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築百年の古民家で、江戸前蕎麦の”粋”に触れる

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戦前から戦後にかけてお屋敷や料亭などが建ち並び、福岡屈指の高級住宅街だった白金。今ではその多くがマンションやビルに建て替えられていますが、その合間にポツポツと昔ながらの古民家が残っています。そのうちの一軒を借りて、蕎麦屋を営んでいるのが「江戸蕎麦 佗介」。その名の通り、福岡で本格的な江戸前の蕎麦を食べさせてくれる貴重な一軒です。

侘介外観

場所は白金地区の中で最も細い路地の一本で、あまりの狭さに自動車が通行できない「歩行者専用」の標識が立てられているほど。その中ほどに掛けられた、青い暖簾が目印です。およそ築百年になるという建物の玄関で靴を脱いで店内に入ると、まるで昭和の時代にタイムスリップしたような空間。壁に掛けられた古時計がカチコチと時を刻む音が響いていました。

侘介_店内2

店主の山本大介さんは、「若い頃に東京で食べた江戸前蕎麦の文化に憧れました」と、蕎麦職人の道へ。修業を経て25年前に西新で「江戸蕎麦 佗介」の暖簾を掲げ、2010年に白金に移転しました。蕎麦は全国の産地から取り寄せる玄そばを吟味し、石臼で手碾きしたそば粉に国産小麦二割を加えた二八が基本。1日各5食限定ながら、「手碾き十割」「粗碾き十割」(各1,210円)も食べることができます。

侘介_メニュー

黒板にはその時に使っている蕎麦の産地が書かれ、この日は群馬県赤城町の常陸秋そば、富山県八尾町の八尾在来種、熊本県菊池阿蘇の階上早生の3種類。手碾きでそれぞれの味と香りを引き出し、打ち分ける技術の高さに、蕎麦職人としての腕の確かさが分かります。

侘介_せいろ

定番の「二八せいろ」(990円)は、箸でひとつまみした最初の一口を何もつけずにそのまま口の中へ。サッと湯がいて氷水で締めた蕎麦は、ツルリとした口あたりの後に程よい歯ごたえがあり、噛むほどに香りが広がります。次に少量のつゆをつけて食べるとキリッとした辛口で、そうそうこれこそ江戸前の味。鼻孔にガツンとした鰹節の香りが漂い、ズルズルッと音をたてながら一気に啜りこめば、のみくだす時の喉ごしの良さがたまりません。

侘介_あられそば

温かい蕎麦からは、これまた江戸前の名物である「あられそば」(1,650円)を注文しました。こちらは霰(あられ)に見たてた貝の小柱を敷海苔の上にのせ、熱いつゆをかけていただきます。湯気とともに上ってくる海苔と三葉の芳ばしい香りを嗅ぎながら、まずはひと啜り。真っ黒いつゆは、昆布の旨味に加えてほのかに椎茸の甘味が感じられます。薬味におろしたての山葵とやげん掘の一味を加えて味変を楽しみつつ、ツルリと完食しました。

侘介_そばがき

蕎麦そのものをよりダイレクトに味わうなら、「そばがき」(1,210円~)もオススメです。「ゆだめ」「揚げ出し」「鬼揚げ」「磯辺焼」「鴨汁」の5種類ものバリエーションがあり、写真はそばがきを手でちぎって素揚げにした「鬼揚げ」(1,430円)。岩塩と黒胡椒をたっぷりとかけて、石臼手碾き蕎麦のモッチリとした食感を楽しむことができます。

侘介_焼海苔

山本さんは、四半世紀前の創業当時から「福岡で蕎麦前の楽しみ方を広めたい」と提唱してきた先駆者の一人。炭を仕込んだ専用の木箱で提供する写真の「焼海苔」(770円)や「鳥わさ」(830円)、「出汁巻」(880円)などの定番から、旬の食材を使った黒板メニューの限定料理まで豊富に揃っています。日本酒は一合990円からで、もちろん昼飲みもできますよ。

侘介_店内

蕎麦の余韻に浸りながらしばし庭の緑の眺めていると、店内に突然"リリリリリ~ン"と黒電話のベルが響きました。「ただ蕎麦を食べるだけでなく、"設え"を楽しんでほしい」という山本さん。そんな思いが込められた築百年の古民家に、江戸前の"粋"を受け継ぐ美意識が詰まっています。

江戸蕎麦 佗介
福岡市中央区白金1-14-2
092-285-4217

店舗名:江戸蕎麦 佗介
ジャンル:蕎麦
住所:福岡市中央区白金1-14-2
電話番号:092-285-4217
営業時間:11:30~OS14:00/18;00~OS20:00(蕎麦が売り切れ次第閉店)
定休日:火曜、他不定休あり
席数:カウンター3席、テーブル10席
個室:なし
メニュー:手碾き十割せいろ・粗碾き十割せいろ(各1日5食限定)1.210円、二八せいろ990円、鴨せいろ2,310円、かけそば990円、あられそば1,650円、海老天そば2,310円、そばがき1,210円~、板わさ490円、焼海苔770円、出汁巻880円、佗介膳3,630円、蕎麦懐石4,730円

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