緒に「時代遅れのRock'n'Roll Band」を歌いました。あの中でも「子供の命を全力で大人が守る」というフレーズがありました。
サザンのデビューのときから見ている僕も「そうだよな、そういうフェーズに当然入るよな」と改めて知ると同時に、これまでも桑田さんはいろんなことを音楽に織り込んできたけど、さらに一歩踏み込んで、表現としてストレートな度合いを高めているなと思いました。
かっこよすぎる桑田佳祐さんの全力投球
この「Relay~杜の詩」の中でも印象的なのは、「いつもいつも思ってた 知らないうちに決まってる」というフレーズです。これは(神宮外苑の再開発を進める)東京都への批判を超えて、政府の閣議決定でいろんなことが決まっていることへの言及ともとれるわけです。
桑田さんは「歌詞に全て込めました」と話していて、おそらく僕の解釈は間違っていないと思います。「政治のことや社会のことを語るのはやめて、音楽だけやってろ」という声に対するプロテスト(抗議)でもあるでしょう。この桑田さんの全力投球ぶりは、かっこよくて仕方ありませんね。
自分のスタンスを明示しながらも、きちんとキャッチボールをしましょう、という余地を残しています。まず自分のオピニオンをきちんと言う。だけどそれだけが絶対ではない。「僕はこう思うけど、あなたの声も聞かせてほしい」と呼びかけて、対話の必要性を説いている歌であり、これはそもそもポピュラーミュージックのあり方というものに適っていると思います。ここから僕らが学ぶことはたくさんあると思います。
我がこととして考えてみてほしい
例えば福岡だったら、けやき通りの街路樹が全部なくなりますということが決められたらどうなるでしょう? あるいは、大濠公園の池を埋め立てます、ということが、いつの間にか決まったら? というふうに、我がことに引き寄せて考えてみると、この歌も違った見え方がするでしょう。桑田さんもそういう問題提起をしたいという気持ちが強いと思います。
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