日本の伝統食である蕎麦は、低カロリー高タンパクな健康食として日本人の生活を支えてきたともいわれています。現在では蕎麦に含まれるルチンやビタミンB群が健康にいいことが広く知られていますが、昔の人は蕎麦が身体にいいことを経験的に知っていたのでしょうね。ただ美味しいだけでなく、蕎麦を通じて「食」の大切さを伝えているのが、「蕎麦 木曽路」です。
場所は地下鉄大濠公園駅から海側に少し歩いたマンションの1階。約45年前の創業当時は西公園に登る参道沿いにあったそうですが20年ほど前に移転し、昨年改装してリニューアルしました。綺麗に刈り込まれた植込みの横にかかった白い暖簾が目印です。
店内に掲げられた「身土不二」の文字は「人間の身体と土地は切り離すことができない」という意味で、「その土地で採れた食物を食べることが健康にいい」という教えです。二代目店主の宮﨑猛さんは、「食に携わるものとして、なるべく身体にいいものを提供して、お客様の健康に役立ちたい」という思いから、蕎麦をはじめ野菜や調味料に至るまで産地を訪ね歩き、納得がいくものだけを厳選しています。
玄そばは、うきは、唐津、対馬、高千穂など、親交のある九州の生産者から直接仕入れています。毎日石臼で挽き、手打ちする十割が基本ですが、季節や玄そばの状態によっては少量のつなぎを入れる「外一」で打つこともあるそうです。
この日の玄そばは唐津産で、打ちたて、挽きたて、茹でたての「せいろ」(1,000円)は、やや緑がかった色味。噛んだ瞬間に蕎麦の甘みが広がり、歯切れの良さとともに香りが立ちます。伸びないうちにササッと蕎麦を啜った後は、残ったつゆに栄養素たっぷりのそば湯を注いで最後の一滴まで飲み干しました。
温かい蕎麦にトッピングする具材も、唐津産太閤ごぼうの天ぷらや、対馬産穴子を国産純正なたね油で揚げた天ぷらなど、厳選素材が目白押しです。その中から、唐津ささき農園でJAS認定有機栽培された「自然薯とろろそば」(1,400円)を注文しました。おろしたての自然薯は驚くほどの粘り強さで、箸ですくって口にすると、まさに大地そのものの味が伝わってくるようです。蕎麦とからめながら食べ進めるうちに温かいつゆに溶け、最後は滋味深いトロトロの食感に。こちらも最後の一滴まで完食しました。
宮﨑さんは唎酒師の資格も持っており、全国の蔵元からセレクトした地酒(800円~)に合わせた蕎麦前の一品料理にも定評があります。写真の「カボチャのサラダ」(650円)は、有機栽培のカボチャにそばの実・アーモンドの食感とクリームチーズのまろやかな酸味を加えた逸品で、辛口の日本酒によく合います。また、「鴨焼き」(1,300円)は、熟成タイプの日本酒と好相性。日本酒に合わせる料理のペアリングは、宮﨑さんに相談してみましょう。
「若い人にも蕎麦屋の愉しみ方を知ってほしい」と、宮﨑さん。その間口を広げるために、昨年改装した際には厨房奥に工房を増設し、蕎麦粉を使ったオリジナルスイーツの販売も行っています。2028年の創業50年に向けて、老舗の進化はまだまだ続いています。
蕎麦 木曽路
福岡市中央区荒戸1-10-13ルエメゾンロワール西公園3-1F
092-712-8253
ジャンル:鍋、蕎麦、日本酒
住所:福岡市中央区荒戸1-10-13ルエメゾンロワール西公園3-1F
電話番号:092-712-8253
営業時間:11:30~OS 14:30/17:00~入店 20:30
定休日:日曜
席数:テーブル24席、小上がり8席
個室:なし
メニュー:せいろそば1,000円、自然薯とろろそば(温・冷)1,400円、太閤ごぼうの天ぷらそば(温・冷)1,600円、対馬穴子天ぷらそば2,000円、板わさ550円、カボチャのサラダ650円、鴨焼き1,300円、蕎麦会席3,300円~、鴨鍋コース1人前5,800円(前日までに要予約。予約は2人前から)
URL:http://soba-kisoji.jp
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