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技術者からの華麗なる転身!住宅街にポツリ、カレーマニアも唸る一軒

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地下鉄・藤崎駅から10分ほど歩いた先。紅葉八幡宮にも近い高取の住宅街の一角に「エソラカレー」はあります。爽やかな青色のファサードには「スパイスカレー&スパイス居酒屋」との文字が。早速、店内へと足を進めましょう。

エソラカレー 高取 外観 エソラカレー 高取 店内

間借り営業やイベント出店を経て、2022年10月に実店舗を開店した「エソラカレー」。その存在は以前からカレーマニアの間でも評判で、「鳥飼八幡宮カレーフェスティバル2021」に出店した際は、開場とほぼ同時に用意していたカレーが完売した程です。個人的にも間借り営業をしていた頃から気になっていて、今回ようやくお邪魔することができました。テーブルとカウンター席を配する店内は明るく清潔感のある雰囲気で、厨房からは食欲をそそるスパイスの香りが漂っています。

エソラカレー 高取 店主

店主の松下俊樹さんは、ダムや橋の建設に携わる土木技術者から脱サラしてカレーの世界へ飛び込みました。
「僕は管理職よりも現場の仕事が好きなので、前職はどこかで辞めよう……そう考えていました。そんな時に東京・銀座の『デリー』で食べたカシミールカレーに衝撃を受けたんです。元々カレーなど料理を作るのは好きで、東京や大阪のカレーを食べ歩きしていましたが、本格的に“こんなカレーを作ってみたい”、そう思ったんです。定年後の趣味などではなく、やるなら本気で。カレーに失礼のないように気力・体力がある50歳を前に!と決意して、会社を退職しました。まずは包丁の研ぎ方や食材の切り方、出汁の引き方や火入れといった料理の基礎から勉強して、その後カレーやスパイスの研究をはじめました」と話します。

エソラカレー 高取 メニュー

「薬院スパイス」高田さんのカレー塾、また「クボカリー」久保さんの元でサービスについても学ぶなど、しっかりと経験を積みながらもカレーは基本的に独学。“自分のカレーが形になってきた”という約2年前から、佐賀県三養基郡基山町の「ここてらす」、西新の「中華菜 髙福」、大池の「ハラペコラボ」、渡辺通の「SUGAR SPOT」、城西の「カナチ」(現在は閉店)などで間借り営業を行い、独立開店の準備を行ってきたそうです。現在のメニューは写真の通り、昼はスパイスカレー専門店として5種類のカレーを用意し、夜はスパイス居酒屋としてスパイスを使ったおつまみも提供しています。

エソラカレー 高取 カレー ランチ

まずはランチのレギュラーカレーの一つ「ポークビンダルー」(1,200円)をいただきました。キュウリと赤タマネギのカチュンバル(インド風スパイシーサラダ)、あえてスパイスを使わないキャロットラペ、しめじのウールガイ(インドのピクルス)も添えられています。

ひと口食べてまず驚いたのは、甘辛酸の完璧なバランス! ポークビンダルーはポルトガル人からインドの西海岸中部・ゴア地方に伝承された料理だそうで、白ワインビネガーを使うのが特徴だそう。このエッジの効いた酸味とタマネギや豚バラ肉などの旨味、甘味、複雑に広がるスパイスの香りと辛味がたまりません。乳化ではなく、分離させた油もパンチのある美味しさのポイント。豚バラ肉は表面をしっかりと焼いて余分な脂を取り除いているので、浮いている油はサラサラとしており、食後感に重たさがないところも実に好みでした。

エソラカレー 高取 カレー

続いてこちらは、内容が1週間ごとに変わる「気まぐれカレー」です。この日は「長崎産ゴマ鯖のゴラカカレー&パリップ」(1,500円)という、スリランカスタイルのカレーでした。味の主役となるのは、近隣にある鮮魚市場「博多街道魚市」で仕入れた新鮮なゴマサバと「ゴラカ」(ドライフルーツのような素材)。ココナッツオイルの香りと、サバからとった出汁や雑節の風味、ゴラカ独特のスモーキーな酸味が絶妙に絡み合います。

エソラカレー 高取 カレー

また「エソラカレー」のライスはすべて、日本米とバスマティライスのブレンドです。「どんなカレーも受け止めてくれるように」と考えた結果だそうで、パラパラしすぎず、もちもちしすぎず……な食感も実に食べ心地がいいです。スパイスでマリネして焼いた大ぶりなゴマサバをほぐし、皿の奥にある「パリップ」(スリランカの豆カレー)を混ぜ込みながら味わえば、もうスプーンは止まりません。

どちらのカレーも複雑でありながら、五味のバランスが実によく計算されている……そう感じたことを伝えると、松下さんは照れくさそうに笑ってレシピをそっと見せてくれました。几帳面にまとめられたExcelシートにはなんと1g単位で図ったスパイスが細かに記載されていました。さすがは元技術者! 研究熱心で妥協を許さない真摯な姿勢が「エソラカレー」の味を生んでいるんですね。

エソラカレー 高取 夜メニュー

一方、夜は「シンプルにスパイス単体の味や香り、魅力を伝えたい」と、“主役にするスパイスは1品につき1種類”をテーマにしているそう。写真は鶏ガラ出汁やナンプラーを使う「クミンだし巻き卵」(500円)と、「スパイスおつまみ3種盛り」(700円)です。3種盛りの内容は日によって変わり、写真はマスタードシードが弾ける「エビのスパイスオイル煮」や「砂肝のスパイスコンフィ」、土っぽい胡椒のような香りのカロンジ「キノコのピックル(オイル、スパイス炒め)」。どれも香りよく、お酒がすすむ美味しさでした。

駅からはちょっぴり歩くけれど、“わざわざ出かけたくなる”「エソラカレー」。ちなみに、店名は松下さんが大好きなMr.Childrenの曲名に由来するそうで、私はその曲を聞きながら帰路につくことにしました。“絵空事”から“事”を取り、ポジティブなメッセージが込められたこの曲と、夢を“絵空事”で終わらせなかった松下さんが重なって、何だかとても元気をもらえました。

エソラカレー

店舗名:エソラカレー
ジャンル:カレー
住所:福岡市早良区高取1-21-10
電話番号:092-984-1012
営業時間:11:30~OS14:30/18:00~OS21:00
定休日:月・木曜 ※ほか不定休あり
席数:カウンター3席、テーブル8席
個室:なし
メニュー:スパイシーチキンカレー、牛豚合挽きキーマ各1,000円(ルーのみ1/2サイズ400円)、ポークビンダルー、エビカレー各1,200円(ルーのみ1/2サイズ500円)、夜のスパイスおつまみ3種盛り700円
URL:https://www.instagram.com/esora_curry

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この記事を書いたひと

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